第120話 俺、毛皮を買う
話を終え、ミッタクパパの家から外に出る。
すると、女子達が待受けていた。
「オクノくん! 毛皮!」
「オクノさん、毛皮ですよ!」
「ここは毛皮を見に行かないといけないわよね」
「あたいも着てみたいなー」
「どうしてもって言うわけじゃないけど……」
「マキはもっと図々しくなっていいのよ! ほら多摩川! 毛皮あるんでしょ! 買って!! 貢いで!!」
とりあえず大変図々しい明良川にはデコピンを食らわせておく。
「ウグワーッ!」とか叫んで額を抑えて地面をのたうち回っているな。
船員になって早々、強烈なキャラを見せつけてくるとか恐ろしい女だ。
さて、仲間達を引き連れて毛皮を見に行く。
南の方の人々から蛮族と言われてはいるが、バイキングにも貨幣経済みたいなものはある。
「この貝殻を磨いたやつがお金ね」
ミッタクが見せてくれたのは、めちゃくちゃ綺麗に磨き込まれた貝殻の欠片だった。
「これは確かにお金だわ」
「南の連中が使ってる金属の金よりも脆いから気をつけなよ? ま、こういう脆い金だから、使ってやらないとすり減ったり壊れたりしてなくなっちゃうんだけどね。金はパーッと使うためにある!」
「なるほど合理的です。経済を回すためのお金というわけですね」
「うわあ、イーサワが生えた」
金の話あるところ、イーサワあり。
そう言えば彼がうちのメイン財布でもあるので、買い物には必要なのだった。
「わんわん」
「なに、フタマタ、イーサワの出番だと思って呼んできたって? 有能過ぎる……! よしよし、後で犬用の食べ物を買ってあげよう」
「わんわん!」
フタマタが尻尾をぶんぶん振った。
「この犬、賢すぎる……」
明良川がフタマタを畏敬の目みたいなので見ていた。
毛皮が集められた場所にやってくる。
これは、毛皮職人が直接売っているのだ。
その時の毛皮の手に入る量で価格が決まる。
今年は普通だと。
「本当に真っ赤な毛皮なんだなあ、モーフル」
「モーフルは発情期になると毛皮が赤く染まるんだよ。そこを狩るとこういう風になる。だけど、発情期のモーフルばかり狩ってたら全滅しちゃうだろ? だから、うちらは一年に一頭しか発情期のモーフルは狩らない」
他は白いな。
そして値段も、赤いのと白いのでは十倍ほど違った。
赤い毛皮はダミアンGに着せてやろう……。
「オクノ、なんでダミアンが一番いい毛皮なの?」
純粋な疑問という感じで、ラムハが尋ねてきた。
「なんとなく。というか、アイツが白い毛皮を着てみんなに紛れたら、これはこれで困らない?」
「確かに」
女子達が納得する。
ダミアンGは常に見分けがつく方がいいだろう。
ただでさえ、ピンチになると勝手にアイテムボックスに潜り込んだり、ヒーローの装備品にチェンジしたりする自由なやつなのだ。
そんなわけで、人数分の毛皮を買った。
「これで今年の毛皮は全部はけたってよ」
ミッタクが呆れ顔で言う。
「よくそれだけの金を持ってたな」
「うちは金持ちだからな」
もちろん、俺達が持ってた金はバイキングの通貨ではない。
だが、幽霊船などを襲って手に入れた物資が山ほどあったのだ。
これを村で買い取ってもらい、その金で毛皮を買うようにした。
一部、天空の大盆から回収した古代アイテムも売ったので、今後はバイキングの戦力が増強されるかも知れない。
ビームの刃を展開する斧を装備したバイキング……。
うーん、対峙する側は大変だなあ。
「何言ってるんだ? 光の斧はうちの武器になるぞ」
「そうなのか」
「で、うちがお前らの案内役になるから、村にはこの斧は残らない。うちが村で一番強いからな。一番強い者が最新の武器を手にする。村の掟だ」
「なるほどー。じゃあ、ミッタクは一時的に俺のパーティに加わるということで」
「そうなるね。だけど勘違いするなよ? うちはお前の女になるわけじゃないからな!! っていうかお前、よくこんなに女を侍らせてるなあ……」
「別にそんなんじゃないのだが」
呆れ半分のミッタク。
俺としては、気付いたら仲のいい女子が増えていただけのことだ。
うち、俺の貞操を狙うのはラムハとルリアとアミラとカリナの四人。
カリナはお子ちゃまなので、まだ脅威にはならない。
いや、俺としてはチェリーを卒業してしまっても一向に構わんのだが……。
一番手を誰が務めるかで、女子達の間で静かなバトルがずうぅぅぅっと続いているのだ。
故に俺はまだ清い体である。
「五人目が? あの腕力は脅威ね」
「ラムハ、ここは共同戦線を取らない? 私とあなたで、一番オクノくんの初めてに近い二人でしょう?」
「確かにそうね。アミラ、協力して新たなる強敵と戦いましょう」
ラムハ、アミラ同盟が結成され、ミッタクに熱視線を投げかけている。
何してるんだこいつら。
ちなみにルリアは常に予測不能のジョーカーなので、単独でミッタクに対抗できると俺は踏んでいる。
いや、何の対抗だ。
さてさて、ここでミッタクが仲間に加わった。
彼女のステータスをチェックしておくことにしよう。
名前:ミッタク
レベル:64
職業:バイキング
力 :235
身の守り:140
素早さ :158
賢さ :41
運の良さ:108
HP930
MP265
斧50レベル
体術30レベル
気の呪法15レベル
風の呪法10レベル
✩斧
・トマホーク・旋風斬・狂乱斬
☆体術
・延髄斬り・フェースクラッシャー・ローリングサンダー
☆斧呪法技
・撃魔斬
★気の呪法
◯腕力強化◯脚力強化◯肉体強化
◯気力強化
★風の呪法
◯コールウインド◯アップドラフト
呪法によるバフを自分にかけて、圧倒的な腕力で相手を叩き潰す系のゴリッゴリな前衛だな!
しかもつええー。
俺、こういうの大好きだぞ。
斧と体術の技を最初から身につけているし、どうやらミッタクは、この世界における天才……いわゆるギフテッドの一人っぽい。
女版のイクサみたいな奴だな。
「ミッタク、君に新しい技を授けよう……」
「お、おお、もらえるもんならもらうけど。てか、技って授けたりできるもんなの? うち、この技はお師匠と特訓して身につけたんだけど」
「ほう、お師匠とな」
「ポー・ベアグルっていうシロクマのモンスターで、六欲天の」
「あー、六欲天の弟子だったかー!」
強いのに納得する。
「スルッと受け入れたなお前!?」
「なんか納得してしまった。てことはミッタク、君はうちの団で三番目に強いことになるな。ヒーローはよく分からんから除くとして」
俺の言葉に、ミッタクは目をギラつかせた。
「三番目だあ? 一番がお前として、もう一人は誰だよ。うちより強い男がそうそういてたまるか!」
「うむ、紹介しよう。イクサー」
「おう」
呼んだら当たり前のようにやって来るイクサ。
村の中をぶらぶらしていたようだ。
あの甘いマスクなので、村の女性達が遠巻きに彼を見つめている。
「これがうちの戦力ナンバー2。いや、もしかすると俺と同じくらい強い。まだ決着ついたことない」
「はあ? この優男が? いいだろう、やってやんよ! おいひょろひょろ男! うちと勝負しろ!!」
「良かろう」
ノータイムで勝負の申し出を受け入れるイクサだぞ。
「イクサ、剣を使うなよ。棒を使うのだ……」
「オクノ、それくらいは俺にも分かっている」
「棒だとぉ……!? てめえ、うちが女だからって舐めてるだろう」
「俺は敵とオクノ以外の全てに対して手加減をするように心がけている」
「やっぱり舐めてるじゃねえか! てめえ、ぶっ殺してやる!!」
怒りで顔を真赤にしたミッタク。
二本の角まで赤く染まっている。
あの角、やっぱり生えてるんだねー。
そして始まる、イクサvsミッタクの勝負なのである。
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