第4話 俺、パーティを組む

 街についた。

 ローという名前の町らしくて、ここで入り口に兵士に会って、人さらいを捕まえてきて女の子たちを解放した話をする。


 兵士たちは慌てて、町の偉い人を呼んできたようだ。

 兵士たちの隊長みたいなものだろう。


「人さらいどもは最近、あちこちに出没していてね。レベルの高い連中も多くて、うちの兵士じゃ歯が立たない事が多かったんだ。それをこんなに……。さぞや、君はレベルが高いんだろうなあ」


「ハハハ」


 俺は笑ってごまかした。

 レベル?

 そんなものは無い。


「ありがとね、少年!」


「君、かっこよかったよ!」


「ありがとう!」


 女の子たちが次々、街に入っていく。

 その途中、俺の手を握りしめたり「おほー!」

 俺を抱きしめたり「ファッ!?」

 俺の頬にキスをしたり「ウォッ!!」


 いや、大変だった。

 素晴らしきかな人助け。


 彼女たちは、どこかの村の娘だったり、新妻だったり、経歴は様々らしい。

 みんな、一人でいたり、人気が無いところに行った時にさらわれてしまったとか。


「……それで、君はいつまで残っているのかね」


 真横にいるラムハを見た。

 彼女の青い瞳が、じっと見返してくる。

 できれば、ずーっと残っていて欲しいなーと思ったり。


「それはもちろん。私の記憶を取り戻すまでよ。多分、あなたと一緒にいたほうが記憶が戻ってくると思うの。なんだか変なことをして指輪の封印みたいなのを解いちゃったでしょう?」


「アッハイ」


 おかげでラムハは闇の呪法を使えるようになり、ステータスも禍々しくなった。


「あたしたちも残ってるよー!」


 後ろから声がかかった。

 ラムハ以外に、三人ほどの女子たちが、俺と同行するのである。

 うれしい。


 一人は、この間の茶髪の女の子、ルリア。

 サイドテールの髪型がかわいい、元気な女子だ。


 もう一人は、ちょっと大人っぽい女の人、アミラ。

 癖のある赤毛を長く伸ばしていて、なんとも色っぽい感じで眼力のある女性だ。


 最後は、最年少のカリナ。

 黒髪を短く刈っていて、遊牧民の生まれらしくて弓が上手いらしい。


「あたしたち、さらわれた場所が遠いので、俺さんにそこまで連れてってもらうことにしたの」


「ねえ、俺くん、お願い」


「俺さんって呼び方おかしくないですか?」


 おっと、カリナが冷静だぞ。


「俺の本当の名前は、オクノというのだ。オクノとお呼びくださいお嬢様がた」


 俺はへりくだった。

 お嬢様がたなんて呼ばれたのは初めてらしくて、女子たちがキャッキャと盛り上がる。


「オクノ、あなた、まさか目的は……」


「そう、彼女たちを故郷に連れて行くまでは、パーティを組まなきゃいけないからな!!」


 ラムハに向けて、俺はサムズアップしてみせた。

 そしてパーティを組んだ。

 ラムハに比べると、あっさりだった。



名前:ルリア

レベル:1

職業:村娘


力   : 4

身の守り: 3

素早さ : 6

賢さ  : 7

運の良さ:41


HP20

MP 5


槍1レベル




名前:アミラ

レベル:3

職業:未亡人


力   : 6

身の守り: 4

素早さ : 9

賢さ  :18

運の良さ:12


HP31

MP25


鞭1レベル

水の呪法1レベル




名前:カリナ

レベル:6

職業:遊牧民の娘


力   :12

身の守り:15

素早さ :32

賢さ  :14

運の良さ: 9


HP58

MP11


弓4レベル

短剣3レベル




 ルリア、お前その運の良さは何だ!?

 アミラ、未亡人って、おい……!! なんか呪法も使えるし。

 おおっと、カリナが思った以上に強い!!


 個性的な面々だった。

 これを見て、ラムハも面白くなったらしい。


「へえ、これなら行けるかも知れないわね」


「何が?」


「これからの冒険が、よ。とりあえず、人さらいの組織をやっつけてしまわない? ちょうどこの街からも、賞金が出てるようだし」


「ほう、このパーティで、人さらいと対決を……?」


「できるよー!」


 元気に宣言したのはルリアだった。

 お前、一番弱いのにそんな自信満々で……!!

 だが、確かに人さらいを放っておいたら、今回みたいなことが頻発するかも知れない。


 俺がたまたま通りかかって、人さらいを撃滅できたから良かったが、普段ならあのまま女の子たちはハーレムとやらに入れられておしまいだろう。

 誰だ、そのうらやましいハーレムを作ってる奴は!!


「オクノくんがよこしまな怒りに身を震わせているわねえ。お姉さん、正直なのは嫌いじゃないわー」


 さすがアミラさん、一発で俺の怒りの内訳を理解したか……!

 年上の大人っぽいお姉さんっていうのもいいですね!

 ところで、俺よりちょっと年上くらいっぽいアミラさんが未亡人というのは、この世界は随分早婚なんだなあ。


「よし、では人さらいの組織を俺たちで倒そう!! 俺は、人さらいをして女の子たちを囲ってハーレムを作ろうなんていう羨ましい……。いやいや、ねたましい……。いやいや、けしからんことをする奴を、嫉妬の炎で焼き尽くさねば気が済まない!!」


「散々本心を出しかけて、最後に最低な結論に落ち着いたわね」


 いかん、つい本音が。

 ラムハの目が生暖かい。


 他の女子たちも、これには賛成の様子だった。

 満場一致で、人さらい組織への殴り込みが決定したのだ。

 多分俺たちは、ノリだけで物事を決めている……!


 ここでラムハから、常識的な提案。


「ねえみんな。オクノが街から報奨金をもらったの。人さらいを突き出して、みんなを助けたからね。このお金で、私たちの装備を整えない? オクノが強いって言っても、私たちも戦えたほうがいいでしょ?」


「さんせーい!」


「私も賛成よー?」


「わたしもいい考えだと思います」


 ということで。

 女子たちの装備選びとなるのだ。

 と言っても、もとから持ってるスキルが決まってるんだから、何を買うかは選択の余地もないんだけどな!


 ルリアにはショートスピア。

 ロングスピアは重くて持てなかった。

 もっと鍛えるんだ、村娘!


「ええー、無理だよー」


 アミラさんにはウィップ。

 お姉さま然とした見た目とあいまって、非常に似合っている。

 ところでウィップって戦えるの?


「うふふ、お姉さんに任せてー」


 カリナにはショートボウとダガー。

 この娘だけ、すごいガチ勢感が漂う。


「人を射るのも獣を射るのも同じですから」


 最後にラムハ。

 呪法の力を増幅させるという杖を買った。

 杖の先端には、磨き抜かれた黒曜石が埋め込まれている。


「せっかく、オクノに呪法を使えるようにしてもらったんだもの。私も頑張るわね」


 よし、これで完璧だ。

 ちなみに、これと女子たちの服、食料を買い揃えたら、俺の武器を買う金が尽きた。


「仕方ない。俺はまたプロレス技と、戦利品の大きな斧を使うか……」


 そんなわけで、新たな仲間たちと冒険開始だ!

 見てろよ俺を追放したクラスの連中め!

 俺は充実した異世界ライフを送って見せるからな!

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