日本よ、これがブラジャーだ(4)
「お披露目って…」
正信は、あの更紗を思い出し、周囲を見回す。
他の三人は、美人化・セクシー化・キリスト教徒化と濃い変貌を遂げている。
元からキャラの濃い更紗が、堺でどんなフォームチェンジを遂げたのか、正信は心配になる。
「ふはははははははは」
頭上から、あの更紗の笑い声。
「更紗は、此処だ。無職の正信」
天井に、白色の小袖&背中に虎の刺繍を縫い付けた更紗が、ハエのように張り付いていた。
「とおっー!」
掛け声を発しながら、更紗は正信の眼前に着地する。
着地と同時に、小袖の下の部分が割れて、褌が露わになる。つーか、袴を履いていない。
西洋式女性用褌は、日本製よりもデルタ宙域にピッタリフィットする代物だと、正信は目撃する。
「ふむ。やはり縞模様ですか」
思わず見入ってコメントしてから、正信は慌てて目を逸らす。
「西洋式であろうと、更紗の褌は、シマ!」
月乃が投げて寄越した黒い袴を、更紗は瞬着する。
「これ、更紗の正義」
下柘植更紗は、日本で初めてシマパンを履いた女性である(注意・これは小説です)。
ブレていない更紗を見て、正信は安堵した。
(更紗を見て安堵する日が来るとは)
「心配するのが、アホらしくなってきた」
茶屋四郎次郎が、湯茶を入れ直して全員分持ってくる。
茶碗運びを、正信と同じ亡命仲間の伊奈忠家・忠次親子が手伝っているので、茶屋は相当に三河の知識を仕入れていると察する。
「三ツ者いうても、手を下す仕事をするのは、甲斐や信濃にいる三ツ者だけですわ。国外のは、耳に挟んだネタを、信玄に送るだけさかい、そんなに心配せんでも、ええちゃいますか?」
「三ツ者に知り合いでも?」
正信は四郎次郎が三ツ者かと考えたが、本人はあっさりとネタを晒す。
「父が三ツ者ですねん。住む所も職業も変えたいうのに、今でも役に立ちそうな情報を、信玄に送ってますのや。まあ、うちも知らされたのは、この堺に支店を出すと決めてからですよって、それ以上の仕事を知らんだけかもしれませんが」
物騒な呉服商人親子である。
「武田の本拠地以外では、三ツ者に会うても、構えんでええと思いますわ。三ツ者が全国規模で展開しているのは、文通するだけで出来る仕事だからやと、うちは見ております。伊賀や甲賀の忍者とは、違うた基準で採用されていますのや」
正信は、半蔵に変化がないのを見て取り、もう半蔵は既知の事だと知る。
「父君が武田に付いているのに、三河に味方をなさるおつもりで?」
「ちゃうわ。父が武田に付いているからこそ、うちは逆に三河の方に付いておきますのや」
そこまで言われて、正信は茶屋の魂胆を悟る。
「何方が勝ち残っても、いいように?」
「そうどす。なんぼ武田が強くても、信玄が死んだら、勢いはのうなりますやろ。あの人、もう四十を越えてますやん。対して三河の殿様は、二十歳以上若くて上り調子。今川の例もありますよって、十年後には、ひょっとしたらひょっとしますで? という訳で」
四郎次郎は、正座し直して、両眼からギンギンに光を放出する。
「良い商い、させてもらいまっせ」
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