10話 ちょっとだけの勝利(⁎˃ᴗ˂⁎)
水牛党の皆さんの協力で、盗聴とか発信機も含めて、安全が確認されたワゴン車は、至って普通の白のワゴン車になった。
由良穂香が違和感を感じたのは、後部座席に座った後だった。
家臣くんが、隣に座ってきたのだ。
太ももが触れ合うほどの近さだ。
そんなに馴れ馴れしいとは思えなかったのに・・・
もう一つの違和感は家臣くんが、白夜のタルタルソースをアイスクリームを食べるみたいに、総菜屋さんで貰ったスプーンで食べ始めた事だ。
「あなた・・・誰?」
「ほう、さすが鋭いね。」
タルタルソースを食べながら、家臣くんは答えた。
その声は、家臣君の声のトーンが違った。
何よりさっきまで大量に放出していたパシリ感が完全に消え、重く冷たい感触が車内に広がった。
その感触に、穂香の身体に、寒気が走った。
全身の細胞が、危険を叫んでいた。
誘拐された時も感じなかった程の危険な感触だ。
穂香は、家臣くんの身体と距離を取った。
太ももの細胞が、ほっとしているのが解った。
「二重人格?ジキルさんとハイドさんの様な?」
「現象としては同じだね。
ただ現象が同じだからと言って、内容が同じとは限らないけど・・・」
「・・・」
「あんたも食べるかい?タルタルソース」
「遠慮します」
「そんなに警戒するなよ。俺たち知らない仲じゃないんだぜ」
「私と知り合い?」
「まあ」
「・・・」
「あんたは知っている。
そのヒントをあんたはすでにどこかで見ている」
「・・・」
そいつは白夜のタルタルソースを1瓶食べ終えると、
「あんたは俺の事、全力で怖がってるけど、あんたが俺へのアクセス権を手に入れたってことは、あんたに取って、かなりお得な事だと思うぜ。じゃあまた来るよ」
言葉を言い終えると、冷たく重たい表情は消えた。
そして、家臣くんは再びパシリ感を全開にした。
穂香は安堵の溜息をついた。
「ねぇ家臣くん、私たち前どこかで会ったことある?」
「僕ね、昨日以前の記憶がないんだ」
「記憶喪失?」
「うん。」
「ベタな・・・」
穂香の言葉に、パシリ感が消え、表情が重く冷たくなった。
多分、今の意識は奴だ。
「ベタって言われたのが、気に入らなかったのかな?タルタルソースくん♪」
「・・・・」
表情は軽薄になり、パシリ感が回復した。
ちょっとだけの勝利に、穂香は微笑んだ。
つづく
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