光の騎士救国の騎士となる~金髪美少女を必ず守って見せます!!~

村日星成

第1話 少女との出会いと約束

 西にある国境近くの森以外の3方は海に囲われたスイン王国では、建国を記念する式典が青天の中とりおこなわれていた。


「ほら、見てごらん?あれが我々の国を守っている騎士だよ」


「わー、僕もいつか騎士になるー」


住民達は騎士を誇らしく思う者や


「いやーうまい酒がこんなに飲めて、しかもただなんて国王陛下は太っ腹だね!」


酒を楽しむ者などそれぞれが建国記念を祝いながら楽しんでいた。





スイン王国 市街地





「ふぅ、暑いなぁ」


短めの黒い髪からも汗を垂らしている男は建物の影に隠れるように休んでいた。


「おや、休んでいるのはあのアクス君じゃないか」


緑の髪の男がひょいと顔を出してきた。


「シーっ!ダンガズにバレたら怒られるだろクロウ!」


「残念ながらもうバレているがね......」


クロウの後ろから体のでかい男が赤い髪を逆立たせ鬼の形相をしていた。


「げっ!ダンガズ」


「さっさと運んで来い!場所はアルエーズ邸だぞ!」


「了解!」


アクスは沢山の機材が入った箱を両手で持ち上げながら急いで目的地へ走って行くのであった。


スイン王国内でも随一の大きさを誇るアルエーズ邸の西側にはアラクァ国とスイン王国を結ぶ森があるアルエーズ邸では国内の貴族達を招き入れ、食事会が開かれていた。


「はははっ!アルエーズ殿もアルトフ殿のような人材を手に入れるなんてお人が悪い!」


「いえいえそのような......」


小太りの男に謙遜した素振りしている初老の男こそが現在のアルエーズ家の当主であるラバル・アルエーズ。アルエーズ家は魔道具の販売で富を生んでいたがラバルはある魔道具の発明に成功したことで莫大の富を生み出すことに成功し、そのおかげもあってスイン国内では国王にも意見することのできる人物となっていた。


「しかし、かの魔道具はすごいですな、これさえあれば向かうところ敵なしでしょう。」


「えぇ、魔道具『雷撃らいげき』では剣としての機能の他に疑似的に雷の魔法を放つことが出来ていました、通常魔法として扱うと射程は1m前後、威力もせいぜいゴブリンを倒せれば良い方それが今までの世界の常識でした。しかし!効果範囲と威力を莫大なものにした魔道具『爆雷円撃ばくらいえんげき』を作ることに成功したことで世界は一変します!、これを量産できれば我が国は最強となること間違いなしなのですっ!!」


ラバルはつい演説のような話し方をしてしまったがそれを聞いていた貴族たちは満足そうにして、自分たちの国の安寧と発展が確かなものであると確信していた。





そんな食事会が開かれているアルエーズ邸の2階では長い金髪の少女が窓から町を見ていた。


「お父様......」


ぼそっとつぶやいた言葉をメイドは聞き漏らさなかったのか、「どうかしましたか?」とその少女に問いかけた。


「なんでもないです......」


メイドは不思議そうにしながらも調理場に向かっていった。


「......どうすればいいの......」


少女は小さな小さな声でそうつぶやいた。








アクスは機材を届けにアルエーズ邸に到着していたものの、現在はパーティ中ということもあり門の前で待ち続けていた。


「......おいおい一国の騎士を配達員扱いしておいて放置かよ」


アクスは暑い中かれこれ1時間も放置され、我慢の限界であった。しかしそれは暑い中での放置だけが怒りの理由ではない。元々アルエーズ家は魔道具の研究と開発は騎士のためという名分で騎士たちに配当されるはずであった収入の一部を研究に扱うなど評判が悪かった。そして今回の魔道具の開発の成功によって騎士への扱いはより悪くなっていき現在は配達員のような扱いになっているのであった。


「(はぁ......もう門の前に機材置いといていいか?)」


そう思っていた矢先に門が開く音がした。


「あの......もしかしてお父様の荷物だったりしますか?」


「ッ!」


金髪のロングヘア―に青い瞳。ラバル・アルエーズの一人娘のサリア・アルエーズであった。ラバルとは違いサリアは内向的で見たことがない者も多い。アクスもその一人であった。そしてサリアと目が合った瞬間恋に落ちてしまった。これもまたサリアを見たものなら通る道であった。


「あの......どうかなされましたか?固まって」


「あっ、すみません、これはラバル・アルエーズ殿の機材です。魔道具開発に使うとのことで頼まれたのです。」


「まぁ......もしかしてお父様は騎士様にいつも荷物運びを頼んでいるのですか?」


「えぇ、......まぁ」


アクスは少し反応に困ってしまったが、否定することはできなかった。


「そうですか......お父様のお荷物運びありがとうございます。えぇとお名前は?」


「アクスです。アクス・バーズです。」








「アクスさんですか。今夜は町の大広場で宴会が開かれるのですが、そこでは貴族と平民とでは座る場所と出されるお食事が少し違います。今回待たせてしまったお詫びにご迷惑でなければアクスさんを貴族側の方にご招待したいのですが......」


「(あぁどうしようか)」


アクスは考えた、スイン王国では貴族と平民は不仲ということではないため貴族側にアクスがいても目立つだけで問題はないだろう。ただその時にアクスがスイン城の見張り番であったために誰かに変わりを探さなくてはいけなくなるために少し躊躇していた。しかし


「急ですよね、今日のような祭日でも騎士さんはお忙しいのは知っています。やっぱりお詫びは別のに――」


「いえ!行きます行かせてください!」


アクスは仲間の誰かを見張り番に肩代わりさせることに決めた。





アクスはサリアと待ち合わせする場所を約束して帰っていった。





 酒場 昼間





「たのむよっ!我が父、キリズ・バーズの名に懸けて!」


アクスはクロウとダンガズに頼み込んでいた。


「いやぁどうしたものかね?」


「なぁ?騎士が城の護衛を人に任せて自分は女と一緒ってなぁ?」


両者は椅子に座ったままクロウはダンガズに目をやり、ダンガズは腕を組んでクロウに目をやった。


「まぁね。アクス君の気持ちはよくわかるよ、サリア嬢は美しくかわいらしいし、自分が同じ状況だったらアクス君と同じことしただろうね絶対」


「だったら!」


「だけどそれは自分だったらの話だからねぇ、それにこんなこと急に言われても実際困るよ、今夜は彼女とデートあるし」


クロウは自分は無理だというとダンガズが口を開く。


「俺としてはアクスを応援してやりてえがな」


「それって!」


アクスに笑みがこぼれる


「ああだけどこれは3人で一番の年長者からの忠告なサリア嬢に期待しない方がいいぞ」


「「えっ?」」


アクスそれにクロウも同様に驚いてダンガズを見た。


「なんだアクスはともかくクロウも知らねぇのか?サリア嬢には婚約者がいるっていう話だ、一時期話題になってただろ」


その話を聞いたアクスはショックを感じたのと同時にあんな綺麗な子には婚約者がいて当然という思いもあった。


「......そうか」


「あーアクス、だからそういう男女の関係になれねぇから貴族のところで上手い物食ってきな、見張り番は俺が変わってやるよ、何も予定ないしな」


「アクス君、元気だしなダンガズ君が言った通り荷物運びの報酬を貰えると思ってさ。あっ明日今夜の僕のデートでの出来事を君に特別に教えてあげるよ」


「みんな、ありがとう」


アクスはしょぼくれながらも余計な期待をせず食事を楽しむことにしようと決心するのであった。


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