織田信長とお茶を(4)

 一方的な渾名付けを済ませると、濃姫は木下藤吉郎に質問する。

 打って変わって真面目である。


「藤吉郎。面を上げなさい」

「ははっ」


 濃姫は、藤吉郎の営業スマイルに対し、両手で頬を引っ張る。


「トークだけが取り柄の剽軽者が、ノブに乗せられて何処に行くつもりだい?」

「煽てられれば、乗ってみたく存じます!」


 濃姫は、親身になって忠告する。


「これから藤吉郎が進む道はね、帰蝶の父上みたいな怪人か、ノブみたいな罰当たりな外道だけが進む道だよ」


 信長は、黙って濃姫のさせたいようにさせている。

 木下藤吉郎が何方側の人間か、信長は理解している。

 猿面の青年は、気遣いに感涙を零しながら濃姫に礼を尽くす。


「ご心配、ありがとうございます。なれど、この猿は既に怪人で外道でございます。引き返す気は御座らぬ故、お力をお貸し下さい」


 濃姫は、両手で猿面を軽く張ってから、通常運転に戻る。


「じゃあ、ノブ。行ってくるわ。土産は何がいい〜?」

「帰蝶の無事だ」

「任せて」


 濃姫は、冬を無視して勝手に襖を開け放つ。


「さあ、服部戦隊の諸君! 準備はいいな? 帰蝶の事は、マジカル帰蝶と呼ぶがいい」


 完全に、仕切っている。

 半蔵は、諦めて従う。


「さあ、稲葉山城まで瞬間移動するぞ」


 出発の儀式なのか、濃姫は緑塗装の西洋革靴を履くと、踵を三回鳴らした。

 誰も何処にも瞬間移動しない。


「あ、やばい、これボツ設定だったわ。作者に怒られちゃう」


 遅いよバカ女!

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