食人鬼《Unknown beast》

teru

Case1

 その日警察に一本の通報が入った。

 現場に向かった刑事達が目撃した物は、バラバラになった人の残骸であった。

「被害者の身元は不明、第一発見者は近所に住む老人だそうです。目撃者曰く熊のような巨大な何かが人を襲っていたとのこと」

「うぇぇ……。それにしても酷い……。何をどうしたらこうなるんだ」

「おい、お前。えーっと……名前出てこねえや。まあいい、この手の事件初めてか新入り」

「この前挨拶したじゃないですか藤堂先輩、田淵ですよ田淵。この手のって、こんな酷い事件よくあるんですか?」

「まあな。大抵の場合下手人は捕まらないし報道規制も入るから世間に知られることはあまりないが……お前もこの世界に足を踏み入れたんならそろそろ知っておくべきだろう」


 現場検証が進む中、先輩の刑事は徐に語り始めた。

「お前、人を喰らう化け物の都市伝説知ってるか?」

「ああ、それなら知ってますよ。親しい人に化けて油断したところを襲う化け物の話でしたっけ。でもあれってあくまで噂話ですよね」

「自由に姿を変え人を襲う化け物は実在する」

「そんな、信じられない……」

「やつらは人間を好んで喰う。なんでか分かるか?」

「さ、さぁ……」

「逆にもしお前が捕食者だったらどんな獲物を狙う?」

「そりゃ捕まえやすくて食べごたえがありそうな……あっ!」

「そういうことだ。野生の獣に比べて人間は警戒心も薄いし動きも遅い、そこらの野良猫や野鳥捕まえて食べようにもやつらを捕まえるのは難しい。おまけに体も小さいから仮に捕まえたところで食料としての価値はたかが知れてる。人間なんて放っといても勝手に増えるし肥える、放牧されてる家畜となんら変わらん」

「その化け物って名前とかあるんですか?」

「海外じゃ未知の獣って意味のUnknown beastなんて呼ばれているらしい」

「日本ではなんて呼ばれてるんです?」

「……食人鬼だよ」

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