第28話 友達とは
夏に近づきつつある6月の半ば、ストーキング事件からは2週間ほどだろうか。
結局の所、俺と緋奈は教室で会話をすることはなかった。というのも緋奈の周りにはいつも取り巻きがおり休み時間になれば告白をされる為に緋奈が1人になる時間がほぼない。
帰宅時も最近は女友達と一緒に帰るようになったので尚更俺と関わることはなくなった。
まぁヘタレと言われたらそれまでなのだが。
まぁそんな6月の半ばに1つのイベントがやってきた。その名も林間学校。大湊は金があるのかイベントが目白押しでその1つ林間学校である。
実際何故この季節?というとそろそろ仲のいい友達もいるだろうから他の人とも仲良くなりましょうということらしい。
「んで、夕は林間学校を休みたいと。」
「正直な話面倒と言うかあんまり人と関わりたくないので。」
「いや、夕の過去を知っているから強くは言えんがそんなに嫌なのか?」
「友達なんてもんは幻にしか過ぎませんからね。一時の夢に浸りたいとも思えませんよ。」
透華さんに休むということを伝えに来ていた。実際友達と仲良くなろうというテーマに虫唾が走る。そんなごっこ遊びは中学で懲りたというのに高校にもなって同じことをするのは精神衛生上よろしくない。
「んー。理事長からは参加させろと言われてるんだが...」
「今日までありがとうございました。これ退学届けです。」
そう言って封筒を差し出す。いつでも退学出来るように用意していたのだ。実際に母からは仕事をするなら今すぐに退学してもいいと言われてるので俺を止めるものはほとんどない。
「分かった。分かった。なら林間学校の期間は課題でも出しているから休んでくれ。」
「ありがとうございます。」
「それにしてもお前は本当に変わったな。即断即決。切り捨てるものは即座に切り捨てる。楽しいかその生き方は?」
「俺からしたら裏切られる要素を増やし傷つけられる生活をする方がいやですね。それに...」
「それに?」
「別に俺からしたら家族以外は割とどうでもいいので、そこまで友達が大事とかいうのであれば大湊から去りますよ。それにクズ共を見逃してた人達に期待は無くなりましたからね。」
そう言うと黙る透華さん。実際俺が大湊を受けたのは、透華さんに大湊では大きなことは起きないし起こさせないと言われた為に受けたのであって別に他のとこでもよかったのだ。
それに2、3年もあのクズを放置していたらしいので信用も落ちるという物だ。
八つ当たりと分かっていても少しは信用していたのだがそれを裏切れたという思いがあった。
「まぁ、一応は相談事や何かあったら言いに来ますけどその時は俺のやり方で解決させてもらいますよ。」
「あぁ...とりあえず理事長には伝えとく。」
化学準備室をでて窓から見えた空はどんよりとした曇が広がっていた。
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