血の繋がりが無いと分かってから、妹の様子が何だかおかしい。

ミヤ

プロローグ「妹、高垣涼奈について」

 俺には妹がいる。名前は高垣涼奈たかがきすずな、年は一つ下の十六歳。今年の春から同じ学校に通っている、高校一年生だ。


 容姿は中の上、もしくは上の下。といっても、これは俺が判断したものではない。聞いてもいないのに、友人が教えてくれたのだ。一応は女性の目線で見ているから、決して的外れな評価ではないだろう。

 性格はどちらかといえば内向的。とはいえ、他者とのコミュニケーションに難があるわけではなく、単純に興味が無いだけなのかもしれない。実際、数える程度ではあるが、涼奈が友達と仲良さげに会話しているところを見ているので、恐らくはそうなんだと思う。


 ただし、俺は例外みたいだが。


 俺と涼奈の仲は、決して良好ではない。じゃあ不仲かと言われれば、これもまた難しいところではあるが……少なくとも俺は、涼奈とここ数年まともに会話を交わした記憶が無いので、涼奈からは決して好かれているわけではないみたいだ。


 ……と、思っていたんだけど。


「えっと、涼奈さん?」

「……なに、お兄ちゃん?」

「いや、どうして俺の隣に座ってるのかなぁ……と思って」

「私もソファに座りたかったから」


 一言。そう、答えた涼奈の表情は、いつも通りだった。


「ああそう……。いや、それは別にいいんだけどね。これだけ無駄に広いソファなんだから、もう少し離れて座ってもいいんじゃないかなぁ……と思ったり、思わなかったり」

「……」

 あ、無視された。

「……いやまあ、別に良いけどさ」


 ──ここ最近の、涼奈の態度がおかしい。


 彼女の表面的な部分は分かっていても、内面的な部分は全く分からない。

 俺、高垣涼太郎たかがきりょうたろうは、『妹』のことが全く理解できないのである。

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