好感度200%の恋人から愛されてます

スライム

第1話・告白

 時間は放課後、俺はとある少女に校舎裏へと呼び出されていた。


「わ…わたし…! ずっと修斗しゅうとの事が好きでした! 付き合ってくださらないでしょうか!!」


 若干日本語がおかしい言葉を発するのは、地毛である金髪をショートカットにした、俺の幼馴染である神崎天音かんざきあまねだった。

 その顔はあまりにも赤く染まり上がっており、とても冗談で言っている様には思えなかった。


「えぇっと………天音、それマジで言ってる?」


 俺は未だに信じられず、頬を掻きながら疑問を述べる。


「大マジだよ! ずっと…ずっと前から好きだったんだもん!!」


 より一層顔を赤くした天音。それに…思わず本音で返してしまった。


「俺もなんだけど?」

「え…?」

「あ…」


 直ぐに口を押さえて、「聞こえたか?」と言う視線を天音に送る。すると確かに、コクン、と頷かれた。


「あぁ…うん…はい。すいません。その…うん、俺も…ずっと前から好きでした…」

「………そ、そうなんだ…」


 もうやばい。お互い顔真っ赤だよこんちくしょう。目ぇ合わせられないし…もうどうすりゃ良いの?


「ち、因みに…いつ…から?」

「自覚は…中学校2年くらい…かな。お前が他の男子と喋ってる姿見ると…胸がキュッてなってたから…」


 そこで俺は、天音の事が友達ではなく、異性として好きなんだと自覚した。だけど自覚が無かっただけで、俺はもっと前から、天音の事が好きだったのかもしれない。


「そう…修斗も…なんだ。だ、だっ…だっ…たらさ? つ、付き…合わない?」


 簡単に分かる、とんでもなく勇気を振り絞ったであろう言葉。それを再び言ってくれた途端、俺の心臓は爆発するんじゃないかと思うくらいに加速し、嬉しさが全身に走った。


「うん…」

「え…良いの?」

「良いも何も…両思いなんだし良いじゃねぇか…」


 自分で言ってて恥ずかしさがヤバい事になってきた。天音は未だ信じられないのか、俺に質問をしてくる。


「本当に…?」

「うん…」

「あ、後からやっぱりドッキリーみたい…なことに…ならないよね?」

「ならねぇよ…。俺がそういうの苦手なの知ってんだろ」


 周りが好きでもない女に告白する、という一種の罰ゲームのようなもの。それが俺にはどうにも好きになれない…いや、嫌いだった。


「そ、そうだよね…。じゃあ私達今から…恋仲?」

「自分で言うのクソ恥ずいけど…まぁ恋仲だな」


 それを確認した2、3秒後、天音はそのくりっ、とした瞳から大粒の涙を流し始めた。

 天音が泣くところは…まぁ小学校の頃とか何回か見ているが、それでもここ数年全く見た事が無かった為、思わず天音に駆け寄った。


「だ、大丈夫か!? ティ、ティッシュいる…」


 ポケットティッシュを出そうと右手に持った時、天音は俺の体に飛び付いた。


「うっ…あぁああ! ごわがったぁ…! 振られたら…どうしようかって…ずっと…ずっと…」


 そうだ。俺もそれが怖かった。もし、俺が天音に告白して、友達ですら居られなくなったら。そう考えたら、今のままで十分幸せだと、勝手に心の中で妥協していた。


「多分俺も…お前の事待たせたっぽいな…」

「うん…」

「でももう良い…。これからは自由だ。好きなだけ天音に振り回されてやるよ」


 そう言って天音を抱き寄せる。今まで通りなら出来なかった事だ。そして、それは今後も続いていくだろう。


「うっ…じゃあ…一緒にネズミーランド行く…」

「お。いいなネズミー。俺も行ってみたい」

「海で…水着デート…」

「おぉ、そりゃ刺激が強そうだ」

「前日の夜…精力剤飲ませる…そして…旅館に泊まって…」


ん?


「それからそれから…修斗はケダモノのように私を…ふふっ」

「あ、天音さんや?なんか凄いフレーズ飛んでなかった?」

「気にしないで…。そう、これは当然なの。恋人になったから…今までずっと溜まってた修斗へのやりたい事…全部吐き出さないと…」


 当然? 当然とはなんだ? と考えているうちに、頭の中でゲシュタルト崩壊起こしそうになってしまった。

 すると天音は俺から離れ、ビシッ! と俺を指差した。


「覚悟してよね! 私を恋人にした事、泣いて喜ばせてあげるくらいには幸せにしたがるから!」


 高らかな顔でそれを宣言する天音は、いつもどおり可愛かった。


………

……


「ふぅ…」


 私はお風呂に入った後、自分の部屋のベッドにダイブした。特に何かをするでもなく、ただずっと天井を見る。

 そして、今日あった出来事を思い出す。


好きだと言ってくれた。


ずっと、ずっと好きだった幼馴染みが、私のことを好きだった。


そして付き合うことになった。


「うへっ…うへへへぇ!うへへへへへぇ!」


 枕を抱きかかえて、ベッドの中を転げ回る。今私は、とんでもなくみだらな顔になって居るだろう。構わない。幸せすぎるんだから。


(やっば!!顔のニヤケ止まんない!!あぁっもう!ほんっと好き!!何これ何これ!!早く会いたい!!)


 考えれば考えるほど、修斗に会いたい気持ちが増してくる。今にも爆発しそうなこの想い。

 今すぐに修斗と会いたいという欲求が溢れ出てくる。


「そうだ!!行けばいいじゃん!!」


 私と修斗の家はそこまで遠く無い。だったら家に行けば…と考えた途端、頭がオーバーヒートする。


(だ、ダメダメ!!私と修斗はまだそこまでの関係じゃない!今日恋人になったばかりなのにそんなことしたら、軽蔑されるかもしれないじゃん!そ、それに…そんなことしたら心臓が持つ気がしないです、はい…)


大好きだった。ずっと、ずっと前から。

そんな愛しい人と一緒に寝るという行為は、まだハードルが高すぎた。


「はぁ…でも…会いたいなぁ…」


 考えれば考えるほど、会いたい気持ちが増してくる。好きで好きで堪らない。壊れてしまいそうなほど、この気持ちは止まらない。


「はぁ…早く…明日にならないかな…」


 1時間でも、1分でも、1秒でも早く明日になって学校に行きたかった。

 そんな思いを抱きながら、私は眠りにつくのだった。

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