L o l

ろいこ

プロローグ

日記、そう。日記のようなものなのだこれは。どうして『ようなもの』などと曖昧な表現をするのかといえば、これはその日一日を思い出して書くものではないからだ。一日ではない。まして1週間でも1ヶ月でもない。そして1年でも、まだまだ足りない。だからといって10年戻ってしまうとそれは行きすぎだ。その頃じゃ僕はたぶんまだ彼女に出会ってさえいないはずだから、この日記の趣旨からは大きく外れたものになってしまう。


これは日記であり、僕の恋愛遍歴なのだ。恋愛というのは相手がいなければ成り立たない。僕は自分の恋愛を正直なかなかイバラの道を進んでいると思っているが、さすがに自分自身に恋できるほど上級者ではないのだ。


5年。5年前だ。僕の恋が始まったのは。

それより前にも、誰かを好きになったことはあった。幼稚園の頃は可愛くて人気でキス魔なあの子を好きだったし(母親にからかわれて子供ながらに殺意を憶えた)、そのあとには仲が良くてよく笑うあの子が好きだったりした。

でも足りない。足りないのだ。足らなかったのだ。どうしようもなく。

今だから思えることだ。その当時はそんなこと思ったりはしていなかった。

幼かったから、とかそういう話ではない。今、高校二年生になりそれなりに成長した自分が同じことをしても、それはただのお遊びなのだ。あえて言い切る。その理由もこの日記に書くことにしよう。


彼女は、確か小学4年生くらいの時、か3年生の時に僕の通う小学校に転入してきた。なぜこんな曖昧なのかと言うと2度目だがもう何年も前のことなので覚えていないのである。

それに彼女が転入してきたのは僕とは別のクラスだったのだ。転入生が来たことは集会の挨拶を見たので知っていたが、その頃の僕はまだ『転入生の女の子』という生き物に大した魅力を感じていなかったのである。ようは印象が薄かったのである。


僕が彼女と確かな接点を持ったのは小学校6年生、つまりそれが今から5年前、というわけだ。


と、これで前提は書き終えたと思うので、この日記の前書きはこの辺りにして、本編を書き始めようと思う。日記なのに本編とはいささか、まるで微妙にかたちの違うマトリョーシカのような不安定な表現ではあるが、まあいいだろう。これはあくまで、日記の『ようなもの』なのだから。





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