❤︎EX 理瑠の想い
私の名前は
成績は可もなく不可もなく。ボーイッシュな雰囲気があるとよく言われる顔立ちで、この歳にしては結構ある胸が色んな意味で疲れるお年頃……
そんな私の自慢は、親友に
生まれて初めてできた好きな人が同性って、おかしいかな? でも、好きになっちゃったものは仕方ないよねー?
何故そうなったかなんて説明し辛いけど、一言でいえば真奈が真奈だったから。それ以外に答えようがないんです。
元々生まれつき女の子を好きだった……って訳じゃありません。好きになった人が真奈だった。きっと真奈が男の子だったとしても、好きになっていたと思います。本当の性別を超えた愛って、こう言うことを言うんじゃ無いかな?
そんな彼女だけど、実は己の実兄、
つまり、私も真奈も、社会的にはあまり歓迎されていない関係を望んでいるってことですね。二人とも似たような状況になるだなんて、こ、これって運命!? なんて思っちゃったり、てへへ!
でもでも、真奈はそれに加えてさらに、『伊導お兄ちゃんのことが好き好きすぎて脳がアヘアヘしちゃうのおおおおお病』という一種の依存症を患ってしまっているのです。
お兄さんのフェロモンを浴びないと、身体がおかしくなってしまう病気らしくて。でも彼女はその自らの人生に突如訪れた厳しい状況をポジティブに受け止めている。
さすが私の真奈! しゅごい!!
真奈の病気に立ち向かう姿を見ていると、ますます好きになってしまいます! けれど、真奈がわたしのことを振り向いてくれることはおそらくないだろう……だってお兄さんが好きなのに、私のことも好きになってくれるなんてありえないですよね。真奈が両刀使いっていうんなら別だけど? むしろそうあって欲しいなー。
まあ、現実は現実で。つまり私は今のところこの想いが叶う状況にないってことで。じゃあ、逆にこの状況を利用すれば良いよね! 泥沼に持ち込んで、その隙に真奈のことをさらって仕舞えば良いんだと気づいたのです。あ、もちろん比喩ですよ? 実際に誘拐するわけありませんからね。
その作戦を完遂させるために、手始めにと私はお二人の引越し作業の時、お兄さんに告白しました。"一目惚れ"だと言って嘘の告白をです。
もちろん、その場にいた人たちは大慌て。突然現れた恋のライバルに、お兄さんのハーレム要員は警戒心剥き出し! 思わず心の中で笑っちゃった。本当は全然興味なんて無いのに、こんなに焦っちゃって面白いーってね。
あれ、もしかして性格悪いと思った? でも人間なんて皆本当はこんなものだと思うけどなー?
それからというもの、お兄さんにアタックしつつ、あわよくば流湖さんと早くくっ付いてくれないかなーとかちょっと細工をしてみたり。真奈がお兄さんのことを諦めないかなーと寧ろ私がお兄さんにアタックしてみたり。
でも結果は火に油を注いだだけでした。あれだけ真奈に好かれているなんて、今すぐお兄さんと中身を入れ替わりたいくらいです。
それならばと、私は思った。方針転換、真奈とお兄さんがくっついて、そこに私も入れば、一石二鳥(?)じゃんっ! てね!
真奈とお兄さんがくっついて、その後私と真奈がくっついて。三人で幸せに暮らすのです! 他の人たちはいりません、私たちの世界はこの三人で完結する予定だから。
真奈が幸せだと私も幸せ。お兄さんと恋仲になれなかったら、きっと真奈は悲しむだろう。それじゃあ、私の世界は完成しないのです……!
ではどのようにしてその目的を達成するか。今までとは方向転換をし、真奈とお兄さんをまずくっつけることに注力します。
しかし、世の中そう上手くは行かないものです。何故か流湖先輩が更にお兄さんのことを好きになってしまいました。これではますますやりにくいではありませんかー!
幾ら私が頑張ろうとも、世の中の修正力みたいなものが働くんですね。まるで真奈とお兄さんはくっついてはいけないみたいな? 流湖先輩役得だなあー。
そうして努力を続けている私ですが、いまだに辞められないことが。
それは、私がアタックすれば、真奈はお兄さんを取られると思い、こちらへ嫉妬の感情を向けてくること。それがまた気持ち良くて、内心ゾクゾクとしてしまうんだよ?
なんて歪んだ楽しみ方をしつつも、今日もお兄さんにちまちま絡んだりして。
本当はもっと早く二人をくっつけたいところだけど、もう暫くはこの
で、私達は偶然にも先生達がバンドを組むことを知った。
その時、佐久間蓮美先生の様子を見ていて、あることに気がついた。『あ、この人私と似ている』って。
つまり、誰かをけしかけて本来の目的であるナニカを為そうしているところがだ。
もちろん私の場合は、ナニカは真奈と恋仲になることである。
先生の場合はなんだろう……ハーレム? 田島先生と他の先生達をくっつけようとしているように見える。何故そんなことをするまでかは流石にわからないけど、多分合ってると思う!
またそんな新たな情報を得つつも、今さっき真奈のお兄さんに私の気持ちをカミングアウトしました!
「えっ……俺じゃなく、真奈を?」
あれ、この人結構本気にしてたんだ。へえ、口ではやめろやめろって言ってる癖に、きっと心のどこかでは私に自分のことを好きでいて欲しかったんだろうなー。
「そうです、あなたの妹さんの、伊勢川真奈ちゃんが、恋愛対象なんです。同性恋愛ですね!」
「ええっと、すまない。いや、偏見があるわけじゃ無いぞ? だが、男の俺じゃなくて、女の真奈のことが好きなんだな?」
「はい、そうですよ。正確に言いますと、男とか女とか関係なく、人間としての真奈が好きなんです。これ、わかって貰えますかねー?」
と言うが、やはり微妙な表情をされる。やはり世の中では、未だに男と女という括りが強く、お兄さんもきっとその固定概念を捨て切れていないのだろう。
「すまない、俺は恋愛自体したことがないから……可愛い女の子とか見ると、おっ、と思うことはあるけれど。最近皆から積極的にアプローチされて、ようやくその恋愛というものを意識するようになったんだ」
お兄さんが鈍感なのは、もしかするとそれが関係しているのかも? 恋愛したことないなんて本当かわからないけど、本人の自己申告を信じようという気になるくらいには、周りからの好意に疎かったからなあ……真奈から話を聞くたびに、早くくっつけよ、そこは気付けよ! と何度思ったことか。
ま、でもそのおかげでこうして今まで私の気持ちがバレずにここまで来れたのだからよしとしよう。
このカミングアウトで、お兄さんは逃げられなくなった。真奈とお兄さんの仲も着実に縮まっているし。
あとは、あの流湖先輩をどのようにして二人から引き離すかだ。でも、私が中途半端にけしかけたのもあって、なかなか諦めてくれそうにないんですよねー。『ターンスリー』での一件は本当に痛手でした。
「そうなんですか……またとにかく、そういうことですので!」
「えっと……俺はどうすれば?」
「そうですねー」
と、特別に私の計画の一部を教えて差し上げます。
「……なるほど、つまり俺と真奈がくっついて、そこに理瑠も混ざって三人で暮らしたいと」
「はい、そのとーりです! 真奈の幸せは私の幸せ。皆でウィンウィンになりましょうー!」
その私の宣言を聞いたお兄さんの顔は、この世に存在する得体の知れないものを見たときの顔がいっぺんに表に現れたかのようだった。
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