第3話 前世のおかげで俺のスキルが凄くなる


 やっと雑魚部屋の自分の寝床に戻った。

この部屋は女性奴隷七人と成人前の男性五人が詰め込まれている。

ちなみにこの世界での成人は十五才だ。

もう寝てる者もいるから音を立てないよう自分の寝床に向かう。


「遅かったな、もしかするとビサールたちとなんかあったか?」

小声でヴァネッサは声をかけてきた。


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いきなり聞かれるとは。

隠すべきか、だが少なくとも嘘はまずいな。

「…… そうだけど、色々話をして解決したよ」


「そっかなんにもされなかったのか。

いつも私がいない時を見計らってあいつらはタウロにちょっかい出すからなあ」


「俺が重労働とかに参加しないのを忌々しく思ってたのかなあ」


「それもあるだろうけど。

ところでタウロなんか雰囲気変わったな。

それにじゃなくてになってるぞ」


ヴァネッサ意外と鋭いな、焦るぞ。

「うん、もうすぐも来るし、大人になろうと思って。

自分のことをって呼んじゃうとまだ子供って感じでしょ。


「なるほどなそれは分かった 。

ちょっと聞いたんだが 昼間 もビサールたちに絡まれなかったか」


あれっヴァネッサどこまで知ってるんだ?

「 ああちょっと揉めたかな。 よく知ってるね 。

どうやって?」


「 誰から聞いたかって?

お前のことを気にかけている奴は意外と多いんだよ。

続きがあってだな。

ちょっと信じられないんだが お前が ビサールたちをコテンパンにしたという 話になってるんだが 」


俺は反射的に否定してしまった。

「違う違う そんなことないよ。

困ったなあ…… そんなデマが 流れちゃうとまたビサールたちに 恨まれちゃうよ」


片方だけ見えているヴァネッサの表情が寂しそうに見えた。


彼女はため息をついた。

「タウロ 私には嘘をつかないでほしいな」


「え嘘なんて」


彼女はフッと笑うとため息をついた。

「こんな遅い時間にビサールたちが 何か仕掛けてきたのは初めてだろう 。

どうしてなんだ と思うかい。

それは昼間に お前にやられてしまったからその仕返しだ。

タウロ、自分のことだからもちろんよくわかってるよな」


「あ、ああ」

やばい、それしか言えない。

彼女は悲しんでいる。

それは表情からもその声色からもよくわかる。


この世界で最も悲しませたくない人を悲しませてしまった。

七才の頃、ここで奴隷になってからずっと面倒を見てくれて守ってくれた母であり姉でもあるような存在。


でも何を話せばいいんだ。

どう話せば、どこまで話せばいいのか。


「ごめん今日はホント色々ありすぎて。

消化しきれてないんだと思う。

明日ちゃんと話すから。

くたくたで…… 疲れちゃってもう眠くてしょうがないんだ」


ヴァネッサを見もせずに俺はそれだけ言うと返事も聞かず、寝床に入った。


           ◇


前世を思い出してから初めての夜、目を瞑っていたが興奮して俺は眠れない。 


考えてみると覚醒してからの俺はやけに強かったな。

身体能力が上がったはずはないと思う。

そういうのはで確認しても表示されないからはっきりとは言えないけど。

多分テクニカル的な、経験や技術とかの能力が向上しただけだ。

前世の記憶が蘇ったんだからテクニカルな部分が上がったのだけは間違いない、絶対だ。


よし視るか。

俺は心の中でと唱えた。


名前 タウロ 

生年月日 統一歴二百七十三年五月十五日


取得スキル 


礼儀作法      中級

文字理解      神級

短剣術       優級

歴史        下級

算術        聖級

乗馬        上級

棒術        特級

日本皇国語     神級

転生道       神級

天地二刀流     優級

光明一刀流     宝級

不触功剣流     金級

熊谷流古武道    宝級

岡田式古武術    金級

藤森流忍道     宝級

真総合格闘技    金級

オースティン式軍隊格闘技 金級

ナバロン流戦闘術  宝級

野宿指導      宝級

装甲四輪車     聖級

戦闘用機動車    聖級

二輪車       聖級

大型二輪車     聖級

列車型自動車    聖級

普通四輪車     聖級

乗客用大型四輪車  聖級

輸送用大型四輪車  聖級

軽化学物質取り扱い 聖級

軽銃器取り扱い   聖級

重銃火器      聖級

小型兵器      聖級

中型兵器      聖級

大型兵器      聖級

輸送用ドローン操作 聖級

有人ドローン操作  聖級

戦地臨時医師    宝級

調理師       特級

戦地調理      宝級

薬学師       金級

小学軍事演習官   宝級

中学軍事演習官   宝級

高校軍事演習官   宝級

中学戦闘指導    宝級

高校戦闘指導    宝級

防衛官指導     宝級

一級警備      金級

英語        聖級

ドイツ語      聖級 

小学教員      聖級

中学社会      聖級

中学国語      聖級

高校国語      聖級

油絵画       金級

水彩絵画      優級

墨絵画       聖級

ピアノ       聖級

ギター       聖級

テナーサックス   聖級

アルトサックス   聖級

ウクレレ      聖級

ワインソムリエ   金級

カクテルマイスター 聖級

ビールマイスター  宝級

釣り        優級

パチンコ      聖級

カジノ       聖級

社交ダンス     特級

茶道        聖級

コーヒーソムリエ  優級

紅茶ソムリエ    特級

華道        優級

詩吟        聖級

グランドゴルフ   聖級

カラオケ      聖級

将棋        聖級

囲碁        聖級

缶詰マスター    聖級

レトルト食品マスター聖級

簡単クッキングマスター聖級

ファッションアドバイザー 宝級



なんだこれは、驚いたな。

色々な経験を積めば転生した時に役立つと父さんがアドバイスしたのは

これのためだったんだな。

父さんからの暗号を解読した時に経験を積めというアドバイスがあって行動に移すべきか悩んだ。

が信じてよかった。


日本人の時は中学教師・軍人・民間警備員の他にディスカウントショップや大型スーパー、コンビニなど他にも様々な経験をした。


しかし級と級が多い。

級もあるぞ。

初級から始まって下級・中・上・特・優・金・宝と……  ここまでは知っていた。

今の俺がまだ経験も少なく、さらには奴隷だから知識が無いだけかもしれないが。


俺はをじっと見て考える。

そして一つの推測を立てた。


地球ではなく名称もないこの世界であるでまったく普及していない、知られてないスキルは聖級になってるのでは。


楽器のスキルが聖級なのはおそらくこの世界にこれらの楽器が存在してない。

絵画に関しては存在しているか似たようなものがあると。

前世で乗馬をたしなんでいたがこの世界でも乗馬は盛んだから上級なのか。

礼儀作法と歴史はこの世界独自のものだからあまり上がらなかった。

それでも少し上がったのは七十二年の人生を経験し、違った角度から判断できるようになったからだろう。


           ◇


しかし父さんとその勤務先の学校関係者数名がいなくなり、残った者全員が異口同音に異世界召喚の話をした時は驚いたし、最初は信じられなかった。

矛盾などまったくなく非科学的な事件を結局は信じるしかなかった。


そして父さんの指示を信じ、日々転生の儀式を五十年ほど行い、無事転生できた。

しかし転生時に会った大きな銀の目と長い銀髪を持つ自称女神のネエチャンはいい加減だ。


貴族の家に生まれるから、十七才の夏八月八日に帝都にある帝国第一魔法学園に在籍していろと指示しやがった、自称女神。

だが今の俺は帝国の端にある準伯爵領の外れで奴隷として使役されている。

貴族の家に生まれたのは確かなのだが、この世界は野蛮で理不尽な世界だ。

不本意ながら幼い俺は奴隷となり両親は殺された。



帝国第一魔法学園の件だが、もうすぐ十四才だから三年ちょいしかない。

いや入学から考えると二年ないし、受験はもっと前だろうし。

の中の常識として家庭教師がちょっとだけ教えてくれたが、たしか中級貴族以上の縁者しか入学出来ないのだった。


どうする、現在俺は奴隷。

奴隷は卑民に属する。

そこから下民・平民・下級貴族・中級となっていかねばならない。


           ◇


有利な点は算術が聖級で文字理解が神級なことだろう。

受験で有利になる。

というかこの世界の言語は奇妙だ、おかしい。


この世界で十四年近く生きてきた俺は普通に話せる。

そこは問題ない。

不自然なのは文字が日本語という点だ。

それが表音文字ではないのだ。

例えで言うなら英語の会話を文章にする時日本語に翻訳して記すようなものだ。


これは絶対ややこしい。

だからこの世界では識字率が極端に低い。


例えば


言葉・発音   アダ  フリャブ ヴセカ ォイツ ロスネムン

文字      私には理解できないので今度詳しく教えて


こんな感じだ。


関連がないから丸覚えするしかないし、文字自体を読むこともないから平仮名だけにするとかの習慣もない。

こうなったのは日本人が関わっているとみて間違いない。


だから圧倒的に俺に有利だ。

文字指導担当の家庭教師にバレないようにしなければならない。


           ◇


自称女神が、『十四才を迎える十日前に前世を思い出す』と言ったがそれはそのとおりになった。


十日後に行われるではどんなスキルを授かるんだろうか。

このギフトでは魔力の有無は関係なくもれなく全世界の者に与えられる。

一般人の十倍以上所持している俺はもう貰わなくてもいいのだが。


それから直近の問題であるヴァネッサへの対応を考えた。


すべてを正直に言えたらいいのだが、この世界で転生のことを聞いたことがない。

長い時間考え俺は答えをだした。

自称女神の存在をおおいに使わせて貰おう。

よし明日ヴァネッサに話し、そして棒術が上達していることを訓練で示そう。





 

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