第15話 歓迎
四人揃って駅のホームから階段を降りていく。改札の向こうにものすごい人だかりが。石田三美(いしだ みつみ)が怪訝そうな顔をする。
「何?商店会のイベントでもやっているのかな」
人の乗り降りだけは多いが、所詮、ベッドタウン。買い物は都心に出かける人が多く、駅前から続く商店街はいつもやる気がないのだが。改札を抜けて一歩踏み出した時だった。人だかりが左右に割れて通路ができる。
パーン、パカパーン。パ、パ、パ。パン、パン、パンーン!
ぬぐっ!あれは俺たちが卒業した小学校のブラスバンド隊ではないか?変わんねーなー。懐かしい!まあ、俺、金管楽器と打楽器に触らせてもらえない、おまけの鍵盤ハーモニカ担当だったけど。
バサッ。
ゴツン。
なんだ、なんか落ちてきた!いってーなー。頭に当たったじゃないか!もうほんと気をつけてよ。ん、んんんんー?
『熱烈歓迎!わが街にようこそ。宇宙人さん!』
紙吹雪と共に垂れ幕が落ちてきて俺の頭を直撃したのだ。
白いスカートに金モールの刺繍ついた白い服を着た女の子が二人、駆け寄ってくる。赤と金のたすきには『ミス』と『準ミス』の文字。頭を押さえてうつ向いている俺を、突き飛ばして月野姫(つきの ひめ)に密着する。
「月野姫さんだ。ほんとうにかわいい!」
「お人形さんみたいだ」
ラッキー、ラッキー!かわいい女の子二人に突き飛ばされるなんて!って違うだろー。ぬぐぐぐぐー。許さん。
「わっ、こっちが彼氏。カッコイイ!」
「宇宙人さんが、はるばる地球にきてまで、告白したくなる気持ち、わかるーう。イケメンだね」
何が『わかるーう』だ。違う、違うぞ!そいつは幼なじみの山下陽(やました よう)だ。おまえらニュースを見てんのか?彼氏は俺だ!!
「えっと。こちらは同級生の山下陽君、そして、こちらが同じく同級生の石田三美さん」
二人がペコリと頭を下げた。月野姫は突き飛ばされて、人混みにまぎれてしまった俺の方を指さした。
「彼が私の大好きな人。山田健太(やまだ けんた)。うふっ!」
かわいい!なんど見てもかわいい!隣りにいるミスも準ミスもただの埼玉の田舎女にしかみえん。っておい、ギャラリーども。何、期待してスマホのカメラを向けているんだ。やばい。出るに出られないじゃないかー。
「健太!」
あんな笑顔で呼ばれたら出ないわけには。俺は勇気を振り絞って前に出た。
「・・・」
なな、なんだこの沈黙。ち、が、う、だ、ろー。おい、スマホをしまうな!失礼だろ!
「・・・」
パーン、パカパーン。パ、パ、パ。パン、パン、パンーン!
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