僕と黒剣【長編版】

暗黒星雲

プロローグ

第1話 棺島での死闘

 雑木林から飛び出してきた異形の怪物。


 それは概ね人の形をしているが甲殻類のような外骨格を持っている。そして、その頭部と腕部からは複数の触手が飛び出しうごめいている。先端には鋭い牙が円形に並んだ口がある。


 私は反射的に19式の引き金を引いた。


 5.56㎜弾が化け物の腹部に吸い込まれる。

 しかし、その甲殻類のような外骨格は小口径の弾丸を全て弾き返した。


 脇にいた同僚がグレネード弾を放つ。

 小型の成形炸薬弾が怪物の腹部で炸裂するも、殆どダメージを与えていない。


「黒沢。下がれ」


 その同僚、天木あまぎは一歩前に出て手りゅう弾を投擲する。

 手りゅう弾は頭部の触手にうまく引っかかり炸裂した。千切れた触手を撒き散らし、その怪物は仰向けに倒れた。


「やったのか」

「わからん」


 19式小銃を構えてゆっくりと化け物に近づく天木。

 その瞬間、化け物の両腕から触手が伸びて天木に絡みついた。その先端にある口が天木に噛みつく。


 私はサバイバルナイフを引き抜き、その触手を切断していく。切断した触手は赤黒い体液を撒き散らしながらうねうねと蠢く。

 気色悪い触手としばし格闘し、その怪物から天木を引っぺがすことができた。彼の手を引き少し後退した。


「天木。大丈夫か?」

「くそ。噛みつかれた」


 天木の戦闘服はあちこち穴が開き、そこからは鮮血が滴っている。

 

「止血を」

「後退が先だ。あんな化け物、特殊装備がないと刃が立たん」


 むくりと起き上がる怪物。

 その頭部と両腕からは新たな触手が生え蠢いている。


 私達は小銃を乱射しつつ後退していく。

 怪物はゆっくりとこちらに歩いて近寄ってくる。


 19式の弾倉を交換し更に射撃を続ける。触手に命中した場合は体液を撒き散らすのだが、胴体部分の外骨格は全く貫通できない。


 その時、私の背後で天木の悲鳴が聞こえた。


「どうした!」


 振り向いた私の目に入ったのは、二体の怪物に組み敷かれている天木だった。


 そして私は背後から先の怪物に襲われた。


 無数の触手が絡みつき、そして両手と両脚にはその触手の口が噛みついて来た。


 恐怖と絶望、そして圧倒的な痛みと苦痛が私を支配した。


 怪物と共に倒れた私の視界に、上空から降下してくる何かが見えた。その後、私は意識を失った。



※19式小銃……現在自衛隊で使用されている89式小銃の後継。豊和工業製のHOWA5.56の事。正式名称は未定だが19式になるらしい。89式よりも全長が短く、ストックも伸縮式。個人的にはブルパップ式のステアーAUGみたいなのを期待していた。

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