砂のチャンドワ

蓼原高

プロローグ

 行き交う人々が嘲笑うかのように彼らを凝視していた。色とりどりのネオンが頬を照らす。今この雑踏で、彼らはまさに見世物。


そのような状況でも三人の空腹は止まらなかった。たった一時間前に食べたばかりだというのに。一際奇異の目で見られたのは最も大きな体格の男。その名を食田くいだ満福といった。大きな腹を強調するかのようなベルトを灰のスウェットに食い込ませ、怯えた様子で周囲を伺っていた。


 大男の隣には、ゆったりとウェーブがかかった栗色の髪を編み込んだ、サイドポニーテールの美女が立っていた。ライダースーツともツナギとも付かない黒のレザースーツが、ネオンの光を虹色に反射させている。彼女は満福を庇うように周囲を威嚇していた。


 その二人の陰に隠れるように、神経質そうな顔をしたもやしのような体型の青年が、黒縁眼鏡のブリッジを指で持ち上げながら、顔色一つ変えず街を観察していた。場に似つかわしくないノーカラーのシャツが、砂塵で黄色くくすむ。

 


ここに舞台は整った。



彼らの世界を取り戻す戦いが、幕を開ける。

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