地球に残された最後の子供と宇宙に巣立った新人類の話

 XXXX年、たった独り地球に取り残されていた子供を、宇宙での暮らしに適応した新人類の調査隊が見つけて保護する。

 その子供の処遇は、宇宙中の新人類の関心の的になった。


「その子が、本来得られたはずの権益に見合うだけの手厚い補償をすべきだ」

「最高のヘルパーをつけ、最高水準の教育を施そう」

「旧人類の遺伝情報も、今の内に確保しておくべきでは?」

「何よりも、その子の意思と権利を尊重すべきだ!」


 喧々諤々けんけんがくがくの議論を他所よそに、その子供は調査隊で最初に接触したロボットの元に近づく。


「ボクを故郷に帰してくれますか?」

『あそこはもう人が安全に暮らせる星じゃないよ』

「構いません。ここにはいたくないんです」

『そうかい。……わかった。任せておきな』


 子供が姿を消した後、新人類たちの関心の的は、子供を逃したロボットの人工知能に移り、ロボットを造ったメーカーの社長が槍玉に上げられることになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る