SPEEDSTARS
伊吹rev
前日譚
プロローグEP
EP - 00 プロローグ
早朝。人口減少と都市部への
先頭を行くポニーテールの少女が姿勢を低くしながら叫ぶ。
「ノア!次は!?」
「レイナさん、テンカウントでターンライト、そのあとすぐにスリーカウントでジャンピングスポットです、備えて」
ポニーテールの少女の後ろにぴたりとつける白髪の少女は、その長い髪を風になびかせながら
「...最高ね」
瞬きをする暇すらない。すぐさま右カーブに向けて脚の前後を入れ替えると、右手を先行させ姿勢の安定を図る。手のひらのプロテクターが地面と擦れて火花を散らす。時速164キロからの急減速。ブレーキディスクが熱で赤く発光するそのさまは、夜明けの闇に良く映える。
「…8、9、10 ターンライト!」
白髪の少女の合図でテールをスライドさせながらなんとか
「3、2、1、ジャンプです」
ターンの
「衝撃備え、2、1」
着地。フロントの着地を足先だけで感じつつすぐさま加速。
その時、突然ポニーテールの少女の左フロントが暴れだした。バランスを
「ノア!今ので左フロントサスからエア
荷重が抜けきらない状態での
「あと30kmと少しです。86番、00番が先行しているので
白髪の少女がカウントを刻んだ次の瞬間、ポニーテールの少女のフロントサスペンションが両足とも伸びきった状態で動かなくなった。
「うわっ!これ…さすがはサラ、グローサ…これだけ飛ばしてても追いつかないって一体どういうことなの…」
フロントが固まった衝撃で、前につんのめりそうになるのを何とかこらえたポニーテールの少女は
「彼女達は完全にバイパスの
「私たちもそっちいけばよかったんじゃないの?」
「SPEEDSTARは単純にスピードが出れば勝てるわけではありませんし、第一、スピードチューンはあちら側にかないません。単純な
「100馬力…さすが
「グローサの
「なるほど、今回のコースは結局最後に山道を通る必要があるから、それまでにタイムを稼がなきゃスローダウンが怖いってことね」
「そういうことです。サラに関しても、今回は引いた荷物が重かったのでロータリーのメリットが
「じゃあ、サラさんの方はあんまり敵になりそうにないね」
「いいえ、そうとも言い切れませんよ。なんせ、”あの”
「なにそれ!?さすがは元・SPEEDSTAR
「ロータリーはフィーリングがモーターと似ているのでそもそも二つを使いわけることに苦はないと彼女は昔言ってましたし、なによりあのサラですからね。一輪まで乗りこなすんですから...」
「なるほどね…私たちは初めっからこうするしか勝ち目がないっていうこと」
「もちろん超高速チューンにかける手もありましたが、あちらのコースには46番のテイルや85番のニックもいます。さらにチャンピオンのカノンもあちらです。どちらかと言うとオフロード性能に分があるこちらは競う相手も少ないこちらを行く方が勝率が高いと踏みました」
「って言う割には私はフロントサス、そっちは…そうね、なんで走れてるのかわからないくらいなんだけど。それ、大丈夫なの?」
「
という白髪の少女はすでに、足元に備えられた左右合わせて4本のサスペンションが、すべて機能していない。
「これは…帰ったら全部オーバーホールね」
「では、その前に賞金を勝ち取ってアップグレードと
「そうしたいけど…ぶっちゃけ勝ち目はどのくらいなの?」
「あと一回賭けを制することができれば、5分5分というところですね」
「次は何を賭けるの?ドライブトレイン?」
「それは後ほどのお楽しみとしましょう。とりあえず次のT字路を右に、峠です」
「ノア...あなた、機械人だからもうすこし堅実な判断をするものだと思ってたんだけど」
「機械人は人間社会になじめるように人格プログラムを作られています。ですから、機械人にもいろいろいるのですよ。少なくとも、Kanade社製のギアで
「なるほど、その通りかもね。わかった、その賭け、のった!」
「大丈夫です。もしもの時はオーバードライブもありますから」
白髪の少女がが拳をぐっと握りしめたのを確認し、ポニーテールの少女はエンジンのギアをローに組み替えた。
「さぁ!まってろ“SPEEDSTAR”!!」
<SPEEDSTAR>
それは、年に8戦開催される“飛脚”たちのレース。
そのレースに参加する“選手”達を人々は、
速さに魅せられた狂人
自分と道具の限界に挑むチャレンジャー
などさまざまな意味、それからすこしの敬意でもって
“SPEEDSTARS”
と呼ぶ。
これは、そんなスピードの世界に挑む二人の少女の物語。
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