第88話 俺、六欲天の落とし子と戦う
「また変なのを仲間にしたのね」
ダミアンを連れてきたら、ラムハが呆れた。
だが、呆れるだけである。
慣れているんだな。
『ハジメマシテ。私ハ、だみあんデス。美シイオ嬢サン、オ名前ヲ教エテクダサイ』
ダミアンのやつ、お世辞言ってるぞ!
なんて高機能なロボだ。
あ、いや、ラムハが可愛いことは間違いないがな。
ラムハもびっくりしたようで、目を瞬かせている。
美しい、が自分に掛けられたと思ってるカリナが、ふふーんと得意げに胸を張りながら答えた。
「わたしはカリナです! よろしくですよダミアン」
『ヨロシクオネガイシマス、キュートナヒト』
ダミアンがカリナとにこやかに握手を交わしている。
コミュ力高いロボだなー。
「オクノ、本当に変なのを仲間にするのが得意よねえ……」
「なんか変なのが集まってくる気もする」
「人徳ね」
ということで。
帰ってきたアミラとダミアンが自己紹介しあったりし、さらに、イクサがダミアンに攻撃仕掛けたりしたのだが……。
「よく見ればこの樽から敵意を感じないな。やめておこう……」
野生の嗅覚でダミアンが敵ではないと察したイクサが、自ら攻撃をとりやめるというとんでもないことが起きたのだった。
そして、夜。
飯を食ってからたっぷり昼寝した俺達。
六欲天の落とし子が現れるという時間帯に目を覚ましたのだった。
外に出てみると、普通に猫人たちがわいわいと行き交っている。
「おやあ? なんで夜になるのに、こんなに賑わってるんだ?」
「ああ、人間の人。我々は夜行性なのです」
近くにいた親切な猫人が説明してくれた。
と思ったら、お前は俺達に依頼をしてきた猫!
「ずっと皆さんの目覚めを待って、入り口で昼寝をしていました」
「寝てたんかい」
「まさか、あの空から降ってきた金属の怪物を仲間にしてしまうとは……。一体どうやったのですか? ああ、それは後で聞きます。みんな興味があるので詳しく教えて下さいね。今はそれどころじゃないのでした」
話が脱線するやつだ。
猫人、興味があることにはまっしぐらになるらしい。
会話してると、あちこち脱線したりする。
「我々は夜行性なので、夜に狩りに出たり畑を耕したりするのですが、そこを落とし子に狙われたのです。以前は村の外の畑にしか現れなかったのですが、今ではすっかり調子に乗り、村の中にまでやって来ます。我々が夜に活発になるので、そこを見計らって来るようなのです」
「家の中にこもったりしていれば良かったのでは?」
「我々猫人は自由な種族なのです。自由を奪われたら死にます。比喩ですが」
「そうかー」
なんか自由に対するこだわりが強い種族だって事は分かった。
それに仕事を引き受けたのだから、しっかりとこなしてみせようではないか。
ぞろぞろと起き出してきた仲間達に、今後の予定を伝える。
「パトロールする」
「一言で伝わったわね。いいんじゃない、分かりやすくて」
「敵は村を襲ってくるのだろう? ならばそれが一番いいだろうな」
『賛成デス』
すっかり仲間に溶け込んだダミアンである。
ドラム缶状の頭の上に、カリナとルリアが座って楽をしている。
「ダミアン、なんで頭の上に女子を乗っけてるの。おならされたら故障するんじゃなかったの」
『男性ノオナラハダメデス』
「お前の好みじゃねえか!」
ドラム缶の腹にツッコミを入れておいた。
これを見て、アミラが笑う。
「オクノくんに、お笑いの相方ができた感じね。戦う相方はイクサくんでしょ?」
「言われてみればそうだ」
色気のない相方ばかりだ。
俺達がそんな話題で盛り上がっていると、猫人の人が割って入ってきた。
「あの、そろそろ移動したほうが! あと、パトロールって言いますけど、毎日落とし子が出るわけじゃないので皆さんがいないところに出たらどうするのかと。ばらばらになって動いたほうが良くないですか? 我々猫人もよく個別行動しますし。そこを落とし子に襲われてやられるんですが」
「だめじゃないか!? いや、そこらへんは心配しなくていい。うちには優秀な、敵を感知するセンサーを持った奴がいるんだ」
『私ノコトデスネ』
「お前じゃない」
『ガーン』
ダミアン……こいつ、話しやすいなあ!
「イクサ、頼むぞ。どこからか落とし子っぽい臭いがしてこないか」
俺がイクサに告げるのを見て、猫人が苦笑する。
「人間は鼻が効かないでしょう? それに嗅いだことがない臭いなんて分かるわけが……」
「来たぞ!!」
イクサが警戒の声を発する。
そして身構えた。
彼が向いている方に、俺も構える。
「へ?」
次の瞬間、びっくりして棒立ちになる猫人の背後から、闇を切り裂いて大型の影が飛び出して来た。
『シューッ!!』
鋭い吐息の音だけを立てて、でかい豹みたいな怪物がその爪を猫人に叩きつける……というところで。
「ワイドガード!」
俺が割り込んでその一撃を止めた。
おほー!
さすが六欲天関係のモンスター。凄いパワーだぜ。
ちょっぴり俺の体がノックバックした。
『ギャオッ』
「飛翔斬!」
そこに襲いかかるイクサの斬撃。
これを、現れた落とし子は尻尾で叩き落とし……『ギャーッ』おっ、尻尾が切り落とされた。
「俺の技は、常に磨きをかけている。昨日までの飛翔斬と同じと思うなよ裂空斬!」
喋りながら次なる技を繰り出すイクサ。
大変殺意が高い。
これを受けたら危ないと思ったらしき落とし子は、全力で烈空斬を回避した。
そして反転しながら、ダミアンに攻撃を仕掛けてくる。
上に乗ってた女子たちは慌てて逃げた。
『サア来ルノデス! 鋼ノボディーデ受ケ止メマショウ!』
『ギャアオッ!』
金属音が響く。
『ピガー!』
ダミアンが転がった。
あっ、こいつやられやがった!!
「アミラ、癒やしの水! 思ったよりダミアン打たれ弱いぞ! 次からカバーするわ!」
「はーい。この子、呪法効くのかなあ? 癒やしの水……」
『甘露……甘露……』
おっ、効いてるっぽいな。
しかし甘露なんて言うロボ聞いたことねえぞ。
『ジャアッ!!』
落とし子は次に、アミラを標的にしたらしい。
猛スピードで彼女に攻撃を仕掛ける。
だが、もう奴の好きにはさせないのだ。
俺がそこに、来た!
「クロスカウンター・逆水平!」
割り込んだ俺が、落とし子の爪に合わせて逆水平チョップを叩き込む。
奴の爪が空を切り、胸板にチョップが炸裂。
巨大な豹が叫びながら、ゴロゴロと転がっていった。
潜水艦よりも軽い手応え。
重さもそうだが、あいつめ、自分から後ろに跳んで衝撃を逃したな?
とにかく動きが速い。
なるほど、これは気付かないうちに猫人が狩られてしまうわけだ。
落とし子は俺達を睨みながら、その身を闇に溶け込ませていった。
「逃げたか?」
「いや、気配は消えていない。闇に紛れて攻撃を仕掛けるつもりだな」
イクサが鋭く周囲を見ながら言う。
あ、いやこいつ、移動する何者かを目で追っているようだ。
「闇に紛れてる奴が見えるの?」
「気配が見えるだろう普通」
「見えねえよ」
だが便利なことこの上ない。
ここはイクサを利用させてもらおう。
『ピピー。冥界ガ見エルトコロデシタ。ソンナ私ヲ治シテクレタあみらサンヲ攻撃スルナンテ、フテエヤロウダ。トサカニキマシタ』
「おっ、もう回復したのかダミアン」
『汚名挽回デス』
「返上じゃね?」
だが、ダミアンが戦線に加わる。
よーし、ではこいつをパーティに加え、俺、イクサ、ダミアン、ルリア、カリナ、そしてラムハで連携にて迎え撃つとしよう!
「あいつ、私を狙ってたみたいだから、私を囮にすれば……」
アミラが進み出る。
わざと、道の中央にだ。
そして、それを見逃す落とし子ではない。
『ジャッ!!』
巨大な豹が闇の中から飛び出して来た。
四本ある前足全てで、アミラを攻撃しようとしている。
だが、そう来ることは分かっていたのだ。
「円月斬!」
カウンターの斬撃で落とし子を迎え撃つイクサ。
そこから、連携が始まる。
「えーいっ!! エイミング!」
「連ね撃ちです!」
「逃さないわ。闇の障壁!」
連携の途中、ラムハが作り出した闇の壁が落とし子の退路を断つ。
『コレデモクラエ、ピガー!』
技名も何もなしに、ビームサーベルで殴り掛かるダミアン!
そして俺だ。
「動きが早いやつなら、投げちまえばいいんだよな! ナイアガラドライバー!!」
切り裂かれ、突き刺され、撃たれて逃げかけたところを塞がれ、そこをビームサーベルでポカポカやられた落とし子。
これを抱えあげて……水幻術とともに地面へと叩きつける!
足場が爆散し、さらにその下の水が爆発したように吹き上がる!
『円月エイ連闇のピガードライバー』
『ギャオオオオンッ!!』
落とし子は叫びながら、粉々に砕け散った。
おお、この死に方、間違いなく六欲天関係のやつだ。
まずは速攻で、落とし子を粉砕なのだ。
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