第33話 ドラゴンステーキ

 隕石は地面に落ちることなく蒸発するかのように消滅した。

 これぐらいだったらあっさりできるようになってきたな。

 あれだけの物体を消し去るのだから凄いことをやってのけたのだろう。


 しかし隕石を落とした奴は誰だ?

 グエンを殺害した人物と考えるのが一番しっくりくる。

 グエンは転移が使えなくなっていたし束縛で動けなかった。

 そこを狙い殺害したのち隕石を落としたのだろう。


 仲間割れかグエンを監視していたやつなのかは定かではない。

 またグエンと一緒に来たのか別のルートで来たのかも不明だ。


 グエン殺害後そいつは俺の探知には引っかかっていない。

 この島にはもういないはずだ。


 しかし念のため転送魔法陣は破壊しておいた方がいいかもしれない。

 やばい奴がどんどん送り込まれてくる。

 四星魔というぐらいだからまだ三人はいそうだし、ボスみたいな存在もいると想像できる。


 まあ負けるつもりはないけれど、事前に対処出来るならやっておいた方がいいだろう。


「レンヤさんは本当にでたらめな人ですわね」

「本当です。ドラゴンもそうですけど、あんな巨大な隕石を破壊するなんて人間技ではありません」


 ステータス的には確かに人間やめてる感があるよな。

 まあハコニワの補助があってこそだけど、はじめから比べれば強くなった。

 俺のレベル自体はまだ上がらないままだけど。


「とりあえず二人ともお疲れ様。この島の魔獣以外に敵はいないみたいだ」


 シーナとネネは安心した表情をみせる。

 二人を守れてよかった。


 黒い雲に放った一撃はまだよくわからない。

 あいかわらずゴロゴロと雷は鳴っているし、特別変わった様子はみられない。

 まあドラゴンを倒せたから良しとしておくか。


 俺はスララを期待した目でチラッとみる。

 するとスララは笑顔? でいう。


(もちろんとったよ)


 やっぱりあのどさくさの中でフレイムドラゴンのドロップアイテムを回収してくれたみたいだ。

 流石です!

 どんな状況でもスララなら拾ってきてくれるんじゃないかなとは思っていたけど。

 もはや回収のスペシャリストであることは間違いない。

 まあ今回は上空だったのでリトルと協力して取ってくれたのだろう。


 これでドラゴンを召喚できるようになった。

 ドラゴン召喚なんて男の夢だろう。

 さらにドラゴン装備も作製可能になったし胸が熱くなる。

 さっそく『ハコニワ』に作ってもらわないとな。


 そして念願のドラゴンの肉も取ることができた。

 ドラゴンの肉はシーナも美味しいといっていたからな。

 食べたいと思っていた。

 調理はもちろん『ハコニワ』にお任せだ。


 肉は直接死体から切り取るわけではなくドロップアイテムとして取れる。

 ここら辺がこの世界の不思議さだといつも思う。

 まあ実際に食べれるわけだし血抜きもされている肉なのでありがたい。


 《おしながき》を確認してみる。

 しっかりとフレイムドラゴンの肉を使った料理が増えているようだ。

 ここは休憩して肉を食べようじゃないか。


 やっぱり俺はステーキで食べてみたいな。

 ソースはバター醤油にして三人分を注文。


 テーブルと椅子をインベントリから出してセッティングする。


「二人とも飯にしよう」

「そうですわね。安心したらお腹が空いてきましたわ」

「はい。レンヤさん」


 俺は鉄板に乗ったドラゴンのステーキをテーブルに乗せていう。


「フレイムドラゴンのステーキだ。食べてみてくれ」

「先程のドラゴンですわね……。何だか色々と信じられませんわ」

「ですね。ドラゴンを食べられる日がくるなんて……」


 シーナは以前にドラゴンを食べたと言ってたな。

 ただ倒して直ぐ食べられたり調理されて出でくる能力に驚いているみたいだ。

 ネネはドラゴンの肉は初めてみたいだな。


「じゃあ冷めないうちに食べよう。いただきます!」

「「いただきます!」」


 ちなみにいただきますという考えはこの世界でも通じる。

 食べ物に感謝だ。


「「「!?」」」


 美味い! そして柔らかい!


「美味しいですわ! わたくしが食べた物より更に美味しいです。絶品ですわ!」


 今回はフレイムドラゴンの肉だからまた違った味わいなのだろう。

 ネネも「美味しいです!」を連発だ。


 肉の柔らかさとうま味が口に広がる。

 食べると幸せな気分になり身体が喜んでいるようだ。

 薄切りにカットされたレモンとバターがいいアクセントになっている。


(そういえば調理前の肉を取り出すことは可能なのか?)


<はい。可能です>


 おお~。だったら自分で調理するのも楽しいかもしれない。

 バーベキューとかもいいだろう。


(ハコニワ内でとれる食材も取り出すことも可能かな?)


<可能です。おしながきに追加されました。調理器具等も選択可能です>


 さすが仕事速いな。


「シーナとネネは料理はするのか?」

「わたくしは食べる専門ですわ」


 さすがは王女か堂々と言い切ったシーナ。


「す、少しは出来ますけど、私も食べる方が好きです」


 なるほど。ネネも自信はないか。

 俺も含めて全員料理の修行が必要なようだな。


 そのあと俺達はフレイムドラゴンの肉を心ゆくまで堪能した。

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