大魔王召喚~ねぇちょっと、迷惑な勇者をなんとかしてよ!~

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プロローグ

第1話 プロローグ 迷惑な勇者 1

 暗い暗い宮殿の奥で、深い闇の中から、奈落の底まで響くような声がする。


「おい、また私の軍団の一つが、ゴスケとかいうふざけた人間に壊滅させられたではないか。どうなっておるのか?」


「エリゴール様、何度もお伝えしておりますが、それは勇者と名乗る人間でございます。なにやら勇者召喚の儀で異世界より召喚されたとかなんとか。あの神共より授かった聖剣を使い、この世の悪、すなわち我々悪魔を根絶やしにするとかなんとか。ヴァサゴ様も軍団半分くらいやられてます。鎧着てかっこつけてないで、何とかしなくちゃマズいですよ。」


 エリゴール、それは、ソロモンの悪魔序列15位で50の軍団を率いる悪魔公爵である。当然返答したのはエリゴールの使い魔となる。

 そのエリゴールは、微妙に主人を馬鹿にした使い魔に、いつもの調子で返答する。


「え?それ本当?ヴァサゴさんの所、半分もやられちゃってるのかー。あの人確か序列3位だったよね?3位で勝てなきゃ、俺のところはあっという間でしょ?なんとかならない?使い魔なんだからなんとかしてよ!」


「まあ、私使い魔ですからね。エリゴール様でどうにもならなければ、私ごときではなんとも。ハイ。」


 エリゴールは思いついたようにポンと手を叩くと、使い魔に早口で尋ねる。


「そうだ!ねえ、バラム呼んでよ!あいつ予知能力とか持ってたでしょ?予知能力でどうなるか聞こうよ。それにあいつ透明になれるしさ、いざとなったら一緒に別世界に逃げようよ!うん、そうだね!それがいいよ!早く呼んで!」


「それは序列51位のバラム様ですか?」


「うん、そうそう。早く呼んじゃってよ。聖剣とか怖いからさ。エクスカリバーだっけ?怖いよ!ホント!3秒以内!お願いね!」


「・・・おられません。」


「いやいや、そういうのいいから。早く呼んでよ!怒るよ?」


 使い魔は、はぁ、とため息を一つついた後に繰り返す。


「いや、バラム様は、もうこの世におられませんと申しました。」


「え?」


「ですから、勇者ゴスケにやられました!」


「なんで?バラムって、透明になれば逃げられるじゃん!あいつさ、熊乗ってたでしょ?熊犠牲にすれば自分だけ助かるじゃーん!嘘言わないでよぉ。殴るよ?お前さ、使い魔だからってやられないと思ってない?ちょっと調子に乗ってない?悪魔舐めちゃダメだよ?」


 使い魔は聞き分けの悪い主人に苛立ちを隠せずに反応する。


「だぁ・かぁ・らぁ、死にましたって。わっかんない悪魔ですねぇ。私こんなのが主人だと思うと悲しいですよ。実際、バラム様、ゴスケの聖剣エクスカリバーで真っ二つだったみたいですよ?」


 エリゴールは、ようやくバラムの死を理解すると、兜に手を置き、ひとしきり左右に振って、それを終えると口を開く。


「いやー。参ったな。どうすんのよ。俺の軍団なんてさ、50軍団あったのに、ゴスケって野郎のせいで半分になっちゃったのよ?なんで勇者って悪魔狙うのよ?」


「はぁ、まぁ、我々悪魔ですからね。善なる勇者に狙われて当然なんじゃないですか?」


 エリゴールはまた思いついたようにポンと手を叩くと、使い魔に提案する。


「じゃあさ、名前変えちゃおうよ!善魔とかさ?善だから仲間だと思うでしょ?うわっ。俺様って頭良い!!」


 使い魔は、ふう、と深いため息を一つついた後に答えた。


「善なのに魔とか、いろいろ突っ込みどころは満載ですが、名前の問題じゃないんですよ。我々人間に対して、悪さしますよね?」


「うん、まあ、楽しいからねぇ。生きがいみたいなもんじゃない?仕事でもあるし?」


「そこですよ!そこが勇者に狙われる原因ですって!」


「いやいやいや、ちょっと待って。人間だって酷いことしてるじゃん?木を切ったりさ、穴掘ったりさ、虫とかモンスター、家畜も殺すでしょ?俺達と一緒じゃん!なぁにがいけないのよ。悪魔より酷いのいっぱいいるよ?」


「エリゴールさまぁ。冷静になって考えましょうよ。罪を犯すようにたぶらかすのって我々じゃないですか。」


「いやいや、人間の罪の1割位はね?でもあとの9割って自分で勝手にやってるじゃん?それを俺達のせいってねぇ。吐き気するよ。」


「まあ人間にも人間の言い分があるんでしょう。」


「そっかー。そうなのかなぁ。でもさ、勇者って酷くない?悪魔殺しまくって!良心の呵責とかないのかな?」


 使い魔は三度ため息をつくと答える。


「悪魔が良心語っちゃいます?無理ありますって。それより逃げましょうよ。」


「どこに?」


「アモン様のところとかどうです?」


「あー。パス。序列7位のアモン先輩でしょ?先輩怖いのよ。すぐ怒るし。」


「バアル様のところとか?」


「ダメダメダメ!バアルさんもっと怖いじゃん。一番安全な気はするけど、パス2。」


 エリゴールはそう言った後で、またもや思いついたようにポンと手を叩くと、再び使い魔に提案する。


「序列18位のバティンのところ良くない?あいつ愛想いいから一緒にいて気持ちいのよね。足も速いから一緒に逃げれるし、よし!決まり!バティンの所に行こう!」


「承知しました。」


 そう言って悪魔二匹は背中の羽をはばたかせると、エリゴールの宮殿を後にした。

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