第18話 第3階層の続き
翌日は、幼稚園から戻り、母上に大きめの紙を何枚か貰い、ノートに描いたマッピングメモを整理しながら纏めて行く。
兄上が帰って来る2時間程の間で、何とか纏め終わってホッとする頃、
<ピロン♪ スキル マッピングを取得しました。>
と頭の中で鳴り響いた。
『おーーー! 何年振りかかの新規のスキルだー!! ヒャッホー!』
と思わず小躍りしてしまう俺。
マッピングスキル…これは先に述べた様に、ダンジョンの様な方向感覚が狂う空間に於いても、方向に対する感覚が鋭敏になり、まるでジャイロコンパスが頭の中にあるかの如く、方向、距離、角度、高低差等が感知出来る様になる。
また、頭の中に、マップが表示されるようになるので、通った場所なら、地図が頭の中に出来上がるのである。
これによって、第3階層も迷う事無く進む事が出来るだろう。
やはり、良い事も悪い事も、経験はそれなりに自分の糧となるのを実感するのだった。
その夜、新しく得たマッピング・スキルを使いながら、第3階層を再度始まりの階段の出口から探索開始する。
一夜のうちに、リポップしたゴブリン共をドンドンと粒子に変えて行き、昨夜発見したモンスターハウスを確認すると、また蓋の閉まった宝箱が、部屋の奥に置いてあった。
「ほー、一夜で宝箱も復活するのかな?」
と感心しつつ、部屋に入ると、昨夜同様、一斉にゴブリンがリポップして来る。
再度四巡無双を繰り返すと、打ち止めになった。
そして、お待ちかねの宝箱オープンタイムである。
ドキドキしながら、蓋を開けると、昨日と同じ装備がちゃんと入っていた。
「マジか! 普通ならランダムで出て来る筈だが、これは神様達からのプレゼントと言う事だろうな。ありがたい。」
と上を向いて、心の中で感謝を述べる。
全ての宝箱の中身もドロップ品の魔石も全て回収し、探索を再開した。
各ホールのゴブリンも完全にリポップ済みだが、手動のマッピングが不要の為、昨日以上のペースで進む事が出来る。
最初の1時間が過ぎた頃には、未踏破エリアへと足を踏み入れていた。
未踏破エリアに入って、15分くらい経つ頃になると、出て来るゴブリンに変化が現れる。
通常ゴブリンが、棍棒や錆びたナイフを持ち、ちょいちょい上位種であるゴブリン・ソルジャー、ゴブリン・アーチャー、ゴブリン・メイジ、ゴブリン・ナイトが混じって来る。
しかも、これまでのゴブリンは、こちらの接近に気付いてなかったが、これら上位種が率いるゴブリンは、俺の接近を予め感知しており、待ち伏せたり、曲がり角から顔を出した瞬間を狙って、弓矢や魔法による攻撃を仕掛けて来る。
レベルが上がった事に比例し、俺の魔力感知や気配感知のエリアが広がっているので、特に脅威とはならないのだが、敵が妙な小細工して来るので、ペースは若干落ちる事となる。
「まったく……ゴブリン如きが! 小細工がウザいんだよ!」
と毒突きながら、岩陰から狙って来るゴブリン・アーチャーの矢を避けつつ、錆びたナイフを振り翳すゴブリンの首を刎ねて、光の粒子に変えながら、左手の平からウィンド・カッターを発射して、弓を構えるアーチャーを弓ごと顔を半分に切断した。
残りのゴブリンも粒子に変えて、仲間の下へと送り、ドロップ品を収集する。
上位種が混じり出した事で、2つ良い事がある。
1つは、入って来る経験値が僅かではあるが、増える事。
2つ目は、ドロップ品である。
通常のゴブリンでは、屑魔石しか残さないが、上位種になると、多少マシな魔石と、結構な頻度で、低級ポーションや、指輪や、金貨等をドロップするのだ。
まあ、低級ポーションの効果等は知れてるのだが、それでもザックリと深さ2cmぐらいの切り傷何かが、一瞬で止血され、傷口も塞がる。
ただ、この塞がった傷口が厄介で、跡が残るのである。
また、骨折や、内臓まで達する様な傷や怪我には、多少効果はあるが、気休め程度なので、直ぐに骨が繋がったり、内臓の損傷が消えるなんて事は無い。
これが、中級ポーションとなると、傷口も残らず、内臓の損傷にも、それなりの効果を発揮する。
まあ、だからこそ長年D級やC級辺りをウロチョロしている中堅冒険者(あまり強くない奴ね)には、かなりの確率で、傷跡が多いのである。
低級ポーションがソコソコに安い値段…日本の現在の価値にして、約1000円とすると、中級ポーションは、1本10万円ぐらいの金額となる。
その上の上級ポーションとなると、1本200万円と、驚きの価格になる。
まあ、俺のアイテムボックスの中には、前に言った様に数百本単位で入っているのだが。
え?何でそんなに沢山持って居るのかって? そりゃあ勇者様だもん。
幾らでも国が支給してくれるんだよ! って話ではなくて、せっせと自分で作ったんだよね。
ほら、必要な薬草や素材は、アイテムボックスに見つけると採取して溜めて行く癖があってね。
せっかくだから、知っておいた方が良かろう?と当時パーティーを組んでいた、エルフの子が教えてくれたんだよね。
で、俺はこう見えて、結構凝り性で、ドンドン上達するのが嬉しくて、せっせせっせと空いた時間で作り溜めしていった結果なんだ。
なので、お陰様で、俺の錬金術の腕前は、かなりの物になったと言う訳。
◇◇◇◇
さて、それから更に1時間程進んだ頃、ホールの中の構成にも変化が出て来た。
ゴブリン・ジェネラルである。
ゴブリン・ジェネラルは、通常のゴブリンと比較すると、10倍以上に強い。下手すると20倍ぐらいかも知れない。
ゴブリン・ソルジャーやゴブリン・ナイトは、バスターソードや、タガ―と呼ばれる、ソコソコの剣を使うのに対し、ジェネラルとなると、ロングソードや、大剣(斬ると言うより、叩き切る様な分厚く重い剣)を使ってくる。
また、魔法も使え、身体強化も使って来るので、今の俺にとっては、かなりの強敵である。
で、ですよ。
なんか、魔力感知にデカい反応があるなぁと通路の影から、ホールの様子を見ると、いらっしゃる訳ですよ……ゴブリン・ジェネラルさんが。
「(うっはー、まあその内出て来るとは思っていたけど、結構ヤバいなぁ。)」
と小声でボヤいている現在。
多分、感覚的に、あと少しでレベルアップすると思われるので、行けるんじゃないかとは思うんだけど、どうすっかなぁ?
MPの残は、1/3ぐらいなんだけど、最初にデカいのをお見舞いして、ダメそうなら、逃げる?
レベルアップは、多分、あとナイト辺りを3~4匹ぐらいやればアップすると思うんだけどなぁ。
少し、気を落ち着けて、冷静に考えたが、
「(まあ、良いか。 よーし、行ってみよう!!)」
と突っ込む事にした。
まだ『並列処理』が封印中で、並列で魔法を発動出来ないので、ここは一つ、特大の火魔法をど真ん中で爆発させるか。
いつもより、多めの魔力を集め、ジェネラルが鎮座している、中央辺りを狙って……『ファイヤーボム』!!
魔力が大きく吸い出され、真っ白な色の30cmぐらいの火の弾が、ジェネラルの所へ高速で飛んで行く。
俺は、魔法発射と同時に飛び出し、高速で駆け抜け、小太刀とファイヤーボールを続け様に発射する。
「ドッカーーーーン!」
ジェネラル辺りに着弾した最初のファイヤーボムが、ファイヤーボールの比ではない威力を持って大爆発と爆風を引き起こす。
そして、続けて、彼方此方に着弾したファイヤーボールも炸裂する。
「「「「ドドドカーーーン ギャーー」」」」
と言うゴブリンの悲しげな断末魔の叫び声が爆発音と重なり、阿鼻叫喚の地獄絵図が出来上がる。
死ななかったゴブリン達は、ギャーギャーと呻きながら、フラフラと立ち上がったりしているが、その向こうにジェネラルさんが、かなりの重傷を負ってまだ、生きておられた。
「ガーーン、死ななかったか……頑丈だな。」
MPがキツいので、もう1発ファイヤーボムはヤバい。
ファイヤーボールを5発連発で撃ちながら、小太刀でも生き残ったゴブリンを葬り去って行く。
<ピロン♪ レベル7になりました。>
おお、待ちに待ったレベルアップ!!
MPが一気に復活したので、遠慮無く、ファイヤーボムを再度ジェネラルにお見舞いした。
「ドッカーーーーン!」
と周囲に居た負傷してた上位種共々、一気に崩壊して光の粒子へと変わっていった。
<ピロン♪ レベル8になりました。>
残りは雑魚の生き残りが少々。
ザクザクと小太刀で始末して行き……
「ふぅ~、完了~ いやぁ~、ジェネラルの経験値、美味しいっすね。」
と一気に2レベル上がって上機嫌の俺。
鼻歌交じりで、ドロップ品を回収した。
あ、ジェネラルのドロップ品ですが、魔石と、持っていた立派な大剣でした。
ステータスを確認すると、
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名前:佐々木徳士(佐々木徳治郎)
年齢:6歳(32歳)
種別:人族 Lv:8
職業:---(勇者※)
状態:正常
HP:138/138(1261※)
MP:270/276(2085※)
筋力:108(1527※)
俊敏:109(1319※)
頭脳:262(2368※)
運 :154(1008※)
武術:佐々木流斬刀術 アンドレフ体術
魔法:火 中級(Ex級※)
水 中級(Ex級※)
風 中級(Ex級※)
土 初級(Ex級※)
光 初級(Ex級※)
闇 初級(Ex級※)
聖 初級(Ex級※)
空 初級(Ex級※)
ギフト:言語理解
アイテムボックス
経験値倍増
魔力回復倍増※
体力回復倍増※
物理攻撃軽減※
魔法攻撃軽減※
ワールドライブラリ※
スキル:鑑定※
隠密※
気配感知※
魔力感知
魔力操作
身体強化
並列処理※
思考加速※
錬金※
鍛冶※
テイム※
マッピング
称号:神風の勇者
異世界の神に愛されし者
偉業を達成した者
加護:カサンドラス神の加護※
大神の加護
英霊の加護
備考: ※ 制限中
( )隠匿
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「おしっ! あと2レベルで10だ!!」
とガッツポーズ。
十分に戦って、身も心も満足たし、今日はここら辺で戻る事にしたのだった。
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