告白

1

 遥香はベッドの上でごろんと寝返りを打った。


 深夜一時を回ったというのに、遥香は寝付けなかった。


 目を閉じると、公園の前で弘貴に口づけられた光景を思い出してしまう。


 あのあと遥香は、弘貴の腕の力が緩んだすきに彼の腕の中から逃げ出して、後ろも振り返らずに駆け出した。


 弘貴は追ってこなかった。


 遥香はそっと唇に手を当てる。まだ、弘貴の唇の感触が残っているような気がする。


(……びっくりした)


 とにかく、びっくりしたのだ。


「ああ……、明日から、憂鬱」


 遥香はため息をついて目を閉じた。いつまでも起きていると明日がつらい。


 瞼の裏に何度も弘貴の顔が浮かんでは消え、なかなか寝付けなかったが、さすがに夜も遅いため、三十分もすればだんだん眠くなってくる。


 ――許さないよ、そんなこと。


 弘貴の低い声を思い出し、どうしてあんなに不機嫌になったんだろうと不思議に思いながら、遥香はいつしか眠りについていた。

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