第109話 アルサンドラ魔人国
どうやら、目的地のアルサンドラ魔人国の首都に着いた様だ。
速度を落としつつ、刺激しない様にユックリと城門の200m程手前に着陸した。
城門の方からは、衛兵達が20名程隊列を組んで、城門の前を固めている。
機体から降りて、両手を上げて、敵意の無い事を示しつつ、
「俺達は、余所の大陸の国、日本国からやって来た特使である。
女神カサンドラ様から、こちらの世界にユグドラシル大陸が転移して来るとの神託を貰い、食糧難とも聞いているので、救援物資を持って来た。
特に害意は無い。
そちらに近付いて良いだろうか?」
と風魔法の拡声を使って宣言すると、
「判った。宮殿の方へは今から伝令を出す。
暫くこちらで、待って頂きたい。」
と返答があった。
そこで、一旦オスプレーを収納して、清兄ぃと2人でユックリと城門の傍まで歩いて行った。
初めて見るここの魔人族だが、城門前に整列している衛兵は、人狼族とインキュバスと下級悪魔の混成部隊であった。
「やあ、初めまして。日本国の特使でやって来た、佐々木徳士と、こちらは佐々木清治郎だ。
今、こちらの大陸の全部の国を廻って救援物資を配っているんだけど、アルサンドラ魔人国の方は、食料とか不足してない?」
と聞いてみると、衛兵達が、苦い顔をしている。
「わ、我々の一存では申し訳ないが、答える事が出来ないのです。」と。
なるほど、色々と大変なんだな。
「エルフの森も大変だったけど、ユグドラシルの木に魔力が戻ったから、おそらく近々この大陸全体に行き渡ると思う。
そうすれば、以前同様に作物も育つ様になると思うから、それまでの辛抱だよ。」
と軽く情報を流すと、全員の顔がホッとした表情に変わった。
暫く立ち話をしていたが、宮殿の方から迎えの馬車が到着し、馬車から官僚っぽい雰囲気のインキュバス?が降りて来て、恭しくお辞儀をして挨拶をして来た。
「日本国の特使の方々、お初にお目にかかります。
私、アルサンドラ魔人国の大臣をやっております、アルフレッド・フォン・デリンジャーと申します。
魔人王陛下がお会いになるそうなので、お手数ですが宮殿の方まで、お越し頂けますでしょうか?」
「どうも、ご丁寧に。
日本国の佐々木徳士と、こちらは佐々木清治郎です。
宜しくお願い致します。」
と挨拶をして、馬車へと乗り込んだ。
馬車の中では、アルフレッドさんとこれまでの経過なんかを説明しつつ、穏やかに話が進む。
時々眺める街の様子は、人通りが殆ど無くて、寂れている感じだった。
「ここには、どれ位の住民が住んでいるのでしょうか?
多少は食料を持参しておりますが、本格的な物資となると、国からの救援部隊が持って来る事になります。
それまでの何日分が保てば良いんですが。」
と聞いて見ると、それ程極端に人口が多く無い事が判明した。
「魔人族全般に、それ程多産ではないのですよ。」とアルフレッドさんが教えてくれた。
ただ、魔人族全般に言えるのは、種族の特徴として、物質的な食料以外でもエネルギー源を得られる為、割と消費する食料が少なくとも、耐えられるらしい。
なるほどな。
とは言え、食糧不足である事は事実なので、大変にありがたいと言っていた。
宮殿に到着し、謁見の間に通されると、なかなか渋いイケメンオヤジ風の魔人王が玉座へと座っていた。
横には、同じくバンパイアの超美人の王妃様が座っている。
服の上からでも判る程の、超ナイスボディーである。
「うむ、その方らが、日本国の特使の方々か。
余がアルサンドラ魔人国の王である。
遠い所を駆けつけて頂き、感謝するぞ。」
とお礼を言われた。
「はじめまして。日本国特使の佐々木徳士と、こちらが佐々木清治郎です。
先程、デリンジャー大臣にもお伝えしましたが、女神カサンドラ様からの神託で、不作が続いて食糧難とお聞きしたので、救援物資を持って参りました。
本格的な救援部隊は、明日か明後日に到着すると思います。
あとで、暫時住民に配る食料を倉庫の方へお出ししますので、宜しくお願いしますね。」
「そうか、忝い。
して、こちらの世界は、どんな風なのじゃ?」
と質問された。
そうか、やっぱ気になるよね?
そこで俺は、事前にこちらの創造神である大神様とカサンドラスの女神であるカサンドラ様からの予告があり、弾劾の日以降、ダンジョンや魔物が出る世界に変わった事や、この世界が元々は魔力や魔法に頼らない文化を築いて来た事や、現在は魔法と科学を融合した新しい文化に変わりつつある事を説明した。
「なるほど、こちらの世界も色々と大変じゃったのじゃな。」
「ええ、まあしかし、現在も世界各地で復興中ですから、また盛り返すでしょう。
我々日本国は、良き隣人には、良き隣人として、節度ある友好関係を築いて来て居ます。
ですので、貴国にも是非、良き隣人となって頂きたいと思っております。」
と締め括った。
その後、救援物資を倉庫に出すと、アイテムボックスのスキルに驚きつつも、役人や兵士達が慌ただしく馬車に積み込んで、市街へと運んで行ったのだった。
また、簡素な物で非常に申し訳ないが……と言いつつ、夕食に呼ばれ、歓談を楽しみつつ魔人国料理を頂いた。
まあ、料理自体は特に普通で、ゲテモノが無かったのは幸いだった。
本部にも報告を入れ、さっちゃんの声を聞いて、宮殿に一室で一泊。
これで、残るのは、ドワーフの国のみであるが、問題はドワーフの国?が鉱山次第で移り変わる事である。
しかも、坑道と言うか地下都市になっているので、地上からは判りづらい事だ。
一応、大臣のアルフレッドさんから情報は得ており、あちらの世界で異変が起きる前の最終地点を目指す事にしている。
そうそう、こちらのドワーフとエルフもやはりご多分に漏れず、戦争する程ではないが、仲が悪いらしい。
まあ、サクッとドワーフの方も終わらせて、大晦日はユックリ家族と除夜の鐘を聞きつつ、年越し蕎麦を食べたい物だな。
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