第16話 解呪

「……呪いですか……まさか……」

「ああ、そうだ。なにか身体に違和感はないか?」

「そういえばこちらに来てから、どんどん身体が重くなっていく感じがありますわ……」


 たぶんそれも呪いの影響なのだろう。 


「でもなんでそんなことがレンヤさんに分かるのですか?」


 ショックを受けているシーナの代わりにネネが聞いてくる。


「ああ、俺は『鑑定』のスキルを持っている」


 俺はスキルを持っていることを説明した。


「それによるとシーナはカース状態と出ている。それって呪いってことだろ」

「呪い……。封印となにか違うのでしょうか?」


 ネネはさらに聞いてくる。

     

「封印は分からないけど現状は、魔力とMPがゼロになっていてHPの最大値が徐々に減っている」

「最大値が減ってる?……」

「ああ、しかも減るスピードが段々上がってきている」


 明らかに減少速度が早くなっている。

 このまま進み続けゼロになれば不味いかもしれない。

 シーナに伝えたのも緊急性が高いと感じたからだ。


「シーナを確実に殺したかった奴がいたってことだよな」


 こんな若い女の子を死に至らしめようとするなんてどうかしている。


「ど、どうすればシーナ様を助けられるのですか?」

「わからない。だけどなんとかする」


 青白い顔をしてじゃがみこんで震えているシーナに近づく。


「呪いは…実行した術者しかとけないはずですわ……」


 シーナはなんとか言葉をつむぐ。


「大丈夫だシーナ。俺が呪いを解いてやる」


 やり方は分からないけどやるしかない。

 シーナにいや、呪いに直接『分析』をかけるイメージで発動。

 『ハコニワ』に全力で呪いのデータを送り込む。


 しばらくすると……。 


<『ハコニワ』より供物が届きました>


 きた! インベントリオープン。

 《解呪の種》というのが届いている。

 これか。《解呪の種》を使用。


<スキル『解呪』を覚えました>


 準備はできた。『ハコニワ』を信じてスキルを使うしかない。


「シーナ呪いを解くぞ」

「……はい。お願いいたしますわ」


 シーナも不安な気持ちをおさえ俺を信じてくれているようだ。

 なんとか立ち上がり両手を胸の前で合わせ目を閉じた。

 俺も心を決め詠唱する。


「『解呪』!」


 魔力を込め『解呪』を発動。

 シーナは柔らかい光に包まれる。

 しばらくすると紫色のもやもやしたものが、シーナから立ち登ってくる。    

  

(これが呪いの正体か? 嫌な感じだ)


 そいつはシーナから離れない様に纏わりついている。

 俺は『解呪』に力を込めて威力をあげていく。

 呪いはまるで生物が苦しんでいるかのような動きをみせはじめる。

 必死に抵抗しているようだ。


「もう少しだっ!」


 ネネは祈るしぐさでこちらを見ている。


「ギギギ…グアア…アアアアアアアア」


 苦しむ叫びの様な声が不気味に辺りにひびく。

 俺はどんどん威力を上げる。


 紫のもやに光のしわが広がっていく。


 すると必死にシーナに纏わりついていたそれは―――


 ―――ガラスが砕け散った様な音とともに粉々になり、空に消えた。


「完了だ」


 呪いが解けて倒れそうになるシーナを抱きとめる。


「大丈夫か?」

「は…はい。ありがとう……ございました……」


 ゆっくりとシーナを横にする。

 強引に呪いを解いたから身体にダメージがあるのかもしれない。


「『鑑定』!」


 うん。とりあえず魔力とMPは多分上限まで戻っている。

 HPの最大値の減少も止まったようだ。

 だけどしばらくしても数値が変わらないので、ここが上限値になってしまったのだろう。

 今までよりかなり低いところが最大値になってしまったはず。

 減った分は戻らないということなのだろう。

 そのことをシーナに伝える。


「……でも呪いは解けたのでしたら……安心しましたわ」

「ああ、それは間違いない」


 ダメージは残ってしまったけど状態は正常になっている。


(現状の最大値まで体力を回復しておくか)

 

 俺は『回復』をシーナにかけた。

 HPを全快させて他に問題ないか確認する。


 見た目やステータス的には平気そうだ。

 だけど解呪じたいが初めてなので、これからどんな影響があるのかわからない。

 しばらくは様子を見た方がいいな。


 しかし呪いか。質の悪いことをする人間がいたものだ。

 魔力とMPをゼロにされ徐々に体力を奪われる。

 そのままにしていたら確実に死に至るのだろう。

 呪いを解いてもダメージが残るとか、どんな人間がやるんだ?

 

(シーナはそれだけ恨みを買っていたのか?)


「レンヤさん。シーナ様を助けていただきありがとうございました」

「ああ。上手く呪いが解けてよかったよ」


 ネネもそばで見ていてハラハラしたのだろう。

 解呪は成功したので安心してほしい。

 だれが呪いをかけたのかとか気になることは色々とある。

 

「二人共少し休んでから話を聞かせてくれ」


 今は休んで体調の回復に努めてもらおう。

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