ピンキーダイナマイト
いなかぼっこ
第1話 村上奈緒の日常
全ての空間に情報は存在する。それは目に見えるものばかりではないが、確かに存在するのだ。例えば、ウイルスなどの病原体も複雑な情報で構成されている。目には見えないところにも情報はあるのだ。そしてその中で、地球規模で考えてまず間違いなく大きい情報密度の存在する場所。それは人間である。子供からお年寄りまで密度の濃さは個人差はあるだろうが、最も地球でイニシアチブを持ち影響を与えているのは人間だ。例えば、過去の偉人や現在の芸能人なども影響力が高い人は情報密度が濃いと言えるだろう。そして大きい情報密度は小さい情報密度を引き付けてしまうの理に適っていると言えよう。世紀末まではインターネットが普及しておらず情報密度に個人差があった人間だが、現在は均一化していると思われるし、便利な反面、人間の情報密度保持能力の進化はインターネット普及により頭打ちになってしまったのではないだろうか。今の時代は世紀末の漆黒よりは薄いが黒であり、また時代が明確に存在しない無色透明であるとも言える。そして、圧倒的な驚きの白の情報を持ち合わせた人間をいつの時代も人は求める。今の人達は言う。昔の時代は良かったと。1つ1つのことに一喜一憂出来た時代、例えばあの世紀末にあったハルマゲドン信仰は今やお笑い草だが、世界を恐怖に落としいれる出来事であった。ちょうど世紀末は世界各地が陰鬱なムードに満ち溢れ明るい世の中を忘れていく程酷かった。そんな世の中だからこそ、人々は負の情報密度多く持ち、世界は負の情報密度が蔓延したし、今現在もTV・ネット上には負の情報が蔓延している。少年少女達の成長期は成長につれ爆発的に情報能力は高まると思われるが、ちょうどその時期にあまりにも辛い現実を受け強烈なショックを心に受けてしまった少女がいた。実はあの予言者の大予言はもっと違った解釈があったのかもしれない。アリス(発展途上系超大型情報密度保有女子)は実は存在した。ど田舎の高知県にひっそりとした形で生きていた。
村上奈緒はとある田舎、高知県は我美町に住むかなり変わった私立女子高の3年生の女の子。変わったこと遊びが好きで、髪はセミロングヘアーで童顔で巨乳Hカップの個性的な可愛く人を引き付ける女子である。そんな奈緒は今現在、朝刊配達のアルバイトやオラジン弁当でのアルバイトさらに工事現場で働いている。なぜなら彼女には両親がいない。父母ともに数年前に亡くなっているのだ。なぜか彼女は児童施設に入ることを拒否し、一人で生きていく道を選んだ。一人で生きていくのは過酷だが楽しいこともある。そんな奈緒のポリシーは人がやらない事をやっていくこと。着眼点が違うことを見つけるのが楽しい、好奇心旺盛な人格である。今は4月上旬。春の陽気だからというわけではないが、今日も朝から変わった遊びをしていた。
奈緒「今日はこんな一言にしようかな?」
そういうと奈緒はおもむろにペンを取出し自身のお腹に本日の一言を書き始めた。
奈緒「えっと、‘じゃんけんに第4勢力現る”っと」
これが、得意の固定概念外し。夢は最高女芸人である奈緒は面白いことを自分から探し始める稀有な存在の女子だ。今日も学校へ行く前に新聞配達のアルバイトにやって来た。
奈緒「おはようございます」
斉藤「おはよう奈緒ちゃん。おばちゃんの若いときに似てて今日も可愛いねぇ」
奈緒「そうですねぇ。うふふふふふふふふ。佐田さん目つぶし」
佐田「おはよう。奈緒ちゃんそんなにおじさんをからかわないでよ。おじさんは奈緒ちゃんが宇宙一可愛いと思うけど。斉藤さん冗談キツイなぁ」
斉藤「佐田さんには女の良さが分かってないのよ。それより奈緒ちゃんいくつもバイト掛け持ちしてるけど、大丈夫。ちゃんと寝てるかい?」
奈緒「ちゃんと寝てますよ。zzz」
佐々木「いま寝ちゃ駄目だよ。奈緒ちゃん」
奈緒「分かってまんがな、兄い。ちょっくら行ってこもぅす!」
佐々木「ホント。可愛い子だなぁ」
佐田「佐々木、お前も早くいって来い」
奈緒は色々な現場で人に愛される。仕事に人一倍真面目なのもさておき、圧倒的なルックス、体つきの良さに加え、寂しさを感じる人に対してスポットライトを当ててくれる優しさを持ち合わせている。超絶的に明るい性格の裏には超絶的に大変な苦労があるのだろうと同じ職場で働く全員が分かっていた。
奈緒「朝刊でおま~す」
吉田「おはよう。奈緒ちゃん。今日も朝から偉いねぇ。おばあちゃんは感心する。はい、コーヒー」
奈緒「ありがと。吉田のおばあちゃん。いただきます。グビグビ。ごちそうさま。健康体操頑張ってね。今日の一言は、じゃんけんに第4勢力現る。ホレ」
吉田「また、お腹に文字書いて。あらら、じゃんけんに4つめがあるのかね。そんなことあったらおもしろいねぇ。私はこれを見るのがわたしゃ好きでねぇ。ありがとう奈緒ちゃん。奈緒ちゃんはおばあちゃんの生きがいよ」
奈緒「うん。明日もくるねぇ。おばあちゃん。今日も元気でぇ!!」
林「奈緒ちゃん、おはよう。今日もきれいだよ」
奈緒「そうかな?林さんがが嫌いになった。フン」
林「なんでぇ?おじさん奈緒ちゃんに嫌われたら生きていけないよぉ」
奈緒「そんなにヘビィに落ち込まないで、嘘だよ。ほらお腹見せてあげるから」
林「うぉぉぉ!!、じゃんけんに第4勢力現る。なるほど、きょうは新説を唱えてるのか~」
奈緒「そうだよ。だから落ち込まないで、元気出して」
林「うんうんうん。元気出たよ。会社の部下にも奈緒ちゃんの事自慢しよ」
奈緒「行ってきま~す」
朝刊を配り終わった奈緒は学校へ猛ダッシュするのだ。奈緒の家から女子高までは23キロ。毎日ハーフマラソンと同じ距離を走っているのだ。スカートだと風で捲れるので体操服に競技用ブルマを着用して走っていた。最初は中学一年生の頃。電車賃を浮かせる目的で始めた早朝ハーフマラソン企画が現在まで続いている。体調が保てるのか最初は心配だったが、何故か走れてしまうし、速度も年々速くなっていくし、今では疲れが完全に無くなった。それに秘密だが、性的な喜びも感じるからというのが理由として挙げられる。マラソンを走ると当初は辛いし息苦しかったが、それが性的な気持ちよさへと変わっていくのは何故なのかと自分なりに彼女が分析した結果、足から伝わる衝撃が全身に伝わりある一定値蓄積していき限界を超える事で性的興奮し、フィジカルもメンタルも感動を覚えるほどの喜びを感じることが出来たのだ。マラソンに限らず他にも性的興奮を得られる術はあったが、それを奈緒は‘ヘドネー”と名付けた。自分以外の女性で、そういった事で性的興奮を得られるとはTV、雑誌、WEBなどでも見かけなかった。現在では奈緒はハーフマラソン23キロでは物足りないと感じてしまうほどだった。それ故、女子高に着くと当初は性的興奮が抑えられなくなりそうだった。その蓄積してしまった驚異的エネルギー言い換えれば情熱を性的なことではなく、勉学やスポーツに応用する術を中学の頃から徐々に学んでいったのだった。それに奈緒は従来の方法で性的興奮を得るやり方は禁忌に値すると感覚ながら心身で分かっていた。代わりに多数のヘドネーを行う事で喜びを感じていた。
奈緒「学校到着っと。今日は何分でこれたかなぁ。だいたい30分かぁ。よし新記録樹立!」
マラソンや中学時代に習っていた空手・合気道によっていつのまにか右利きから両利きになっていた。奈緒はマラソンや短距離走なら既に世界記録を樹立出来る実力があることに内心気づいていた。ただ余りそういう事に関心を持たずにいたし、変わった子に興味をもっていた。
そんな時だった。奈緒が学校の校門前に着くと人がモーゼの樹海のように分かれ始めた。
奈緒「奴が来たのか」
その中央をモデル並みの歩き方で現れたのは女帝明日香という女子。否、女史というべきであろうか。 女帝明日香は何の因果か高校3年生で同じクラスになった。おもむろに女帝が奈緒に話しかけてきた。
明日香「おはようございます奈緒さん」
奈緒「......」
明日香「何無視してるの馬鹿ねぇあんたは」
奈緒「明日香はしかし生徒会長として可愛げがないねえ。皆に怖がられてるじゃん。ギャグでもやったらいいのに」
明日香「黙りなさい。空海ばりに後光が差してるのよ。それで迂闊に近寄れないのよ」
奈緒「ぁ~言えばこう言う。明日香のゴマメチックが~」
明日香「どういう意味か分かんないわよ」
午前中は数学と現国と地理の授業があった。どの授業も性的興奮を抑え込むと脳が活性化することが分かってしまうのだ。固定概念外しをまた行ってしまう。たとえば数学の授業だと、X=6 Y=12 Z=36という表記に、
奈緒「Xってなんか女性っぽいなぁ。Yは男性かぁ。だったらZはおなべかニューハーフか。えっと、女性6人に男性12人、ニューハーフ・おなべが36人。これってどういう状況?ニューハーフ・おなべ合同お見合い&新規さん入会キャンペーン豪華クルージングの旅かな」
はたまた、地理の時間では、世界地図を見ながら、
奈緒「ニュージーランドが寂しそう。日本も同サイズだからお兄ちゃんだね。日本はニュージーランドの隣で一緒にオアフ島でキャッチボールしていたかもね」
と言ってしまう奈緒なのだった。
そして、お昼休みを迎えた奈緒はクラスメイトと昼食タイムになった。
麻美「今日のお昼は私、鮭弁だよ。あたし嫌いだな」
舞子「そうなんだ、わたしはハンバーグ。良かった。奈緒ちゃんは」
奈緒「良くぞ聞いてくれました。ご飯よりまずこれを見よ。ジャ~ン」
真希「なになに、、‘じゃんけんに第4勢力現る”って書いてる。今日もまた変なこと書いてるねぇ!それで奈緒ちゃんお弁当は?」
奈緒「私は日本国大好きバングラディシュ弁当だよ」
明日香「あらあら普通ねぇ。奈緒さん。私はヨーロッパ弁当よ。捻りが足りないわねぇ」
奈緒「ムカつく。愛国心はないんかぇ」
クラスメイト達「ついていけないし…」
クラスメイト達「また始まったお弁当バトルだよ」
沙也香「うるさいよ皆。明日香静かにして。ごめんね、奈緒ちゃん、明日香がうるさくって。って何飲んでるの?」
奈緒「プロテイン四川風味噌味」
全員「そんなの売ってないし。バシッ」
こうして今日のお昼ご飯は終わりを告げた。昼食もこんな感じで奈緒に影響を受けた者が少なからずいたのだった。昼食を終え、昼からは体育の時間。学校では奈緒は体育の時間は目立たない為にわざと手を抜いていた。本日の授業内容はバレーボールだ。
奈緒「よし、締まって行こう!!!」
明日香「仕切らないでほしいわ、奈緒さん」
沙也香「向こうからボール来たよ」
途中経過のポイントは24対0。あと一点で完封試合である。
クラスメイトA「レシーブ」
クラスメイトB「トス。はい奈緒ちゃん」
奈緒「行きま~す。ハイブリッドビックウェーブアソシエーション。バシッ!」
クラスメイトc「凄ーい。また決まったね」
明日香「私に回しなさいよ私に、分かった」
クラスメイトA「だって明日香さんスパイク下手だもん」
明日香「誰に口きいてるのよあんたは」
沙也香「明日香。その辺にしてよ。あんたはもう」
クラスメイトD「相手チーム強すぎ。奈緒ちゃん入れるの狡いよ」
クラスメイトE「そうだよね、歯が立たないよ」
審判「ピピィー」
奈緒達は25対0で完封勝利をするのだった。奈緒はつい熱が入ってしまうと本気になってしまう所があった。この日はスパイクを20回決めてしまって目立ってしまったので反省する奈緒なのだった。放課後下校する時間になったので急いで奈緒は次のバイト先に赴くことにした。夕方は市内にあるオラジン弁当屋で働いていた。
奈緒「遅れてすいませ~ん」
和田さん「いいよいいよ。学校帰りだもんね。今日は大丈夫かい?」
奈緒「張り切ってまいります」
緒方さん「あんまり張り切りすぎないでね。手切った所大丈夫かい?怪我には気を付けて」
奈緒「切った所はもう治りました。ホレホレ」
奈緒は弁当屋で働いているが小さな怪我をすることがあった。しかし、何故かその日のうちに切り傷や火傷などの怪我が治ってしまうのだ。アリスは自然治癒力も異常なほど高いという事であろう。奈緒は自身の事をいつの日かアリスと呼び、人とは違う体の特徴や自分に起きうる不思議な出来事に、自分はアリスだからと無理やり納得していたのだった。
奈緒「はい、有難う御座います。チキン南蛮弁当ですね。どうでしょう?ステーキ弁当も如何ですか?」
客A「そんなに食えないな。んんんっ。でも、よし分かった。ステーキ弁当買っちゃおう」
奈緒「毎度有難う御座います。1100円になります」
客B「はいはい次々、奈緒ちゃん俺さステーキ弁当10個買うから今度デートしようよ。ね?、ね?、ね?」
客c「おいおっさん、何奈緒ちゃん口説いてんだよ。バイト中に迷惑だろうが」
客B「ひぃぃ!すいません出直してきます」
客c「まったく近頃のおっさんときたら。とこらで奈緒ちゃん、うちの集会こない?俺の子分たちに奈緒ちゃん紹介したいし」
奈緒「ふぅ、わかった。表へでなよ」
客c「ふぇ?奈緒ちゃん、俺総長だぜ。ケンカ売りに来たわけじゃないんだぜ」
奈緒「いいから出ろよな」
奈緒とヤンキーの出で立ちをした総長と名乗る蘇我という男は駐車場へ出た。他にも10人ぐらいのヤンキーがバイクに跨っていた。
井出「蘇我さんどうでした。うまくいきました?デートの件」
蘇我「それ所じゃねえ。なんか怒らせちまったみたいでよ」
江口「それなら、ちょっと怖い所を見せ付けりゃイチコロですよ」
奈緒「さっきの奴居るか?」
蘇我「奈緒ちゃん俺、ボクシング習ってんだよね。シュッシュッ」
奈緒「へぇ、シャドウ出来てんじゃん」
蘇我「奈緒ちゃんボクシング知ってんだ?だったら、このシャドウが如何に凄いか分かるだろう?」
奈緒「パンチ遅すぎない?」
江口「おい、奈緒ちゃんいくら女性でも手が出るぞ」
蘇我「止めろ、江口。奈緒ちゃんこれはなそんじょそこらのパンチではなく」
蘇我が話をし始めたその時、話を遮るかのようにパンッパンッと乾いた破裂音が聞こえた。
井出「なんだ今の音」
江口「何かパンッパンッって聞こえたけど」
奈緒「それはこれだよ。パンッパンッ」
朝妻「なんだそれ。一瞬、奈緒ちゃんの手が消えたぞ」
蘇我「もっ、もう一回見せてくれ」
11人の男達は奈緒のパンチキックに驚愕した。まったく見えないほどのスピードで放たれるパンチキックは男たちの心をへし折るだけに留まらず、圧倒的に魅了するものだった。
七海「雷弾」
井出「あっ、七海さん、チィース。雷弾ってなんですか?」
蘇我「俺も分かんねぇ。七海、教えてくれ」
一同「教えてください七海さん」
七海「しょうがないわねぇ、教えてあげてもいいわよ」
奈緒「あっ、七海ちゃんだ。チィース」
七海「コイツらの挨拶真似ないで奈緒ちゃん。アホになるわよ」
江口「酷いっすよ、七海さ~ん」
七海「汚い手で触らないで江口。これは雷弾といって奈緒ちゃんが正心空手に居た頃に編み出した技なのよ」
一同「すげぇ、七海さん。何でも知ってるんだぁ」
七海「それにしてさ、蘇我アンタ奈緒ちゃんにちょっかい掛けてたんじゃないでしょうね?」
蘇我「違うよバカ。俺がそんなことするはずないだろうが、俺はお前だけが……」
七海「アホ。違うわ。私の奈緒ちゃんに簡単に近づきすぎだって言ってんのよ。簡単に口利いてんじゃないわよ」
蘇我「七海。奈緒ちゃん御免よ。これからは気を付けます」
一同「気を付けます、ビシィ」
七海「奈緒ちゃん御免ね。うちの現役馬鹿総長が」
奈緒「お熱くていいねぇ。私にも少し分けて欲し……」
七海「駄目。奈緒ちゃんは私が付いてるしもっと自分を大事にしなきゃね。後、蘇我はうちの総長だよ、ただの知り合い。勘違いしないでね」
奈緒「(やれやれ、私、恋は出来そうにないな。)ハイハイ、じゃ、帰ってね」
オラジン弁当に戻った奈緒は、受付を終わらし、中の調理を担当し始めた。奈緒は趣味で料理もするので、調理するのが好きだった。ただ圧倒的に秀でたルックスを買われていたので受付を担当することが多かった。この日は5時から8時までのシフトだった。8時になったので奈緒は次のバイト先に赴くことにした。
奈緒「お疲れサマンサ」
緒方さん「はい、お疲れ奈緒ちゃん。今日のあまり持っていくかい?」
奈緒「貰ってもよろしいですか?」
和田さん「いいよいいよ。こんな事ぐらいしか出来ないけどオバちゃん達は奈緒ちゃん応援しているからね」
奈緒「ありがとう。嬉しっクス」
二人「かわいいわねぇ、ホントに」
奈緒はオラジン弁当屋に別れを告げると、足早に工事現場にやって来た。奈緒は笹井田建設という会社で働いていた。ここでは当初、事務見習いを担当させて貰っていたが、本人のたっての希望で現場担当にさせて貰った。今日は道路の舗装工事だ。奈緒は慣れた手つきでドリルをもちアスファルトに穴を開け始めた。
久保さん「奈緒ちゃん今日も精が出るね」
奈緒「そうですね。久保さんお腰は大丈夫ですか?それ、ドドドドドドドドド」
久保さん「大丈夫。大丈夫。まかせちょき。そこいらの若い者にはまだ負けん」
相田「監督。とか言って奈緒ちゃんに心配してもらおうとしてるんじゃないんすか?」
大森「違いねぇーや。狡いっすよ監督」
奈緒「そんな事ないですよねぇ~?監督ぅ」
久保「まぁ、ちょっとはな。カミさんと喧嘩したんで慰めて貰おうかと」
土方「そんなのキャバクラでしてくださいよ。話なら俺だって聞いてもらいたいですよ。奈緒ちゃん1時間1万でどう?」
奈緒「私を拘束するのなら1時間2000万は掛かるな」
一同「髙すぎだよ。バシィ!」
奈緒「嘘だよ。話だったら何でも聞くよ」
久保「ほーら、お前ら散った散った。奈緒ちゃんが作業できねぇじゃないか。奈緒ちゃんじゃ後で」
部下達「監督の動き怪しい」
工事現場では夜の9時から深夜12時まで働いている。いつ寝ているのかと読者諸兄は思われるだろうが、アリスである奈緒は睡眠時間が2~3時間と異様に短かった。欲求不満でまともに寝れない日もザラにあった。奈緒が工事現場を選んだ理由はお金もあるが、それよりも体に溜り切った性的欲求をぶつける場所が欲しかったからだ。奈緒は密かに本日の仕事であるドリルでアスファルトに穴あけ作業をヘドネーとして楽しんでいた。凄い衝撃が全身を駆け巡るからであった。高2で働き始めた当初は帰るころには体が敏感になりすぎていたが、現在ではヘドネーもほどほどにするようにコントロールしているのだった。この日は仕事を終え帰るのが12時半だった。奈緒は同僚に挨拶をして家路についた。
奈緒「ただいま」
帰っても家には一人、愛する両親はもういない。グレるほど子供でもなかったので、毎日必死で働いてお金を溜めている。両親は父親が小6の時、母が高1の時亡くなった。父は脳梗塞で、母は過労で倒れて亡くなってしまった。借金はなかったが父親が連帯保証人になっていた為、母娘は裕福な暮らしは出来なかったが幸せな日々だった。母は小学校の教師をしながら、夜は学校に内緒でホステスをしていた。母の負担を減らすために奈緒は中学からは新聞配達のバイトを始めたのだった。高1の母が亡くなった後、乾ききっていた奈緒の心が変わったのは、地域の人たちの支えと学校やバイト先の人々の優しさのよるものが大きい。そして、この日はまだ眠れなかった奈緒は近くの広場で以前ボクシングジムで貰った中古のサンドバックを叩き蹴り始めた。これも寝れない時の日課である。そして何時しか疲れという概念も奈緒には感じ取れなくなっていた。
奈緒「ふぅ。今日も凄く気持ち良かった。一人でいると寂しいからヘドネーばかりやっちゃうなぁ」
奈緒のヘドネーはこれで終わりではなかった。まだ、河逆流泳ぎと電柱遊びをやっていなかった。河逆流泳ぎは家の近くの河を流れとは逆向きに泳ぐことである。まだ寒さを感じるので温度覚は奈緒には存在する。しかし他と違うのはそれが全て快感に繋がっている点であった。そうすることによって、体にかかる負荷を喜びに変えていくのであった。電柱遊びとは人気のない電柱の高い所までよじ登りそこからアスファルトの地面に飛ぶことで強烈な快感を得るヘドネーの1つであった。朝のマラソンや河逆流泳ぎは持続性のある快感を得られるヘドネーであるが悶々とした気持ちと体を何時までも高めていってしまう。故に気持ちと体をスッキリさせなければ寝付く事が出来ないので、瞬発性のある電柱遊びのような悶々とした体の強制初期化パターンが必要となってくる。奈緒は10キロ程河を逆流で泳いだ後、電柱に登り本日のヘドネーのメインディッシュを味わう準備をした。
奈緒「それでは参ります。よーしいくぞ!」
そういうと奈緒は勢いよく飛び降り、地面に体操選手宜しく綺麗に着地した。その瞬間体に溜り切った欲求が一気に前進を包み込んだ。
奈緒「うぁぁぁぁぁっ!!いぃぃぃぃぃぃ!!!」
奈緒は絶叫した。何度も何度も押し寄せる喜びのビックウェーブに体をくねらせた。10分程余韻に浸って今日のヘドネーは終了した。
奈緒「なんかいけないと分かってるんだけど、こうしないと寝れないなんて、なんて私Hなの」
奈緒は寝そべった状態から立ち上がると急に我に返った。
奈緒「いけないぞ。帰らなきゃ」
奈緒は程良い酩酊状態を楽しみながら、自宅へと帰った。そしてシャワーを浴びてすぐに眠ることが出来たのだった。
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