異世界転移をしたら幼なじみがハーレムを築きそうなので全力で阻止したいと思います
yurihana
第1話
キーンコーンカーンコーン
学校のチャイムが鳴り響き、
「かーえろっ!」
元気な声と共に、
「うわっ!……ほのり」
雪斗は驚いて反応が遅れる。その様子を見たクラスの男子がニヤニヤと裕人を見た。
「お熱いねー二人とも!」
「そーでしょ!」
ほのりはニッと笑う。
「そ、そんなことないって。
ほのり、準備するから待ってて」
雪斗は少し慌てた様子で話す。
「雪斗って素直じゃないよな」
クラスの男子の一人が言った。
「もう付き合っちゃえばいいのに」
別の誰かが言った。
「雪斗、雪斗、付き合っちゃう!?」
ほのりは嬉しそうにピョンピョン飛び跳ねる。
「はは、冗談もほどほどにしろよ。僕らはただの幼なじみだろ?」
雪斗の反応に、ほのりはちぇーっと口を尖らせた。
雪斗とほのりは近所に生まれ、同じ時期に育ち、同じ高校に通っている、いわゆる幼なじみだ。
ほのりは長い茶髪を一つに束ねている活発な女子。
発言・行動力は非常に高く、「黙ってれば美人なのに……」と何度言われたか分からない。
雪斗は社交的で優等生な男子。適当に遊ばせた黒髪に整った顔立ち。イケメンの部類に入るはずだが、雪斗に彼女がいたことはない。どの女子とも広く話すが恋愛に全く興味がないため誰とも発展しないのだ。
放課後、交差点を歩きながらほのりは雪斗に途絶えることなく話し続けていた。
「ねー聞いてる?
だから湯葉を食べたときにね……」
「聞いてるー。それで落ち葉が?」
「え、どこをどう聞いてた?」
二人はたわいもない会話をしながら横断歩道を歩く。
「あ、そういえばこの前ね、お母さんが」
「! 危ない!」
雪斗が叫んだ時には、もう遅かった。
青の横断歩道。歩く二人に突っ込んだのは、信号無視のトラックだった。
トラックの運転手は居眠り運転をしており、トラックは二人をひいた後電柱にぶつかって停止した。
亡くなった二人を見た人は、男子が女子を庇っているようだったと言ったとか言わなかったとか。
それはそうと。
「……うん?
何……ここ?」
ほのりは目を覚ますと、白い部屋の中にいた。
床も壁も真っ白だ。
隣には雪斗が眠っている。
「えっと確か……トラックが来て……雪斗が庇ってくれたから、一生の悔いなし!とか思ってたところで……えっと……死んじゃったの?」
「はい、残念ながら」
ほのりが振り向くと、白い服を着た美しい女性が立っていた。
「天使……?でも羽が生えてない……」
「惜しいですね、女神ですよ」
女神は慈愛をもって微笑む。
「この度は御愁傷様でした。
急で申し訳ないのですが、これから、二人にはこのまま転生をしてもらいます。しかし……今子供を求めている家が見つからないんですよね」
「え?」
「ですから、お二人は転生ができません」
「転生?……生まれ変わりってこと……?
それで……子供を生みたい人がいないの?」
ほのりはポカンとする。
「転生先には条件があるのですが、その条件に合致する人がいないのです。
いつもはいるのですよ?
何故か今は該当する人がいなくて……。
待てば良いのですが、子供を生みたいと思う人が現れるまで悠長に待つことはできません。
魂って結構早く消えてしまうので……」
「そんな……。じゃあ私達どうなっちゃうの……?」
「えーっと」
女神は呟き、真っ白な表紙の本をペラペラとめくった。
「今できるのは……異世界への転送です」
「異世界?」
「はい。地球の他にも、『世界』はたくさんあるのです。
そこへお二人を転送します」
「……つまり、生まれ変われないってこと?」
「ええ。転生には多くのエネルギーを使います。そして異世界へ行くにもかなりの、つまりは転生するのと同じくらいのエネルギーを使うのです。
ですから転生しつつ異世界へというのは……」
「……分かりました!」
ほのりは元気良く返事をする。
「ありがとうございます。
では不測の事態となってしまったお詫びに、あなたの知っている世界へ転送してあげましょう
……それと、あなたの健気さをかって、少し褒美を与えましょう」
女神が何か唱えると、まばゆい光が雪斗とほのりを包んだ。ほのりは思わず目をつむる。
光が収まって、ほのりが目を開けると、そこは見たこともない、森の中だった。
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