第77話 魔弓

 俺達はグラスウルフを送還すると、歩きでキラービーの元に向かう。

 街道沿いに行けばそのうち見えてるくだろう。


 しばらく進んでいくとシーナがいう。


「先に行っている冒険者の方達はもう戦闘しているのでしょうか?」

「いや、まだみたいだな。『探知』に引っかかった!」


 少し先に行ったところに集まっているのが分かる。

 たぶん戦闘準備でもしているのだろう。

 全部で6人いる。

 

 あちらも気付いたのかこちらに一人向かってきた。


「あんた達もキラービーを討伐しにきたのか?」


 向かってきた男は俺に聞いてくる。


「ああ、そうだ。だがそちらが先みたいだな」

「俺達が倒すからあんた達の出番はない。邪魔するなよ」


 男は凄みを効かせそんなことをいう。


「邪魔はしない。お手並み拝見させてもらうよ」

「ふん!」


 男はそういうと仲間の元に戻っていった。

 不遜な態度だが、まあいいだろう。

 俺も人の事は言えないからな。


「よろしかったのですかレンヤさん?」

「ああ、問題ないよ。こちらはこちらで準備をしよう」


 俺はスララとリトルに目配せをする。

 二匹に先行でキラービーの偵察にいってもらう。

 最近は何も言わなくても二匹は俺の意思をくみ取ってくれる。

 二匹は素早くキラービーの元に向かう。


「準備ですか?」

「ああ、準備も含めて作戦を立てようか」

「はい。レンヤさんはあの方たちがキラービーに勝てないと思っていらっしゃるのですね?」

「そうだな」


 まあ、厳しいだろう。

 かなりの使い手達だと思うけど相性が悪い。

 『探知』で探った感じでは敵は数が多い。

 火力を長時間維持するのはMP的に厳しいだろう。

 それほど彼らがもつとは思えない。

 未解決案件だから報酬もそれほど高くはない。

 名誉だけで命をかけられるのか疑問だ。


 《発光トーチ》を取り出しスララとリトルから送られてくる映像を確認する。


「おっ、いたな。あれがキラービーか」

「大きな蜂の魔獣ですわね……」

「不気味ですね」

「ああ」


 依頼書で見るより不気味だ。

 グロテスクな蜂の魔獣は大きさが人間の頭ほどある。

 魔力を纏い針を飛ばしてくるようだ。

 ここら辺にいるのは偵察蜂って感じか。


「戦闘が始まったな」


 偵察蜂は先程の冒険者たちでも問題なく倒せているようだ。

 しかし巣に近づけば近づくほど大きさも、纏っている魔力も強力な個体が増えてくる。

   

「あっ!」

「!?」

「でかいな! あれが巣か!」 


 見えてきた映像には巣が映し出される。

 卵型の巨大な巣は優に10メートルは越えているだろう。

 強力な魔力を纏い空中に浮いている。


「浮かんでますわ!」


 何かに付いている訳ではなく単独でだ。

 魔力で浮かぶ蜂の巣か。

 いったいあの中に何匹いるんだ!


 蜂の魔獣たちは周りを囲むように飛び、巣を守っているようだ。

 たしかにこんな魔獣がいるなら一般人は街道を迂回せざるを得ないだろう。

 攻撃されればひとたまりもない。


 やはり先程の冒険者達でも討伐は厳しいだろう。

 

「とりあえず遠距離攻撃で敵を減らしつつ巣を叩くしかないな」

「そうですわね。あまり近づきたくありませんわ」

「囲まれたら厳しそうですね……」


 数が多いから直ぐに囲まれてしまうだろう。

 あまり近づくのは得策ではない。


「ああ、シーナは光系の魔法で戦うとしてネネは近接がメインだからな……」


 俺は思案する。

 ネネは『斬撃』スキルがあるから戦えるけど、今回はアヤメのところで買った魔導具でサポート役をしてもらうか。


「じゃあ、シーナをメインにネネはサポートに回ってくれ」

「はい。分かりましたわ」

「はい。分かりました」


 シーナは《共鳴の腕輪》があるから倍の魔法を放つことができる。

 火力と魔力があるシーナをメインにした方が効率がいいだろう。


「レンヤさんはどうされますか?」

「俺はこれで戦うよ」


 俺はインベントリからそれを取り出す。

 『ハコニワ』に作って貰った《魔弓》だ。


「なんですかそれは?」


 真ん中に握るところがあるけど、見た目は弓なりになっている棒だ。

 弦はない。


「これは《魔弓》だな」

「まきゅうですか?」

「ああ、遠距離攻撃用の武器だよ」


 魔力で弓と弦を作り飛ばすことができる。

 連射も可能だし長距離攻撃も可能だ。

 まあ、男のロマンが詰まった武器だな。


 前から作りたいと思っていたので今回作製できたので良かった。

 『ハコニワ』産だからプラスαの特殊機能は実装済みだ。


「魔力の弓矢なのですね」

「これで矢が打てるのですか?」


 二人は興味がありそうなので実験してみるか。


「とりあえず試し打ちしてみるよ。ネネも魔導具の使い方を練習してみてくれ」

「はい。分かりました」


 俺は左手で《魔弓》を持ち魔力を溜めていく。

 すると弦が弓に張られる。

 右手で弦を引くイメージをすると弓が形成される。


 俺は木に狙いを定め放つ。

 一直線に飛んだ魔力の矢は木に命中する。


「わあ、凄いですわ。本物の弓みたいですね」

「ああ、イメージ通りだ」


 矢の形成スピードも狙いの精度も悪くない。

 あとは魔力の込め方しだいで威力は出せるはず。

 これなら実戦で使えるな。


 ネネもシールド用の魔導具を使用して練習している。

 問題なさそうだな。


「そろそろ行こうか」

「「はい!」」

 

 さて依頼を達成しよう。

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