織田信長とお茶を(3)

帰蝶きちょう(濃姫のソウルネーム)を呼べ!」


 信長体制では、命令=即実行が当たり前。

 信長が小姓に正室を呼びに行かせると、藤吉郎は寺の係員から旅に必要な携帯食や着替えを買い始める。

 政秀寺ではこういう展開が多いので、寺の方でも緊急出張グッズを売って稼いでいる。


「帰蝶が来るまでは、引き続き寛いでいてくれ」


 とはいえ、接待の相手を追い立てるのも無粋なので、信長は女忍者達にスマイルで応じる。

 速くても半刻はかかるだろうと寛いでいた一同のティータイムは、四半刻にも満たないスピードで終わる。


 襖が勝手にパカッと開けられ、アラサーの信長正室が姿を現わす。

 二月の外気が雪崩れ込むが、濃姫の爆発的な存在感が遮断する。


「ノッブッーーーー!? 竹中半兵衛を帰蝶の色香で落としてこいって命令、マジ?」


 豪華絢爛な緑宝石色基調の着物を羽織る濃姫は、生気で輝き溢れる顔を信長の間近に寄せる。

 太陽みたいに輝きを照射する女だ。

 小姓たちが襖を閉め直してから、信長は濃姫が勝手に解釈した命令を正しく言い渡す。


「猿が、竹中半兵衛を調略しに行く。同行して、手伝ってやれ。護衛は、服部半蔵と奥方たちが勤める」

「ふ〜〜ん」



 濃姫は、険しい顔で五人の顔と出立を検分する。


「むっつりブラック」


 濃姫に変なアダ名を付けられても、半蔵は、微動だにしなかった。


「この旅では、そう呼ぶからね」

「半蔵でいいです」

「半蔵なんて名前じゃ、誰の事だか分からないでしょ、ゴロゴロ転がっている名前なんだから」


 半蔵の抗議は、却下された。



 次に月乃に、矛先が向く。


「人妻ピンク」

「月乃と、お呼びください」


 間違ってはいないが、月乃は訂正しないと大変な悪影響を被る気がして、きっっぱり断る。


「むー、まあいいか」


 月乃の抗議は、あっさり容認された。

 普段は引かない濃姫が、あっさり引いたので、信長と藤吉郎が月乃を見直す。

 半蔵には心当たりがあったが、信長の前で明かすつもりはない。



 次に、抹茶を堂々と懐にくすねる更紗に。


「シマパン・ホワイト」


 更紗は、驚愕のあまり、無表情が五ミリ歪んだ。


「分かるのか!?」


 今日の更紗は、一切他人に褌を見せていない。

 今日は。


「分かります」


 見ずに分かってはいけない事を堂々と、濃姫は断言する。

 更紗は立ち上がって、濃姫と腕をバローム・クロスさせる。


「更紗の事は是非とも、シマパン・ホワイトとお呼び下さい、姐御!」

「いえ、面倒だから更紗にしとく」


 更紗は、由緒正しく「ズコー!」と転けた。



 そしてバルバラ音羽陽花の番になると、自分の方から申告する。


「キリスト教徒としての洗礼名、バルバラとお呼び下さい」

「じゃあ、略してバナナ・ファイヤーで」


 どこも略してないと横から突っ込みたい夏美だが、身分を弁えて堪えた。堪えた。


「…バナナというと、南蛮人が食している、あの…」

「ええ、チン○コを剥くみたいにして食べる、あの果物」

「豪気な渾名で恐縮です」


 バルバラ音羽陽花は、頭を下げて礼をする。


「断らないのか?!」


 最後の夏美が、バルバラ音羽陽花には我慢せずに突っ込む。



 最後の夏実に対し、濃姫は両手を突き出して、にじり寄る。

 そして、夏美の巨乳を服ごと自然に自然に鷲掴みでモミモミしながら思案に暮れる。


「…君。おっぱいブルーと巨乳ブルーと牛乳ブルー、何れが良い?」

「オッパイ三択?!」

「いえす、オッパイ三択」

「拒否権を発動します」

「拒否権の拒否権を発動する」

「拒否権の拒否権の拒否権を発動します」 

「拒否権の拒否権の拒否権の拒否権を発動する」


 戦況は、膠着した。


 巨乳を揉まれながらも拒否を続ける夏実に、濃姫は実力行使に出る。


「喰らえ、愛と怒りと悲しみの、帰蝶エメラルド乳揉み神砂嵐!!」


 濃姫が、官能的な乳揉みで落としにかかる。

 だが、夏実は動じない。


「ふっふっふ、乳揉みも鬼な半蔵様の責めに比べれば、そよ風にも等っ、ああ、ズルい」


 濃姫が、夏実の乳輪付近を服の上から口に含んで強引に舌で転がす。


「…これ、何の勝負?」


 バルバラの問いに、更紗は本当に悲しそうに答える。


「オッパイと人類は、常に戦う運命なのさ。これが最初でもないし、最後でもない」

「そりゃそうだろうよ」


 男性陣は、座して動かない。

 月乃が、半蔵の脇腹を指で突つく。


「助けないのですか?」

「一対一の勝負じゃないか。夏美を信じて見守ろう」


 月乃は、半蔵の股間に手を置いて、勃起しているのを確かめる。


「私も今度から、むっつり半蔵様って呼びます。三河で」

「止めてくれ」

「呼びます」

「頼む」

「呼びます」

「勘弁してください」


 服部半蔵が、奥方に土下座を始めた。


 激しくも艶かしくもアホらしい我慢比べの果て、濃姫の手が疲れるより先に、夏美が喘ぎ声を出してしまう。


「あぐぅっ…んっ」


 夏実が、両膝を付く。


「あ、乳首立った。乳首ブルーと命名しよう」

「自分のが一番非道い!」

「黙れ敗者!」


 夏美の涙目抗議は、却下された。


「うむ、いい勝負だったな」


 信長は半蔵に同意を求めるが、まだ月乃に土下座していた。

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