偏って恋人になった
イトウマ
第1話
恋人が出来た。
大学三年生まで恋愛というものに縁がなく、そもそも興味さえなかった私は唐突に恋人という存在が私の生活の中に生まれた。顔さえ知らないインターネットという、概念の世界で知り合った女性と恋人になった。なんとなくチャットで話してて、会話の終わり口を見つけられず永遠と会話をしていたら、好きですと告白された。馬鹿にされてるんだと思って流したら問い詰められて、返事をした。顔を知らないこんな私に告白してくるなんて意味がわからなかったが、その意味の分からなさが面白くて付き合うことにした。
彼女とは電話番号を教え合い電話をするようになった。通信料という残酷な代償を払い私は恋人と会話をしている。彼女は初めての電話の中盤に差し掛かった所で、「男性はどんな事で抜くのか」と聞いてきた。相変わらず面白いなと思った。もちろん質問には答えなかった。
彼女はそんな変な事をするが基本的にはよくある恋愛を好んだ。僕は甘ったるい小説の中にいるみたいで、なんだか現実味がなかった。お互いに好きだと言い合ったり、可愛いと言ったり可愛いと言われたりした。こんな人間に可愛いという人の気が知れなかったが彼女らしい価値観な気もして何も言わなかった。
今度の日曜に顔を合わせることになった。彼女は茶色い古着のパーカーを着て行くと言っていた。なんだか、B級の恋愛映画のラストシーンみたいで恥ずかしくなった。
私は君が好きみたいだから、
まだその映画の中にいる。
偏って恋人になった イトウマ @mikanhyp
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