6.




次の日の朝。



あの後家に帰ってからもずっと、昨日の出来事を思い返していた。



確かにあの名前も知らない女の子に、ひどいこと言われたよ!?



正直傷ついたよ?



でも、そもそもさ。



柊の彼女のフリなんかしなければ、あんな目に合っていないわけで。



昨日の出来事は全部、柊のせいなんじゃない!?



とだんだん腹が立ってきた。





いつもそう。



自分勝手に私を巻き込んどいて、私が傷ついていることが分かると全力でかばってくれる。



不器用だけど優しい柊。



もうほんと訳わかんない…。





部屋で制服に着替えていると、家のインターフォンが鳴った。



しかも超連打。



こんなことをするのは奴しかいない。



急いで階段を駆け下り、玄関の扉を開けた。



そこには昨日のことを全く悪びれる様子もない、柊が立っていた。





「ちょっと!家族もいるんだから、連打するのやめてよね!?」



「出てくるのが遅いお前が悪い」



はあ!?



まじでムカつく!



柊には常識とかないわけ!?





「で、なんなの?」



柊の調子に合わせていても、らちが明かない。



しぶしぶ用件を聞く。



「何って、迎えに来てやったんだよ」



え?





「いや、高校に入ってからは別々に登校しようって言ってたじゃん」



小学校の時は家が近いからって言うのもあって、一緒に登校していた。



そのことで私が女子から嫌がらせを受けるようになってからは、控えようって話になってたのに。





「昨日、俺の彼女のフリするって言ったじゃん」



ええ?



「あれって昨日で終わったんじゃないの?」



「勝手に終わらせんなし」



「いやいや、続行の意味が分からない」







昨日、めちゃくちゃ酷いこと言って無理やり終わらせたよね?



私、結構頑張ったよ!?



まさか、まだ他に切りたい女の子でもいるの?



正直昨日みたいなことが続くと私の身が持たないんだけど…。





「いいから行くぞ!」



柊はポカンとしている私の腕を無理やり引っ張る。



「分かった!分かったから、カバン持って来ていい?」



「早くしろよ」



もう!まじで何なの!!!!







結局強制的に柊と登校することになった。



嬉しいよ。



好きな人と一緒に登校できるんだもん。



嬉しいに決まってる。



なのに素直に喜べないのは何で?





駅のホームまで行くと、電車が出発直前で。



「おせーよ」と言いながら柊が私の手を引っ張った。



その流れで、電車の中でも繋いだままの手。





ドキドキする。





昨日といい今日といい、柊はどういうつもりで私と手を繋いでいるの?



昨日は、


「いつまで繋いでるの?」


って聞いたらそっこーで離されたから、今日はそんなことは言わない。



私は私で彼女のフリに甘んじて、柊と一緒にいることを楽しんでる。





「手汗やべー」



「…ちょ!」



柊がデリカシーのかけらもないことを言うから思わず手を離した。



前言撤回!



もう二度と手、繋がない!





「ウソだよ、真に受けんなよ」



そう言って私の逃げた手をもう一度握ってくる。



それだけで私はドキドキしちゃうわけで。





何でこんなことしてくるかな…。



いつも勘違いしそうになる。



柊は私のこと、何とも思ってないって知ってるから。



ただの彼女のフリでやってることなんだって、何度も自分に言い聞かせた。

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