はじめてのブログ
やあ、はじめまして。ワシの名前は太郎。もうすぐ80になる爺さんじゃ。
しかし、年寄りだからといってワシを甘く見るなよ。心はまだまだ10代。新しいものに目がなく、好奇心は誰にも負けんと自負しておる。
ということで今は、最近流行っとるらしい『ブログ』なるものにチャレンジしたいと思っとる。
なんでも、このボタンだらけの機械で書く日記のようなものらしいな。
早速こうしてボタンを弄っているが……何が何やらサッパリじゃ。
……まあ、構わず進めるぞ。
日記ということで……そうじゃな。まずはワシの一日についてでも書こう。
ワシは朝起きると小林の所へ向かう。
小林というのは、いつもワシの面倒を見ているお手伝いさんのことじゃ。
この小林というのが、いけ好かない奴でのう。
ワシは最近抜け毛に困っておるのじゃ。やはり老いには逆らえず、昔はあんなにあった毛が、今では見るも無残じゃ。それなのに小林は朝、ワシを見るなり、
「やあ、太郎は今日もフサフサだね」
などとぬかしおった! ケンカうっとるのかお前は! 確かにてっぺんにしか毛のないお前よりはあるがの! 怒りのあまり残り少ない毛が逆立ったわ!
しかし、そこは心の広いワシじゃ、文句は言わず黙って小林の出す朝食を平らげてやったわ。
朝食を食べ終わった後は日課の散歩じゃ。家の周りをぐるっと歩く。
散歩の時、たまに隣の山田さんに会うのじゃが、この日は会わなかったの。
山田さんは、いつも会うと夕飯のお裾分けをしてくれる優しい人じゃ。会えずに残念じゃ。
さて、散歩が終わったら昼寝じゃ。やはり年には勝てんの。どうも疲れやすくていかんわい。お気に入りの日向でしばらく休んだ。
起きた後は昼じゃ。いつものように小林が置いていった物を食べた。
そして、満腹になったら昼寝じゃ。ワシは昼寝が好きなんじゃ。だいたい暇な一日、ずっとゴロゴロ寝てるの。
しかし、勘違いしてはいかん。怠けてばかりでもないぞ。昼寝から起きたら、トレーニングじゃ。
こう見えても体は丈夫でな。筋肉もまだまだ衰えてはおらんのじゃ。
このトレーニングには、どこからともなく帰ってきた、小林にも手伝ってもらう。この時ばかりはこいつも役に立つの。
まずはボクシング。小林の持つターゲットに、ひたすらパンチを打ち込み続ける。これが結構楽しいのじゃ。
次はランニング。家の長い廊下を全力ダッシュじゃ。
この二つを何回か繰り返す。こうして、ワシの見事な筋肉は保たれておるのじゃ。
そして、今。いつもはトレーニングが終わったら、すぐに晩飯なのじゃが、その前に今日は『ブログ』なるものをやっておる。
「タロー、ご飯が出来ましたよー」
おっと、小林がお呼びじゃ。いけ好かない奴じゃが、飯は旨いからの。
では、これで終わる。
――
――――
――――――
「タロー、ご飯が出来ましたよー」
と、小林は太郎を呼びながら、廊下を歩いていた。
「あっ!」
そして、小林は自分の書斎の中を覗いて、叫ぶ。
そこには、パソコンの上に乗り、キーボードをめちゃくちゃに叩いて遊ぶ、一匹のネコがいた。
「こらっ、太郎! 渡しのパソコンで悪戯しないでよ!」
太郎は、それに抗議するかのように、
「ニャー」
と鳴き、キーボードの上から飛び降りて、小林の元へと向かった。
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