春
中学三年生、春。
うららかな春の日、私は新しいクラス分けに心を躍らせながら学校への道を急いでいた。誰と同じクラスになれるのだろうか。仲の良い皆は同じクラスにいるのだろうか。波瑠や瑞樹はどのクラスだろうか。そんな事を考えながら学校につくとそこにはもう人だかりが出来ていた。私はそんなに身長が高くない、あえて言うなら低い方だ。だから人だかりができているとクラス名簿を見るのは当然不可能な訳で。仕方がない、これはもう全ての教室の座席表を見て回るしかないか。そう思った時だった。
「おはよっ、優香!もうクラス分け見たの?」
そう声をかけられて振り向くと、波瑠が栗色の長い髪をまとめたポニーテールをなびかせながら立っていた。
「君は私の身長をなめているのかい?見えるわけないでしょ~!」
と冗談交じりの口調で返すと波瑠は、
「また、同じクラスだったよ。」
と教えてくれた。波瑠と同じクラスなのは純粋に嬉しい、そう思った私は波瑠に抱き着いた。
「やったあ!今年もよろしくね、波瑠!」
「え?私、君のクラスじゃないけど」
「は??」
は??今さっき同じクラスだよ~とか言ってたの波瑠じゃない??同じクラスじゃないの?ちょっとよくわかんない。そう思っていると波瑠は私が考えていることを察したのか、波瑠は、
「私は、またあの人と同じクラスだよって言ったの!私じゃないもん。」
と、訂正してきた。あの人とは、私の好きな人の事。正直一緒のクラスじゃなかったところで授業を一緒に受ける機会は確実にあるのだが、それでも嬉しいものは嬉しい。だが、波瑠と同じクラスじゃなかったのもまた事実で。紛らわしい言い方しないでよと波瑠に言いつつも、私はしょんぼりすればいいのか喜べばいいのかわからなくなってしまった。
ホームルームの時間になったので自教室に行くと、凛を見つけた。凛は中学に入ってすぐのころからの友達で、一番信頼している。凛と話していると、クラスのメンバーの豪華さが目立っていることに気が付く。今年のクラスはかなり学年内の有名人が多いようで、ほぼ全員がクラスは違っても一度は名前が話に出てくるような人ばかりだった。中でも、遠藤隼人、吉川和樹、和田淳は学年の中でトップ4には入る程の人気ぶりだ。三人とも頭脳明晰なうえ、運動神経抜群、容姿端麗というスペックを兼ね備えているらしい。というのも、私は和田樹としか同じクラスになってことがないのだ。和田は言うなれば色素の薄い、外国人顔イケメンで、親しみやすい性格をしている。凛によると、他クラスになった女子は口をそろえてこのクラスが良かったと言っているのだとか。それはすごいな、学年の人気者フルメンバーといったところか。
始業式だったこともあり、学校はすぐに終わった。凛と一緒に帰っていると、偶然、遠藤たちも帰っているところに遭遇した。行く駅は一緒だからと流れで一緒に帰り始めたのだが、遠藤は案外話しやすい人だった。遠藤はかなりの高身長で、脚もかなり長い、モデル体型。一見すれば威圧感があるが、話してみると人懐っこいのか、ふわふわ笑って話していて、威圧感など一切なかった。去年も何度か話す機会はあったのだが、そこまで深入りするようなことは一切話していなかったし、新しい発見だな、そう思いながら話していた。その時は、楽しい一年になりそうだ。この時はまだ、そう思っていた。
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