第123話 ボリ過ぎたか?

 そんな訳で、ギルドからの指名依頼が入り、飛行型魔物の巣3箇所の討伐を受ける事になった。

 メンバーは、俺、清兄ぃ、叔父上、父上、聡君、前田、凛太郎、グリード、それに何と久々に兄上も参加するらしい。


 総勢9名で3人ずつの3チームに別れて、それぞれの巣を殲滅する予定である。

 この中で、飛行魔法が使えないのは、前田、凛太郎、グリードの3名。

 他は、空中戦も可能である。


 各チーム編成は、

 俺チームは、前田、グリード

 清兄ぃチームは、凛太郎、兄上

 叔父上チームは、父上、聡君

 とした。


 まあ、バランスが取れて居るのでは無いかと。


 場所は一応地図で確認したが、馴染みの無い場所(行った事のない場所なのでゲートではショートカット出来ない)だったので、自衛隊のオスプレー3機で送ってくれるらしい。


 出発は、明日の午前3時となる。


「敬護~、皐月~、お父さんまた仕事入っちゃって、2,3日留守にするけど、良い子にしてるんだぞーー。」

 と夕食後、リビングで皐月を膝の上に抱いてマッタリ中、子供らに話掛けると、


「そっか、今度は何処に行くの?」

 と敬護が聞いて来た。


「うん、今度あ旧★国のどうやら、山間部っぽいね。飛行型の魔物の巣があるらしい。」

 と教えると、


「へー! あっちの方だとかなり北側だから、結構寒そうだよね?」

 と敬護。


「ああ、そうだね。かなり北側だもんね。 山間部だし、もしかして、雪って事もあるのかな?

 ああ、それは考えてなかったな。面倒だなぁ。」

 と全くそこは気にしてなかった俺。


 何故なら、雪でも飛べば良いぐらいに思っていたが、よくよく考えると、今回のメンバーは飛べないオッサンと前田だ。

 あいつら、早く飛ぶ練習してくれないかなぁ。


 敬護の指摘にハッとして、2人に連絡を入れた。

「明日の場所だけど、もしかしたら、雪あるかもしれないから、防寒具と言うか、ローブ忘れるなよ?

 あと、これ終わったら、いい加減、飛ぶ練習しとけよな?」

 と言うと、


「ガハハ。俺様はもう飛ぶ練習してるぜ? まあ、長時間は無理だけど、微妙に行けるぞ。」

 と以外に努力家な面を見せるグリード。


「お、俺も、浮くぐらいなら何とか。」

 と前田。


 ふむ、一応ちゃんと頑張っては居るらしい。



 ◇◇◇◇



 そして、夜中の2時に起き、2時半にはメンバー全員が、佐々木邸の庭に集合した。

「持ち物は不足は無い? 一応山間部に行く予定のある者は、防寒具が必要だからね。」

 と言って確認したが、問題なさそうである。


「じゃあ、ちょっと早いけど、羽田に行くか。」



 羽田の格納庫では、既に自衛隊機が3機、スタンバっていた。


「お久しぶりです。佐々木さん。」

 といつものパイロット2名と、他に4人のパイロットが出迎えてくれた。


「おお、また君達か。宜しくね。

 そうそう、エルフやケモ耳、ちゃんと逢えた?」

 と聞いて見ると、凄く嬉しそうな笑顔で、親指を立てていた。


 なんでも、ユグドラシル大陸向けの作戦には、率先して志願しているらしい。(6名共に)

 しかし、最近では、噂が広がり、志願者続出で、競争率が高いと、ボヤいていた。


 そして、軽く歓談した後、ブリーフィングも終わり、少し早めだが、3機にそれぞれ分乗し、真っ暗な空へと舞い上がったのだった。




「いやぁ~、佐々木さんとのミッションは、これがあるから、楽しいんですよねぇ。」

 と俺が持って来た機内食を頬張りながら、パイロットが終始ニコニコ顔である。


 グリードは後ろの席で、イビキを豪快に響かせながら寝ている。

 前田はそんなグリードから離れた席で、眠そうにしている。


 そして、更に1時間半ぐらい経った頃、目的地にかなり近付いたとコクピットから知らされる。

 前田とグリードを起こして、コクピットに集まり、タブレットで、現在位置を確認する。

 大体、この先50kmぐらいが目的地である。



 パイロットに指示をして、上空で旋回して貰い、怪しい辺りの気配を探ると、確かに魔物が集まっているポイントを発見した。

 懸念していた雪はほぼ無く、移動に支障はなさそうではある。

 地上のポイントを決めて、パイロット達にお礼を言って、ゲートで降下したのだった。




「来たな。鳥共の巣窟に。」

 とグリードがニコニコ顔で呟く。

 今回の俺達のターゲットである、レッド・ファルコンだが、実は肉がかなり美味いのだ。


「どうせ、お前は肉狙いだろ?」

 と俺がグリードに聞くと、「当たり前だろ?」と言われた。


 まあ、確かにあの肉は大量に入るなら、手に入れたい一品である。

 なので、出来るだけ、綺麗にヤルと言う事で3人の意見は一致した。


 巣のある場所であるが、山間部に建った旧リゾートホテルの廃墟らしい。

 まだ日の出前ギリギリで、薄暗い為、外には出て居ない。


「なあ、あつし、あれって建物の中に閉じ込められないかな?」

 と前田が聞いて来た。


「ふむ、なかなか大胆な案だな。

 が、しかし、出来ない事は無いぞ?」

 建物自体は結構なサイズだが、弾劾の日の地震の影響か、微妙に崩れた廃墟である。


 全員で、気配を殺して、建物へと近寄った。

 そして、俺は窓や壁の穴を全部土魔法で塞いで行く。

 5匹程、屋上に居た奴が騒いでいたが、まあ、グリードに任せよう。


 グリードは早速対戦車ライフルを持ち出し、俺特性の魔力弾のマガジンを装着し、ドッッコーンと言う馬鹿デカい銃声を響かせつつ、3匹を仕留めた。

 2匹が真っ暗な空にギャーギャーと鳴きながら飛び上がったが、鳥目なので、俺達を目視出来ずに、困惑している。


 あ、ホテルの壁にぶつかった……バカな鳥だ。下に落下した所を好かさず前田が首を刎ねていた。

 最後の1匹は、逃げに入って居たが、俺がウィンドカッターでサクッと首を刎ねて落下して来た所を収納した。


 俺達3名は、唯一開けておいた、割れたロビーの窓から室内に入り、中を探索していく。


 所々天井が抜けていて、内部は酷い有様である。

 何よりも、キツいのは、その匂い。鳥の糞や何かでヤバい。3人は直ぐに例の暗視機能付きの空気清浄マスクを付け、マスクで清浄化された新鮮な空気を深呼吸した。

「(ヤバい匂いだったな)」

「(ああ、あれはグリードより凶悪だった)」

「(ば、んな、俺は臭わねぇぞ!?)」

 とグリードが自分で脇の下に顔を突っ込んで臭ってみているが、グリードよ、マスク着いたままじゃ、何も臭わないぞ?


「(まあ、グリードの加齢臭の話はさておいて、打ち合わせ通り、3方向にバラけて、各自殲滅な。)」

「「(おう!)」」



 まあ、結果から言うと、飛び立つ前の狭い空間であれば、取るに足らない相手である。

 しかも真っ暗だから、一方的に、首を刎ねて廻って収納するだけの、簡単なお仕事だ。

 マジな話、ちょっと依頼料吹っ掛け過ぎたかな? と気の毒に思う程だ。

 幾らファイヤーブレスを持つ鳥でも、狭い空間で敵も味方も判らない状況では撃てない。


 フフフ。いつもこんな依頼なら、大楽勝なんだがな。


 結局30分ちょっとで、建物内の全てのレッド・ファルコン328匹の討伐を完了した。


「ハッハッハ、大漁じゃ無いか!」

 と高笑いする、グリード。


 気分は既に、焼き鳥とビールである。

 グリード曰く、日本の焼き鳥は美味いらしい。

 何で、あんなシンプルな料理なのに、こんなにも美味いのかが理解不能だと言っていた。



 朝日に照らされている建物の外に出て、辺りの気配を探ったが、流石はヤバいレッド・ファルコンの巣の周辺だけあって、全く魔物の気配は無かった。

 俺チーム、任務完了である。


 流石に、余り早く帰るのも拙いので、テントを出して、一旦休憩する事にした。

「なあ、あつし、どうせなら、1匹解体して、焼き鳥にしねぇか?」

 とグリードが悪い顔をして俺を唆す。


「フフフ、悪く無い提案だ。」


 早速1匹を逆さに吊って、血抜きを行う。

 更に、内臓を取り、羽を毟って表面を綺麗に焼き、産毛まで取った。

 土魔法で作った作業台の上で、このデカい巨体を肉ブロックに解体して行く。

 20分掛けて、完全に部位毎に解体し終わり、今度は各部を少量ずつの肉片にして、3人で手分けして串に刺して行く。

 やはり、ねぎまは外せない。


 3人共無言で、黙々と串に刺して居る訳だが、その表情は、レッド・ファルコンの巣に討伐しに入る時より真剣であった。


 30分掛かりで、それぞれ300本ぐらいの串を作り終わり、


「はぁーー、終わった。」

 と安堵のため息をついたのだった。



「あつし、早くBBQコンロ出せよ!」

 と前田がせっつく。

 どうやら、待ちきれないらしい。


 テントの外にBBQコンロとテーブルと椅子を出し、火を起こし、網の上に串を並べて行く。

 塩焼きとタレを半々にした。


 ジューッと油が炭に滴って、良い匂いが辺りに充満する。

「匂いだけで、堪らんな。」


「ああ、同感だ。」


「まだか? あつし」

 グリードは、マイ皿を両手に抱えて、横に立っている。



 やっと、第一陣が焼き終わり、全員で頂きます!



「「「うっめーーー!!」」」


「おい、あつし、ビールないか?」

 とグリードが魔の囁きを投げかける。


「おまっ、俺が我慢していた一言を……。」


「任務完了しているんだから、良いんじゃないか?」

 と前田もグリードの提案に乗っかる。


 そこへ、清兄ぃから、連絡が入る。


「徳や、焼き鳥食いたいのぉ。」と。


 結局叔父上も任務完了したらしく、3チームが合流しての焼き鳥大会へと雪崩混んでしまい、焼き鳥の『魅惑』にはレジスト出来ず、あっさりとピールと日本酒がテーブルに加わったのだった。



 結局、全員グテングテンに酔っ払い、寝不足と、一仕事後の程良い疲れとで、そのまま、そこでテントを出して寝てしまった。


 一方対策本部の方では、まさか、そんな事になっているとは知らず、任務完了の知らせを今か、今かと待ちわびて居た。

 中には、泊まり込んだスタッフも居たららしい。



 翌朝、スッキリと目覚めた俺達は、一応朝風呂に入り、着る物もクリーンを掛けて、酒の匂いを抜き、サッパリとした表情でギルド本部と対策本部に顔を出して、任務達成を報告した。

 なんか、サッパリしている俺達とは対象的に、恐らく本部に泊まり込みで、寝ずに報告を待っていただろう、無精髭でドンヨリとした表情のスタッフに、ちょっと悪い事をしてしまったかな?と心の中で詫びたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る