第134話 解析と収穫
振り返って見ても、時間より、体力と武器的にギリギリの戦いであった。
もし、武器がもう少し保ってくれていれば、まだ楽に戦えたであろうが、6重掛けの負荷に耐えられる武器が予備を含めて必要で有る事が判っただけは、収穫であった。
やはり、これからも精進を続け、何が起きても余裕で対処出来る様にしなければならないな。
俺らの頑張りが、この子らの未来へと繋がるのである。
全員で川の字に並んで寝た翌朝目覚めて子供らの寝顔を見ながら俺は心を新たにするのであった。
早朝に目覚めてしまったので、庭に出て、一人で素振りをしていると、何故か昨日の参加メンバーが一人一人、また一人とやって来る。
やはり、みんな同じ事を考えたのであろう。
「フフフ、みんなも同じか。」
「そうだな。何かが起きてからでは遅いんだな。」
「そうだね、結構十分に対応出来るぐらいの強さにはなったと思ってたからねぇ。」
「あそこまで皆さんが手こずるとは、俺にも衝撃でした。
それに、俺、おんぶに抱っこで、あまり貢献出来ませんでしたからね……。」
「ああ、そうだな。何かが起こる前に準備しておかないとな。」
と俺、父上、兄上、そして城島君も頷いていた。
結局1時間程の朝練を終えて、全員集まって母屋(実家)で朝食を取った。
「なあ、折角命拾い出来たし、今度の週末は中止になった温泉行かないか?」
と俺が言うと、全員がニコニコと賛成し、それからは再度温泉の選抜に掛かっていた。(主に女性陣で)
そして、俺と兄上、それに城島君は、会社の工作部の方へと顔を出し、昨日入手したガーディアン・ゴーレムの解析を始めた。
「なあ、これってやっぱり合金だよな?」
「うん、解析結果はそうだね。」
「未知の合金っすか? 滅茶滅茶堅かった様ですが。」
俺が鑑定とそれを本にしたワールドライブラリでの検索の結果を発表すると、驚いていた。
「ミスリル20%、タングステン10%、オリハルコン15%、エルドランド鉱40%、ハイポイラド粉末14%、魔鉄鋼1%だな。
うーん、俺も知らなかったが、エルドランド鉱って言うのは、どうやらかなりミスリルを超える魔力伝導性を持っていて、更に鍛造する事でかなり非破壊特製が上がるらしいな。
あの塔を家捜ししたら、出て来ないかな?
あと、ハイポイラド粉末ってのは、どうやら海の魔物でハイポイラド・ホエールって言う鯨の魔物の骨の粉らしい。」
「わぁ、それこっちじゃ手に入らない素材ばかりじゃ無いですかね?」
と城島君が自分のおでこをテンと叩いて嘆いていた。
「まあ、でもこれだけのガーディアン・ゴーレムがあれば、錬金で抽出出来るだろ!
ある意味、大量の宝素材ゴッチャンです!って感じだな。」
と俺がニヤリと笑う。
「フッフッフ。取りあえず、取り残しとか諸々を今日明日で取りに行かないか?」
と兄上も黒く笑う。
「「「フッフッフッフ、ハッハッハ!!」」」
「越後屋~、お主も悪よのぉ~。」
まあ、実際の話、あれだけ沢山の刀を折られてしまい、腹いせって想いもあるんだよね。
どんだけ思い入れのある刀達だと思ってやがる!
「取りあえず、先にさ、ドリュー師匠の所にお願いしに行かないとだな。はぁ~……気が重い。」
「だよね。結構無理言った自覚あるしな。」
「あの、俺も新しい刀欲しいすけど、駄目ですかね?」
「いや、駄目じゃないぞ。ただ、師匠次第だな。」
と言う事で、先に師匠の所へとゲートで向かったのだった。
「…………」
俺達が持って来た刀の残骸を前にして、床に崩れおちている師匠である。
そこへ清兄ぃらと父上もやって来て、
「なんじゃ、お前らもか。」
と苦笑いしながら追い打ちを掛ける様に、そっと刀だった物を床に並べていった。
やっと復活した師匠が、
「お、お前ら!!! 揃いも揃って、ポキポキ折りやがって!!!!」
と唾を飛ばしながら激怒しておられる。
「いやいや、師匠、あれは相手が悪いって。
ちょっと見て貰える?」
とガーディアン・ゴーレムを1体目の前にドーーンと出した。
「な、なんんじゃこれ?」
と驚く師匠は素早く、そのボディ素材をフンフンと言いながら解析している様子。」
「師匠、それね、解析した結果、ミスリル20%、タングステン10%、オリハルコン15%、エルドランド鉱40%、ハイポイラド粉末14%、魔鉄鋼1%の合金だったんだけど、俺さ、エルドランド鉱とハイポイラド・ホエールとかって魔物も知らなかったんだよね。
で、どうやらエルドランド鉱って滅茶苦茶良い素材っぽいんだけど、それとか使って新しい刀をさ、沢山打って!!」
と言いながら、今回の『出入り』と言うか『討ち入り』の内容を事細かに教えた。
「なるほど、そうじゃったのか。
じゃあ、今ここでワシらが文句言ったり出来るのも、その作戦が成功したお陰じゃったか。
ありがとうな! しかし、刀を折ったのとそれとは別じゃ!」
とお礼を言いながらも、ブツブツ言う師匠。
「なるほど、帝国大陸の奴らは、こんな物を作っておったのか……。
まあ、この先こんな事が何度もあっては堪らんからのぉ、これから抽出して、色々弄ってみるか。」
と師匠が呟いていた。
「やっぱり、流石は師匠だな。そう言うと思って、先にガッツリ抽出しておいたよ。」
とその横に、ガンガン抽出した各金属のインゴットを並べて置いた。
「ハッハッハ。流石はアツシじゃな。手回しが良い。
判った、今度は付与6重掛けでも折れない刀を作ってやるぞ!」
と師匠がノったのだった。
「「「「「「「あざーーっす。」」」」」」」
そして、俺達は、その足であの塔へとゲートで移動し、上から下まで残したガーディアン・ゴーレムの素材等を全部回収して廻る。
夕方までに17階層までを根こそぎかっ攫って、続きは明日としたのだった。
解散際に清兄ぃが俺に聞いて来た。
「なあ、徳や、あの25階層の装置の山は一体どうするつもりじゃ?」
と。
「ああ、あれかぁ~。悩ましい所なんだよね。
取りあえず、今の時点では手を付ける気は無い。
あれは、1つの世界を破壊した物で、危うくこっちまで巻き添いを食らう所だったし、あんなのを解析して俺らの世界に取り入れるのさえ、ヤバい匂いがプンプンするからな。
ただ、気持ちとしては、完全に安心出来る様に、バラバラにしたいんだけど、内容が分からずバラしたり、傷付けると何が起こるか判らないからなぁ。
一応、機会があれば、大神様に聞いてみようと思うんだ。
多分、近日に来てくださると思うし。
あと、少し心配なのは、あれだけの魔力を集めたり暴走させたりした根源のエネルギー源だよ。
外からの魔力をプールしてたのか、どうかは判らないけど、それがまだここにあるってのが怖いんだよね。
だから、あるとしたら、24階層から下だと思ってるんだ。
その為にも、一応下を全部確認しないと、安心は出来ないからね。」
と俺が言うと、
「うむ。確かにその通りじゃな。」
と考えながら頷いていたのだった。
そして、その夜大神様とカサンドラ様が満面の笑みを引っ提げてやって来たのだった。
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