執事の思い出。

くじら時計

第1話 はじまりはじまり

 もし、自分がやりこんだゲームの世界に転生したとしたら…あなたは何がしたいですか?


 最強を目指しますか?


 お金持ちですか?


 ヒロインたちとハーレムしますか?


 それとも全部ですか?


 悪役になるのも楽しいかも知れないですね。

 

 ええ…実は私、ゲームの世界に来てしまったんです。気がついたらこっちの世界?に来ていましてね、


いや、それはとてもビックリしましたよ!


目が覚めると森の中で、

スマホもカバンもないし、

服もゴワゴワで着心地の悪く、

さらに裸足でしたからね!


 何だかよく分からなくて戸惑っていたら


「…こちらです。来てください。」


 人らしき声が聞こえるじゃないですか!


 顔をそちらに向けると森の中に人が通れるような道がありまして、さっきまで無かった気がしたんですが、見間違いかなと思うことにして


「どなたですか?」


声をかけてみたんです。ですが、


「こちらです。来てください。」


再び催促の声が。


 なんだか人らしき声が聞こえると安心してしまい、とりあえず声に向かって歩いて行きましたよ。

 

 えぇ、今思えば怪しい声に従ったのは無用心かもしれませんが、あの時は他に選択肢が無かったので仕方ないですよね。


 真っ直ぐに道を歩いていくと(森の中なのに真っ直ぐな道というのも変なんですが)、光源が上下に揺れながらプカプカと浮いておりました。


近づいてよく見ると…




羽根の生えたブタさんでした。


 執事服のようなものを着ていて、何かのキャラですかねと思った時に、私は思い出しました!


 これ、自分がハマっていたゲームのオープニングだ。チュートリアルの場面だと。

 私が驚き唖然としていると、ブタさんが話しかけて来ました。


「よかった。魔物に襲われなくて。どうしてあんな所にいてたの?」


「いや、何でか分からなくて…」


「…そんな格好のままだと、命がいくつあっても足りないよ。とりあえず、僕が持ってるこの装備を貸してあげるから使って。」


「あ、ありがとうございます。」


装備をもらったので、着替えて、

ー初心者セットを装備しましたー

街はこのまま進んで行けば着くよと言われ、進んでいくとゴブリンが現れ、戦闘となり、

ー初めての戦闘ー

ーダメージを受けましたー

ーアイテムを使用しましたー

ースキルを使用しましたー

ーゴブリンを倒しましたー

といった一連の流れ?を経験し、街が見えてくると


「じゃあ、ここまででいいかな。またどこかで会うかも知れないけど、じゃあね。」


「あ、あの」


「そうそう、僕の名前はプギーだよ。ある人にお仕えしていて、今日はたまたまお暇をもらってたんだ。もし今度会うことがあれば、その時はご飯でも奢ってね。じゃあ」


妖精?妖精豚?のプギーさんはそう言いながら街には入らずに大空へと飛んでいくのでした。








 …ちなみに、私はこの光景を見るのは自分の時を含めて、これでもう10回目でございます。


 今もプギーが空に上がっていくのを、街の住民たちと眺めておりまして、当時の事を懐かしく思い出しておりました。

 

 さらに、この街にはプギーに似せた名物料理や、プギーごっこなる子供の遊びが流行っています。


毎年一人か二人をプギーさんは連れてくるそうです。










 いや、絶対たまたまとちゃうやん!


 毎年の恒例行事なってるやん!


 そして、いつまでこの辺りを巡回してるの!


 プギー!!





 ……こほん。失礼しました。


 あぁ、先ほどの質問ですが、私みたいに執事としてモブキャラのままに過ごすのも気ままに生活が出来るのでオススメさせていただきますよ。



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