貴族の家に転生した筈が 奴隷に堕ちていた俺は3つのチート『一時交換・オウト・レイマホウ』を授かり無双し成り上がる
ウチノスケ
卑民編
第1話 僕は気を失い俺は前世を思い出した
緩衝のために布が巻かれているとはいえ、それでも木棒が当たれば痛い。
それにさっきから足にきている。
ああチクショー! もっと気合を入れるぞ。
腕前をあげて棒術がギフトになって、ビサールたちに仕返しするんだ。
だけど体が言うことをきかない。もうダメだ、倒れちゃう。
木棒を杖がわりに して 体を支えようとあがいたが 無駄だった 。
無残にも膝から土の上に崩れ落ちた。
僕を鋭く睨み構えていたヴァネッサは 木棒を下ろし、あきれた顔をしてこちらへ駆け寄る。
「タウロったらまったくしょうがないな。
そんな根性だけで乗り切ろうとしたって限度があるっていつも言ってるだろ。
こうなっちゃうともう 練習できない。
今日はここまで」
ボサボサの長い黒髪でヴァネッサは顔半分が隠れている。
だから表情がわかりにくいが隠れてない方の黒い目を見ると僕のことを真剣に思い言ってくれてるのがわかる。
いつもながらまるで男みたいな言いぐさだけど。
でも訓練がここまでなんて。
「えーそんな!」
「タウロ、お前のその熱意は買うけど無茶しちゃ逆効果になることもあるんだ。
焦りは禁物」
僕は隠していた本音を告げた。
「そんなこと言ったって もうすぐ…… 後十日ちょっとで 十四才の誕生日が来るんだ。
それだけでもうわかるでしょ。
天恵のギフトで棒術を引き当てたいんだ。
ヴァネッサが以前
棒術が中級まで達していたおかげでギフトで棒術の上級を授かったって」
そして僕は思いつく。
「あっもしかしたら上がってるかもしれないから確認してみるね」
そして能力開示と心の中で唱えた。
名前 タウロ
生年月日 統一歴二百七十三年五月十五日
取得スキル 礼儀作法 初級
文字理解 初級
短剣術 初級
歴史 初級
算術 初級
乗馬 初級
棒術 下級
うーん棒術は中級に上がってない。
「どうだ、棒術は下級のままだろ?
中級になるには早くても二年はかかるぞ。
でもタウロの年齢で下級ってだけでもたいしたものなんだが。
わかってるだろうが、一応言っておくがスキルって簡単に増えたり上がったりしないんだぞ」
そのとおりだ。ホントにそのとおりなんだけど僕は素直に認めるのがくやしい。
「あっ! 乗馬を取得したみたい」
「えっホントか凄いな、いったい全部で幾つのスキルを持ってるんだ」
「七個」
「その年で七個! それこそなかなかないことだぞ。
少なくともここ準伯爵領だとタウロの世代ではトップだろうな」
「でも棒術以外は初級だし、
それこそヴァネッサとの訓練の時以外は全部習い事が詰め込まれてるんだ」
「あの家令のクソヤロー」
ヴァネッサは僕らのご主人を悪しざまに言ってしまった。
その途端苦しそうに頭を抱える。
顔も蒼ざめている。
僕のために思わず言っちゃったんだろうけど隷属魔法の呪いが発動したんだ。
ご主人様が不利益になるような言動をとると呪いがかかる。
心の中で思うだけでも駄目なんだ。
僕も一度心の中で不満を抱いただけで激しい頭痛に見舞われた。
「ヴァネッサご主人様をそんなに思っちゃ駄目だよ。
五分ぐらいで呪いは解除されるはずだからさ」
◇ ◇ ◇
次の日、普段ならヴァネッサと棒術の訓練をしている時間、僕はビサールたち十三人に囲まれていた。
ヴァネッサは急な仕事でここにはいない。
ビサールがあざ笑う。
「なんだもう終わりかよ、弱いなあ。
ヴァネッサといつもやってるのはままごと遊びかぁ」
「あはははは」
他の十二人が声を出して笑う。
「一人相手に大人数とは卑怯だぞ」
「何言ってんだ。
なぜか
だからビサール先輩の発案でわざわざ鍛えてあげてるんだ」
ビサールの子分Aがそう言うのをビサールが手で合図して黙らせた。
「わかった。五人ぐらいにしとこう」
ビサールはその取り巻きから五人を選ぶと
相手は全員木剣を持っている。
いくら僕が棒術スキルの下級を持ってても剣術スキルの初級持ち五人に勝つのは難しい。
だけど少しでも上達するよう、こいつらには簡単には勝たせないぞ。
◇
どのくらい時間が経ったのか。
必死に動き回り抵抗したけど遂に追い込まれた。
それでもあきらめずに反撃しようと一歩踏み込んだ時につまずいた。
そこへ頭に衝撃を受け僕は意識をなくした。
◇
ぼんやり意識が戻るとあちこちを木刀かなんかで小突かれ、そして蹴られているのがわかる。
そっか俺は無事に転生出来たんだな。
成功するかどうか半信半疑だったが、父さんの指示は間違ってなかったんだ。
久しぶりに意識があるんだな。
そんなふうにしみじみと感じ入っているところへ全身に不快な痛みが度々おきる。
せっかくのところを邪魔するなよ。
そしてなんだかずぶ濡れで気持ち悪い。
倒れていた俺は起き上がるとまわりを見渡し瞬時に理解した。
ビサールの語りは命令するような口調だ。
「おう、タウロ気がついたか。
頭から流れていた血は拭いてやったからな。
もしその怪我のことを聞かれたら自分で転んだって言うんだぞ。
今日はもう勘弁してやろう」
前世、そうつまり日本皇国で七十二才まで生きた記憶を取り戻した俺はこいつらにメチャ腹立った。
いつもいつも俺を虐めやがって。
怒りにまかせて俺は叫ぶ。
「おいまだまだ俺は出来るぞ」
「えっ…… ぷぷぷっ。
今俺って言ったのかい、ボクちゃん。
無理して強がらなくていいからヴァネッサが戻ってきたら胸に飛び込んで泣きつきな」
「なんだ逃げるのか。
十三人もいて俺が怖いのか」
それを聞いてビサールの子分Bが喚く。
「お前のその怪我がこれ以上悪化して万が一にもご主人様に知られたらまずいだろ」
俺はニヤッと笑う。
「相手してくんないと
ビサールの目が鋭くなる。
「タウロの奴、頭打っておかしくなったんだな。
それでもまあいいだろう。
舐められるのは気に食わねえ。
さっきの五人でまた遊んでやれ。
ただし頭は狙うな」
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