変わる関係
目が覚めると、自分の部屋にいた。おでこが冷たい、冷えピタか?視界はぼんやりとしていて、見えずらい。体寒い。
部屋の扉が開くと喜瀬里さんが入ってきた、なんかいつもと服装が違う。というかなんで家にまだ――
「目が覚めたみたいだね。風邪薬と熱冷ましの薬だ、飲めるかい?」
上半身を起こそうとしたが、起きれなかった。なんとか喜瀬里さんの助けもあって薬を飲めた。
「どうして喜瀬里さんが家に……」
「覚えていないのは無理もない、帰る途中に君は寝てしまったからね。君が寝てしまった後、私たちは君を家まで送り届けた。弟君が出迎えてくれたよ。君をここに寝かせて、帰ろうと思ったのだけど。君を看病する人もいなければ、弟君たちの夕飯を作る人がいないことに気が付いてね」
「それで……まだ家に居るんですね」
「迷惑だったかい?一応弟君たちに家に居てもいいといわれているのだけれど」
「いえ、ありがとうございます。弟たちの面倒見てもらって」
「君はいささか、頑張りすぎだ。大人でいようとすることを咎めるつもりはないが、少しは人を頼りなさい。私や名詩ちゃんとかね」
「名詩さんも、まだ家に?」
「ああ、今は優恵ちゃんをお風呂に入れているんじゃないかな」
優恵を、お風呂に。喜瀬里さんにも名詩さんにも大きな借りができたな。
「いつ頃……帰るんですか?」
「それなんだが、君さえよければ泊まっていってもいいだろうか?」
「泊まるって、喜瀬里さんがですか?」
「私だけじゃない、名詩ちゃんもだ。まだ熱もあるし、君を一人にしておけないからね。私たちでは不安かな?」
「いえ、二人のことは信頼しています。でもいいんですか、ここまでしてもらって」
「頑張りすぎとさっき言っただろう?この状態で動けばよくなるものも治らない。今は休むべきだ」
「わかりました。今日だけお願いします。明日には動けるまでに回復させるので」
「呪縛は根深いか」
何か言ったようにも聞こえたが、距離が離れていて聞き取れない。
「何か言いましたか聞き取れなくて」
「いや何でもないよ。明日の朝まで無理はしないと、約束してくれるかい?」
「明日の朝まで無理はしません」
「よし、お腹はすいてるかな?すいているならお粥を作ってくるが」
「お願いします」
「わかった、できるまで少し横になっているといい」
明日までだ、明日まで。風邪をひいたときは仕方ない、動けないから仕方がない。明日の朝には動けるようになる。休むのは今だけだ、明日寝たままでいることは許されない。俺はまた逃げてしまう
「神門君お粥を持ってきたよ。おっと、寝るところだったかい?」
「いえ、少し考え事を」
「そうか。それじゃあ、あーん」
「自分で食べれますが」
「起き上がれないのに何を言っているんだい?恥ずかしがってないでほら、食べさせてあげるから」
確かに今も、喜瀬里さんに手伝ってもらって体を起こしたんだ。腕も動かせるけど力が入りにくい。食べさせてもらうしかないか。
「わかりました」
「素直でよろしい」
そうしてお粥を食べさせてもらっていると、扉が開いた。入ってきたのはパジャマに着替えた優恵と名詩さんだった。紺色のパジャマ姿の名詩さんは、絵になっていた。清楚なお姉さんのような。柄にもないこと考えちまった。熱のせいか。
「にーにいたいいたいなおった?」
「少し良くなったよ」
「よかった。ん~」
「眠いのか、名詩さん優恵を部屋まで連れてってくれますか。場所は透に聞けばわかります」
「わかったよ、優恵ちゃんお部屋行こうね」
「にーにおやゆみ」
「お休み優恵」
名詩さんは優恵を連れて、部屋を出ていった。
「神門君は、家族の前では兄でいようとするんだね」
「俺はいつでも兄ですけど」
「そうか。まだ食べるかい?」
「はい」
「かなくんに食べさせるの私にもやらせてくださいー」
部屋に入ってきたのはさっき出ていったはずの名詩さんだった。
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