第4話 相談する相手を間違えたかもしれない。

 一晩かけて断る理由を考えてしまった。そもそもあっちはどうしたいって思っているんだろう。俺を抱く気でいるのか、それとも抱かれてもいいとか? え、それを言われたら逃げ場なくない? 駄目だ、他の理由を考えないと。もっと効果的な振り方を。

 しかしそんなものわかるわけがない。こちとら彼氏を作るのも一苦労なのに、振るとか考えたことないって! だからと言ってあのノンケと付き合うのは、絶対にないない。うまく行きっこない。


「あー、もしもし光喜みつき?」


「おはよ。どうした、勝利しょうり。珍し」


「そのショウリやめろ。俺の名前はマサトシ!」


 暢気な声で電話口に出たのは幼馴染みの時原光喜。小中高と同じ学校に通っていた。大学になって離れたので、最近では会うのも電話するのも滅多になくなった。こいつとつるんでいると男も女もそっちに目移りするので、一緒にいたくないと言う理由がある。そう、この男の属性は男前だ。

 そんな男前になんのために電話したかって? そりゃあ、相手を振る方法を聞くためだ。クォーターで腹が立つくらい整った顔をしているので、相手の一人や二人、三人や五人。振ることくらいあるだろう。


「ええ? 勝利の恋バナ久しぶり」


「恋バナじゃねぇ! 恋にすら発展してない!」


「いいじゃん、相手いまいないなら付き合っちゃえば。そういう一途なのってなんでも言うこと聞いてくれそうじゃない?」


 これまた暢気な声で笑う光喜に通話を切断したい気持ちになったが、俺の性癖を理解していて親しい相手はこいつくらいだ。他に相談できる相手がいないのでなんとかこらえた。


「俺は迷惑してんの! だってあいつストーカーっぽいし」


「へぇ、そんなに勝利のこと好きなやついままでいなかったのに。もったいない。イケメンなんでしょ。顔がいいやつが自分にぞっこんなの優越感だけどな」


「そ、それは、確かに、そうかもしれないが、それとこれは別にしてくれ!」


 いかん、いまうっかり乗せられそうになった。光喜のこの軽さにうっかりほいほい乗せられていたら身が持たない。言いたい放題言って責任なんて取ってくれないし。


「じゃあ、俺と付き合う?」


「はっ?」


 いまものすごくよくわからないことを言われた。

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