第6話 作曲、チラシ制作に挑戦

 数日後、奈緒達は軽音楽部にいた。軽音楽部には明日香が掻き集めた作曲能力のある中高生女子たちが30人ほどいた。ピアノやギター、シンセサイザー、ドラム、ベースなども自前のものを持ちこんでおり、1通りの作曲陣体制が整っていた。


 明日香「じゃあ、この歌詞に曲をつけていく訳だけどどんなジャンルがいいかしら?私はオーケストラでいくわ」

 奈緒「私はロックかメタル」

 沙也香「パンク一筋で」

 ささもっちゃん「昭和アイドル歌謡曲」

 友子「断然、EDM系」

 まゆみ「クラシック系で」


 作曲陣の一人、高校3年生の美登里は個性的な6人だと思っていた。それぞれにバラバラの曲を提供出来るだろうと自信を覗かせていた。


 美登里「それでは作曲陣営はそれぞれの得意分野で曲を作ってセッションしましょう」

 明日香「ありがとうございます。美登里先輩。作詞、ボーカルの方はお任せください」

 美登里「明日香さん頑張ってね。個性的でいいわね」


 そう言うと明日香はメンバーを衣装担当の裁縫クラブや振付担当のダンス愛好会、ポスター撮り担当の写真部などに赴き、挨拶回りは終わった。


 奈緒「ああ疲れた。皆お疲れっくす」

 全員「お疲れっくす」

 明日香「今日は帰るわよ」

 沙也香「そうだな。帰るか」


 その日は色んな事が動き始めたのだった。そして、また数日後、美登里からの一報を受けた明日香達は軽音楽室で初のレコーディングとなった。


 明日香「じゃあ録るわよ。はいっ!」

 奈緒「ラブショベルカー♪あなたの鉱脈掘り尽くすまで~♪出てこいインゴット♪」

 沙也香「録ったぜ」

 三人「私達もとり終わりました」

 奈緒「うむ。中々の出来でござりまするな」

 明日香「これで一通り録れたわね。私も録れたし」

 レコーディングは終了しミックスダウン作業も終え、いよいよデモ音源が出来上がった。

 明日香「いきなりアルバム作っちゃうけどタイトルどうする?」

 ささもっちゃん「桃色無敵艦隊で良いんじゃないかなぁ」

 明日香「駄目よ!しょうがないタイトルは後で!後はチラシを作って配りにいくわよ」


 後日、チラシが出来上がってきた。こういった内容である。


 ф


 我々は桃色絨毯爆撃集団、ピンキーダイナマイトです。明日香

 貴方の心にC4爆弾を届けますよ。奈緒

 路上ライブをするのでみにきてね。沙也香

 セトリ

 1、ピンキーダイナマイトのテーマ

 2、極東大旋風~百花繚乱絵巻~

 3、アナーキーサヤイズム

 4、だるまさんがふっとんだ

 5、ミルキープリンセス

 6、ささもっちゃん漁解禁宣言~出来るもんなら妹にしてご覧よ~

 7、女帝明日香狂奏曲~民は私の為に~

 8、ラブショベルカー

 9、桃色絨毯爆撃機ピンキーダイナマイト

 10、あなたとの距離はゼロ

 こんな感じですよはわわわぁ~。ささもっちゃん

 まゆみもお待ちしてます。まゆみ

 友子も待ってるよ。友子


 ф


 こうしてチラシは完成したのだった。奈緒達はチラシ完成に喜んでいたが、奈緒以外のメンバーの表情はは硬かった。


 奈緒「どったの皆?表情が優れないみたいだけど」

 ささもっちゃん「奈緒ちゃん先輩。いや奈緒先輩。私、数日前の経験が尾を引いてるんです」

 明日香「そうね。あなたもなの?ささもっちゃん」

 沙也香「そうだね。私も悔しかったな」

 奈緒「どうした、コンドロイチン配合は関節痛・腰痛に効くよ」

 まゆみ「奈緒先輩。はぐらかさないで下さい」

 友子「バカにしてるんじゃないですか?私たちが相手にされない事と知ってて」

 奈緒「相手にされないって」

 明日香「数日前の事よ。皆でそれぞれに中高等部の廊下を歩いてみたでしょ。あの時奈緒さんだけの評価しか周りから聞けなかったのよ。それで皆悔しがってるの」

 友子「私達はホントに必要ですか?分からなくなって来たんですよ」

 ささもっちゃん「私達この件から降りた方が良いんじゃ。奈緒先輩が輝く為の試金石になるのは嫌です。はわわっ、御免なさい、奈緒先輩」


 メンバーは数日前の大惨敗の事や神風スタイル流行の話も知っていた。自分たちの必要性について深く考える必要があった。奈緒は早速始まったピンキーダイナマイトの危機に1人立ち向かう事となったのだ。


 奈緒「皆は自分に足りないものって分かる?」

 明日香「お金ね。私に見合ったお金がないわね」

 沙也香「明日香らしいね。私は女性らしさかな。お母さんみたいな母性が欲しいな」

 ささもっちゃん「いぶし銀な横顔」

 まゆみ「行動力」

 友子「友子全部揃ってるよ」

 奈緒「貴方達に足りないものそれは孤独と向き合い愛する心」

 明日香「孤独か。あっ、そうよね。奈緒さんは孤独な時間多いわよね」

 沙也香「孤独は嫌だな。寂しくて私は無理」

 ささもっちゃん「孤独。渋い、多分」

 まゆみ「私は余り考えたことがないですね」

 友子「ぼっちは辛いよ。奈緒先輩」

 奈緒「でもね、辛い孤独と向き合い孤独すらも愛せる様になった時、どんな人であっても仲良くしてもらえる、必要としてもらえる暖かさ、温もりに触れたらもう堪らなく人の為に何かしてあげたくて、あげたくてってなっちゃうものなのよ。そこに色んな悪い思惑があったとしてもね。通じないのよ悪意ですら嬉しいから。無関心になられるのが一番人は辛いのよ」

 一同「はぁ~」


 奈緒は今まで生きてきた思いの丈を喋った。メンバーは口を開けて聞いているぐらい聞き惚れていた。それは、今までの自分の人生経験値では理解を超えた話であった。メンバーが口を開く。


 明日香「わかんないわよ。でも人を一番愛せた人がアイドルとして大成するという事は分かったわ。ファンの人とも接するでしょうし。悪意すら嬉しい境地にはまだ立てないけど、奈緒さんそんな考えするのね、只の馬鹿かと思ったけど」

 奈緒「消火器を持ってこい。ぶん殴ってやる」

 沙也香「私、納得した。今はすべてを理解するのは難しくて孤独も怖いけど、独りになる時間も必要なんだね。少しは一人で考えようかな」

 ささもちゃん「ぷぅ~。分かりました。全部分かりました。後は独りで考えてみようっと、嘘だけど」

 友子「あたしは感激しました。奈緒先輩、あなたは選挙に出るべきです」

 まゆみ「……私、レベル低すぎるんだな」

 奈緒「そういうことじゃないよ、まゆみちゃん。貴方達は素晴らしい才能持ってる。後は人をもっと愛するべきなだけよ」

 まゆみ「はい、奈緒先輩。頑張ります」

 友子「友子も!」

 ささもちゃん「私もでぇ~す」

 沙也香「分かったよ。負けないぜ」

 明日香「今日は一本取られましたが全然負けた気がしないわね。でも、私の言いだした事ですから最後まで責任を持つわよ」


 こうして、ピンキーダイナマイトの内部分裂は回避された。そして、メンバーの想いは初の路上ライブ大成功へと向かう事となる。


 一方その頃、他校の男子校ではピンキーダイナマイト結成の話が至る所で噂されていた。蘇我達は校舎を練り歩き、ファンになれと強引なやり方で強制していた。


 蘇我「おい、お前ちょっと来い!」

 高等部男子A「はい、なんでしょうか?」

 蘇我「お前アイドル好きそうな顔しているな。ピンキーダイナマイトの話は聞いたか?」

 高等部男子A「はい。だけど僕はヘロプロのアイドルが好きなんで、地元アイドル興味ないんで」

 蘇我「ああ?この写真見てもそう言えるのかよ?」

 高等部男子A「こっ、この写真は。一体誰ですこの可愛い人は?」

 蘇我「奈緒ちゃん知らないなんてお前モグリかってんだよ」

 高等部男子A「凄いヘロプロのアイドルより可愛い!今すぐヘロプロのファンクラブ辞めてきますね」

 蘇我「おい、何処行くんだよお前」


 ピンキーダイナマイトのチラシをゲットしてきた男子高校生達は人気ランキングを付け始めた。


 男子高校生B「俺、断然奈緒ちゃんだな。恋のC4爆弾お見舞いされてぇ!」

 男子高校生c「奈緒ちゃんは当たり前だから。奈緒ちゃん以外でだろ普通」

 男子高校生D「僕、ささもっちゃん。アイドル性が高いし、天然系妹って感じがする」

 男子高校生E「俺は意外とまゆみちゃん。Eカップあるんだぜ。うひょ~、たまんねぇ」

 男子高校生B「俺、じゃあ女帝明日香。意外とメイクすれば映える顔してんじゃんと思って」


 アンケートを取った結果、1位、奈緒。2位、ささもっちゃん。3位、まゆみ。4位、明日香。5位友子。6位沙也香。という結果になった。蘇我達も結果を知る事となった。


 蘇我「やはり奈緒ちゃんが1位になったか。嬉しいが俺が1番最初に目を付けていたんだからな。俺がファン1号だ」

 江口「そうですが、自分が最初蘇我さんに報告したんですよ。進学校にめっちゃかわいい子がいるって」

 朝妻「違ぇよ。奈緒ちゃんに気付いたの、俺だし。最初は俺が告白しようとしてたんだぜ」

 蘇我「なにぃ~。告白だとぉ。手下のくせに生意気な。バキッ」

 井出「そりゃ~ヤラれるよ。蘇我さんを如何に出し抜くかはもっと頭使わなきゃな」

 蘇我「もういい、お前ら。奈緒ちゃんに関しては誰も譲る気が無いという事だな」

 江口「当たり前ですよ。蘇我さんを倒してでも俺は奈緒ちゃん推しで行きますからね」

 朝妻「俺もだ」

 井出「俺は蘇我さんに着いて行きたいです。ある程度までは」

 蘇我「勝手にしろぉ、馬鹿共がぁ」


 蘇我達は仲間割れをしてしまったのだった。後日、タイマンバトルが行われ蘇我が勝つと無理やり担当役割を決められた。蘇我以外の3人は内心怒りの炎で煮えたぎっていたが、仕方なく従う事にしたのだった。









 

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