短編集

@neko____com

何もできない天使

ーーあぁまただ。

周りは優秀なのに、私はなんで劣っているんだろう。


天使が優秀?飛べる羽を持ってる?

そんなの嘘っぱちだ。

私は子供の頃から人より劣っていた。

神を称える賛美歌はうまく歌えないし、羽を広げて飛ぼうとしてもちっとも飛べやしない。

たった五歳の子でも飛べるというのに。


天使の中ではどれだけ綺麗な羽を持っていて、うまく賛美歌を歌え、天使のリングが強く輝けば輝くほど上の人間でお金も才能も何もかも持ってる。


それに比べ私は、くすんだねずみ色の羽に下手くそな賛美歌、天使のリングも切れかけている。

なんて惨めなんだろう

お金も才能もどこかへ落としてきたのだろうか?

自分だけ劣っていて周りに比べられて・・・


昔、あまりに嫌なものだから一度神様のことをけなした事がある。その瞬間、周りにこれでもかというほど殴られた。


「神」を褒め称えながら私を殴る「天使」たちは怖かった。血だらけになった、羽を毟られた。


やがて反応がなくなった私に飽きたのか「天使」たちはいなくなった。


ボロボロのまま家に帰れば看病してくれるなどおらず、机の上には『島の外れに家を買いました。私達は3日家を開けるのでその間に手紙の住所に行くこと。二度とこの家に足を踏み入れないでください。』と親の字で綴られていた。


天使が優しいなんて嘘だ。

でもこれ以上他人に嫌われたくない私はそんなにない荷物を抱えながら島の端まで歩く。

雲の上にあるこの島は、端に行けば行くほど雲が薄くなり人間界に落ちやすくなる。

天使たちは汚らわしい人間を毛嫌いしてるので島の端なんかは物好きか厄介者しか住まない。


住所とにらめっこしながらその場所にたどり着くとなんとか一人住めそうなボロい家だった。

今ではまぁなんとか住めるがこのときは部屋も3部屋しかなく、風呂とトイレは別じゃないし・・・

なんといっても窓から人間界が見える最悪のスポットだった。

しかしここ以外に行くところがないのでため息を付きながらこれからどうしようか考える。

助けてくれる天使はおらず、生きていく・・・天使として最低限の生活をするには島に中心の方で食料と水を神からいただければならない。

そうやって天使たちは自分を天使たるものにとどめているのだ。

例えば人間が神の施しを食べれば、そのものは人間界で誰よりも強くなるし、神の水を死んだ土地に1滴垂らせばたちまちその土地は実りのある桃源郷に生まれ変わるだろう


神とはそういうものだ。この世界で至高の存在。

でも、私はこの狭い島に段々と嫌気がさしてきた。

神の施しを受け取りに行けば厄介者のような目で見られ、そそくさと家に帰り人間界を眺めながら食べる。

夜になれば明かりが付き、昼になれば色とりどりの色が見える。

青い海に、緑の山。色が溢れている人間界にいつしか目を奪われていた。

何もかもが白く、白が至高の色だと信じているこことは大違いだった。

そのうち神の施しは食べなくてもいいかなと思い始め、食べなくなってから段々と天使のリングの輝きは失われていく。

いつかこのリングが完全に消えたらここから人間界に行こうと。

飛べない私は二度と島に帰れないだろう。

今日も人間界を眺めながら、時間をつぶす。

天使のリングはもう光っていない。


家から出ると青い澄み渡る空の下

私は島と神に下手くそな賛美歌を歌い、そこから飛び降りた。




ーーーーー


空からなにか降ってくるぞ!!!という声に少年は振り返る。

ざわざわとざわめく観衆を押しのけながら降ってきたなにかのもとへ向かう。

その降ってきたなにかは幼さを残すが 美しい金髪と空を閉じ込めたかのような目に信じられないような高級そうな服を身にまといこういった。


「はじめまして。---です」と。

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