第10話 俺、成長を確認する

 金策をする。

 情報を得る。

 ジョイップ伯爵の部下だという兵士の一団を殲滅したら、それが一気にかなってしまった。


 彼らは結構な大金を持っていたので、これをゲット。

 さらに、武器を回収して俺のアイテムボックスに放り込んだ。


 生きている兵士は、向こうでラムハが尋問している。

 兵士たちの大部分がやられているから、怯えた兵士は喋る喋る。


「ある程度事情は分かったわ」


 ラムハがやって来た。


「ここにある村は、モンスタースタンピートで破壊された開拓地の難民たちのものよ。ジョイップ伯爵は最初、この難民たちを受け入れて自分の懐の広さを周囲にアピールしたのだけれど、別の狙いがあったみたい。それが、生贄」


「開拓地の……」


 アミラが呟く。

 彼女の夫は、開拓地で大量発生したモンスターに殺されたんだったな。

 今の流れ、アミラとちょっと因縁があるようだ。


「生贄は、ジョイップ伯爵が何かと契約をしているせいみたい。難民たちの村の若い娘をあらかた狩り尽くして、それで国の外まで手を広げたようね。ろくでもない奴だわ」


「悪いやつだねえ……!」


 ルリアが怒る。


「てか、難民の女の子たちみんな生贄にされたのか。やば過ぎるだろ。俺はムカムカしてきたぞ」


 俺の鼻息が荒くなる。

 なんというか、俺は結構、義憤に駆られるタイプのようだ。


「そのジョイップ伯爵とやらを一発殴らなきゃ気が済まない。いや、多分殴っても気が済まない……」


「ええ。人さらいを壊滅させようとしたら、オクノの言う通りになるわ。私たちはジョイップ伯爵を倒さなきゃいけない。それは、さらわれた時の私たちでは無理だったけれど、今なら不可能じゃないわ」


 ラムハの言葉を、カリナが継いだ。


「驚くほどの技の威力でした。まるで、呪法を使ったかのようです。オクノさんが閃く技は、わたしたちが知っている技というものとは全く別の次元のものです。これならば、兵士たちとも互角以上に戦えます!」


 女子たちが頷いた。

 彼女たちを代表して、ラムハが俺に告げる。


「ということで、技をせっせと閃いてもらわないといけないわね、オクノ!」


「おまっ、俺が閃くにはピンチに陥らないと知ってて……!!」


「サポートするから」


「ほんとだな? ほんとにほんとだな?」


「オクノくんお願いっ!」


「オクノくん、頼りにしてるわ」


「オクノさん、期待してます!」


 女子たちから次々に言葉を掛けられ、俺は一瞬でその気になった。

 人から褒められた経験が少ない俺である。


「よーし、じゃあジョイップ伯爵のところに行くまでに、どんどん閃いちゃうぞー!」


 褒められるとやる気になっちゃうところが俺のいいところだな。

 ということで。



 ピコーン!


『二段突き』


 ピコーン!


『風車』


 ピコーン!


『二連打ち』


 ピコーン!


『グランドバイパー』


 ピコーン!


『アローレイン』


 ピコーン!


『連ね射ち』


 ピコーン!


『パワーエンハンス』


 ピコーン!


『アンチマジック』


 ピコーン!


『サンダーファイヤーパワーボム』




 疲れたっ!!

 めちゃめちゃな数の戦闘を繰り返したぞ。

 寄り道しては、伯爵の軍勢に喧嘩を売り、あるいは現れた大型モンスターと殴り合い……!


 戦闘の八割は俺がやった。

 なにせ、俺が危機に陥らないと閃かないのだ。

 全ての戦闘がピンチの連続である。


 よくぞ生きていたものだ……。

 俺のステータスの成長はこんな感じだ。



名前:多摩川 奥野


技P  :218/218

術P  :115/115

HP:296


アイテムボックス →


・ジャイアントスイング・ドロップキック・フライングメイヤー

・バックスピンキック・ドラゴンスクリュー・シャイニングウィザード

・サンダーファイヤーパワーボム


・足払い・二段突き・風車


・スラッシュバイパー・二連打ち・グランドバイパー


・影縫い・サイドワインダー・アローレイン

・連ね射ち


・スペルエンハンス・パワーエンハンス・アンチマジック


◯幻炎術◯幻獣術



 そうそう、呪法も増えた。

 敵が使ってたので、俺も使えるようになった。

 相変わらず、俺のステータスのシステムは意味不明だった。


 閃くということしか分からん。

 そして、これを女子たちに継承する。


 俺とパーティを組んでいる彼女たちは、俺から経験点が流れ込むようでレベルアップしていた。

 俺にはレベルそのものが存在しないので、経験点とかが無意味なのだが。


「すごーい。あたし、5レベルになってるよー!! ほらほら! 運の良さが100超えたの!」


 ルリアがとんでもないことを抜かすので、そんな馬鹿なと思ってステータスをチェクする。


名前:ルリア

レベル:5

職業:村娘


力   : 8

身の守り: 6

素早さ :10

賢さ  : 8

運の良さ:112


HP42

MP 7


槍2レベル

・バックスピンキック


・足払い・二段突き・風車



 本当だ!!

 ってか、他のステータスがめちゃくちゃ弱いのに、運の良さだけが飛び抜けて高いなこいつ。


「あ、何気に槍のスキルが上がってるじゃないか。練習してた? すげえな」


「えへへ、オクノくんに任せっきりでも悪いからねー」


「自分の身くらいは守れそう?」


「まっかせて!」


 ルリアは自分の胸をどーんと叩いて、むせた。

 いけるのか……?


「オクノくん、お姉さんもレベル上がったんだけどなー」


「あ、はいはい。確認するよ。だけどアミラ、ステータスを確認するのに指を絡める必要はないのでは……? ふおお、温かい」


「うふふ」


名前:アミラ

レベル:6

職業:未亡人


力   : 9

身の守り: 6

素早さ :14

賢さ  :22

運の良さ:14


HP50

MP42


鞭2レベル

水の呪法2レベル


・スラッシュバイパー・二連打ち・グランドバイパー


◯癒やしの水◯毒消しの水



 アミラは、呪法が目に見えるようになっている。

 これ、何ていうかあれだな。

 俺と同タイプの技や呪法になり始めている気がする。


 つまり、特記された技や呪法は、この世界で普通に存在しているものよりも強力な可能性が高い。


「癒やしの水っていう呪法を使ってね、スラッシュバイパーで真っ二つにした兵士を癒やしてみたら、繋がったの! 生き返ったのよ!」


「また真っ二つにして、呪法の実験台にまで!!」


 恐ろしい人だ。

 だが、癒やしの水の力は、やはり桁外れらしい。

 少なくとも、死ぬ寸前、HP1の状態からマックスまで持っていく効果を持っている。


 やべえ、ぶっ壊れ性能だ。


「オクノさん、オクノさん」


 俺の袖を引っ張るカリナ。


「わたしも強くなりました」


 むふーっと鼻息も荒い。

 最近、彼女は素直な感じで小動物みたいに見えて可愛い。

 カリナは俺が閃く間も、補助戦力として戦闘には参加してもらっていた。


 だから、受け取っている経験点も多いかもしれない。


「どーれどれ……」


名前:カリナ

レベル:12

職業:遊牧民の娘


力   :16

身の守り:23

素早さ :49

賢さ  :18

運の良さ:12


HP106

MP25


弓5レベル

短剣3レベル


・影縫い・サイドワインダー・アローレイン

・連ね射ち



 つええ!!

 間違いなく、ラムハを除けばカリナはうちのパーティのメイン火力だ。

 俺が単騎で前衛張るので、主戦力は俺なんだが、彼女の弓矢は心強い支援力を発揮するのだ。


「最後は私ね。さあ確認して、オクノ」


「おっ、諸悪の根源が来たぞ……」


「何よ、人聞きが悪いわね!」


「お前の決定のお蔭で何度死にかけたことか……。まあいいか」


 今は生きてるし、この間、また胸触らせてくれたしな……!!


「オクノ、いい? 継承は、別に胸を触らなくてもできるんだからね……!!」


「ふふふ、分かってますよラムハさん……!」


 次も触る。


名前:ラムハ

レベル:12/■■■

職業:記憶を失った女/黒■の■■


力   :13/■■■■■

身の守り:13/■■■■■

素早さ :29/■■■■■

賢さ  :55/■■■■■

運の良さ: 3/■■■


HP102/■■■■■■

MP128/■■■■■■


闇の呪法6レベル


・スペルエンハンス・パワーエンハンス・アンチマジック


◯闇の炎◯闇の障壁◯闇の衝撃



 禍々しい呪法が増えてるな……。

 ちなみに、ラムハ曰く、闇の炎は単体攻撃だそうだ。

 だが、スペルエンハンスを使用することで、それは全体攻撃に変わる。


 ラムハは呪法オンリーの戦い方に特化していっているということだな。


「どう?」


「つよい」


「分かりやすい感想ありがとう。じゃあ、準備は万端ということでいい?」


「もちろんだ」


 俺は振り返る。

 そこには、伯爵領の領都がある。

 俺たちはこれから、商人を装ってここに侵入し、ジョイップ伯爵の陰謀を突き止めるのだ。


 それにどうやら……ここには俺のクラスの連中も来ているらしい。

 出会ったら技をかけて倒す。

 見ていろ。

 グフフフフ……。


「あっ、オクノくんがすっごく悪そうな笑い方してた!」


 うるさいぞルリア。

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