第8話 彼女との約束
「あのう。お願いがあるのですが」
「はい。何でしょう」
「自衛隊の人に頼まれたのですが、月になにか作りました?」
「あっ。忘れていた!」
「惑星破壊装置が残ったままだった」
わ、惑星破壊装置って!かなり物騒じゃんかよ。かわいい顔して笑顔で言われると実感ないなー。
「それ、撤去できませんか?」
「ごめんなさい。一度設置すると自動防衛システムが働いて、壊せないんです。でも、大丈夫。私が発動してと願わなければ絶対に作動しませんから。宇宙人の技術は完璧なんです」
いやー。安心、安心。ってんな訳ないだろ!
「じぁあ。どんなことがあっても絶対に発動させないでください。約束してくれますか」
「健太(けんた)君が言うのなら」
月野姫(つきの ひめ)はモジモジし始める。その何か言いたそうな顔が、またかわいい。正直、何でも許してしまいたくなる。
だいたい自衛隊のお偉方もお偉方だ。俺にそんなことを頼んでも。発動させない保証なんてどうやって取ったらいいんだ。契約書にハンコとかサインとかさせればいいんだろうか。
「あのー」
「はい」
「約束の証拠として『指切り』します」
月野姫(つきの ひめ)は細くてかわいらしい小指を差し出した。
ゆっ、指切り?女の子と?ヤバイ。心臓が破裂しそうだ。なんてきれいな指なんだろう。俺は彼女の指を見つめながら、自分の指を出した。小指と小指が絡まり合う。あったかい。
「じぁあ。私、月野姫は健太君に誓います。惑星破壊装置を絶対に作動させません」
「はい」
「指切りげんまん。嘘ついたら針千本飲ーます。指切った」
小学生みたいな約束だが地球側に主導権なんてない。俺はやれるだけのことをやったのだ。地球のために。人類のために。
「うふっ。健太君と約束。なんかうれしい」
彼女の白くてタマゴみたいなつるつるの顔が赤く染まった。
「ありがとうございます」
「私からもお願いがあります」
「?」
「私たち、もう恋人同士なのですから敬語はやめませんか。それと私のことは姫って下の名前で呼び捨てにしてください」
姫って呼ぶの!なんかとっても恥ずかしい。そんな目で見詰めないでください。失神してしまうではないですか。
「ひっ。ひっ、姫」
うわっ。手汗びっしり。体が熱い。熱出てきそう。
「はい。健太」
「姫」
「健太」
「姫!」
「健太!」
「姫!!」
「健太!!」
「姫!!!」
「健太!!!」
俺たち何やっているのだろう。きっとこれ、全世界に配信されている。まあ、いいや。俺、今、最高に幸せなんだから。
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