塔の上の間男

天照てんてる

スカイツリーの最上階

 俺と彼女――といっても、付き合っているわけではない、友達以上恋人未満な存在である裕美ゆみと、ふたりで待ち合わせをした場所は、押上駅。行き先はもちろん――と言えるのだろうか? スカイツリーだ。


 裕美とはもっと深い仲になりたいような、そうでもないような、裕美からは”彼ピッピ”と呼ばれている存在な俺には、かつて結婚を誓い合った恋人がいた。


 彼女をさらい、スカイツリーの最上階に閉じ込めた魔王――いや、間男の名前は、真司しんじ。なにが”まこと”を”つかさどる”だ。ふざけた名前だ。


 ***


「裕美、出来る限りのサポートは頼む。お前のことは魔力目当てだけじゃないんだ、必ず無事に塔から降りよう」俺はそう言って入場料を二人分払い、最上階へと向かう。


 ***


 塔の中にいるリア充の群れを裕美が魔法でガンガンぶっ飛ばしていくのを後ろから木刀で援護するだけのかんたんなおしごと。なんとも頼もしい相方だ。これならもしも元カノが変わり果てた姿になっていたとしても――いや、そんなことを考えてはいけない。救い出すのだ。俺にしかできないことなのだ。


 ***


 最上階に着くと、肌が見えるようなローブを着て巨大化した理歌りか――俺のかつての婚約者が出迎えてくれた。巨大化、というよりは、贅肉で肥大化した、の方が正しい気がしなくもない。


 一方真司はというと、相変わらず気障きざなスーツで趣味の悪いサングラスをかけている。一体ここのどのあたりにサングラスをかける必要性があるというのか、小一時間問い詰めたい。


「し……真司くん!?」裕美は突然真司に駆け寄り、とんでもないことを言い始めた。


「あなたね、お母さんどれだけ心配したと思ってるの!? 冗談じゃないわ、こんな女と一緒にいないで、さっさと帰ってらっしゃい!!」


 ***


 そうして真司を連れて帰る裕美を見送った俺と理歌は、なんだか居心地の悪い空気を漂わせながらスカイツリーを降りるのであった――

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