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早く何とかしないと被害が拡大すると危険を感じたロズは素早くズボンを直し、放置されていたベルトを装着する。
「まずい…止めないと…」
「ロズさん…俺…」
瀕死のくちなしが小さな声で呟いた。
「君はゆっくりしていておくれ。あとは副館長の僕が何とかする…!」
「た、頼みます……」
恥ずかしさのせいか酒のせいかパタリと力尽きて床に倒れ込むくちなしを見届けて、雨香の後を追った。
広い宴会場を探すもなかなか姿は見えず、その間にもあちこちで「ギャー」という悲鳴が聞こえてくる。
(どこに行ったんだ…)
しばらく探し回っていると騒がしい宴会場に、一際大きな怒号が響いた。
「あ゛ぁ゛!?ふざっけんな!!!!!」
声は元居た葵葉の席の方から聞こえたようだ。嫌な予感のしたロズはすかさず葵葉の元へと向かう。
「いいじゃないですか…たった一度でせう?」
「やめろっつってんだろお!!!」
駆けつけるとそこには葵葉と雨香が縺れ合うように床に転がっていた。いや、縺れ合うと言うより葵葉が雨香に組み敷かれていると言った方が正しいか。
「クッッッソ!!!どけよおらぁっ」
先程の怒号の主は葵葉のようだ。普段の姿からは想像も出来ない声量と暴言にロズはやれやれとため息をついた。
「あぁ…さらさらの腿に柔らかくすべすべな頬…本当に食べてしまいたひ…」
「触んなクッソ!この【ピーーー】やろう!!!」
ゆっくりと頬を撫でられると葵葉の口から聞くに絶えない言葉が飛び出した。
ーーーゴツンッ
「あいた」
ロズは二人に近づき雨香の脳天めがけて拳を振り下ろす。ベロベロに酔っていた雨香は頭をぶたれた衝撃でその場に倒れ込み、葵葉を下敷きにしたままぐうぐうと寝息を立て始めた。
「おい何なんだよっ!?」
「葵葉、大丈夫かい?」
雨香をどかして手を差し伸べると「あ゛ぁ゛?」と睨み付けられる。
「ほら、僕だよ。"また"口が悪くなっているよ」
その声に気付いたのか目をパチクリさせ、ようやく我に帰ったようであった。
「…ロズ?」
小さく呟かれた名前にロズはにこりと微笑み「そうだよ」と答える。
「…ロズ…ロズ…」
何度も名前を呼ばれたかと思うと、今度は足元にまるでタコのように絡み付き泣き出した。
「こ、こわ…怖かったあぁ……」
「よ、よしよし…大丈夫、もう大丈夫だからしっかりしておくれよ……」
なんとか葵葉をひっぺがし眉間にシワを寄せる。
赤子のようにワーワーと声をあげて泣く葵葉や雨香の暴走、下げられたズボンによる精神的なダメージが重なり、ロズは今にも魂を手放してしまいそうな疲労感に襲われていた。
(あぁ…なんて一年の始まりなんだ…)
せっかくの新年会なのにと心の中でぼやくとフッと体の力が抜けた。そのままパタリと床に倒れ込む。
(…だめだ…もう寝てしまおう……)
疲労と少しのお酒の力でふわふわと心地好い感覚の中、ロズはゆっくりと眠りについたのだった。
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