第69話:学友

 その後、アルたちに声を掛けてきた三人が自己紹介をしてきた。


「俺はエルク・ラッシュ!」

「僕はキース・バレットです」

「私は、マリー・タロット」


 三人はパーティを組んでおり、今回のパーティ訓練では最下位だった。


「その、まさかパーティ訓練がこんなに早くあるとは思っていなくて、全く勉強ができなったんだよな」

「僕は予習をしていたつもりだったんですが、全く役に立ちませんでした」

「今回のは、ペリナ先生が、悪いと思う。それと、エルクは勉強する気、ない」

「マリーは一言多いんだよ!」

「だって、事実、だし」

「あは、あはは……その、すみません」


 三人はエルクとマリーが攻撃担当、キースが支援担当で役割を分担していた。


「仲がいいんですね」

「俺たち三人は幼なじみなんだ」

「子供の頃からずっと一緒でしたからね」

「まあ、そんな感じ」

「そうなのね。まあ、私たちもアルがいなかったら何もできなかったと思うわね。私も今回のパーティ訓練にはあまり納得してない人間の一人だし」


 ペリナがパーティ訓練の話をした時、一番最初に異議を唱えたのはクルルだった。

 三人もクルルの主張に賛成だったようだが、ペリナがさっさと話を進めてしまったこともあり何も言えなかったのだとか。


「でも、そんな中で七階層まで進むだなんて、本当にすごいよな!」

「そうですね! それで、どのように七階層まで進んだのか、お話を伺いたかったんです!」

「とても、気になる」

「話をするのは構わないが、俺たちに関わっていていいのか? 自分で言うのも何だが、他の生徒からよく思われていないのは十分理解しているつもりなんだが」


 アルはクラス全員が自分たちをよく思っていないと思っており、エルクたちのような生徒がいるとは思わなかった。

 だが、それはアルたちと付き合いを持つことでエルクたちもよく思われなくなることにもつながってしまうのだ。


「僕たちは全員平民なので構わないんです」

「というか、アルとリリーナには声を掛けていいのかってことの方が気になってたりして」

「エルク、アル様に、リリーナ様」

「あっ、私は平民だから気にしないでねー」

「うん。だから、クルルさん」

「さん付けもいらないわよー」


 マリーがクルルに気を使っているのが分かったのか、クルルも気安く返事をしている。

 一方のリリーナだが、自分が様付けされるのがあまり嬉しくないのか、恥ずかしそうに口を開く。


「あの、よろしければ私の方も呼び捨てにしていただけると、嬉しいです」

「そうなのか! だったらそれでいこう!」

「エ、エルクはさっきから呼び捨てじゃないか! それに、さすがに呼び捨てはできませんよ!」

「それなら、さん付け。これなら、いける?」

「さ、さん付けで構いません! よろしくお願いします!」


 三人の答えにリリーナはとても嬉しそうにしていた。


「俺のことはなんて呼んでくれても構わないよ。その代わり、俺は三人のことを呼び捨てにしても構わないかな?」

「おぉー! さすがアルだな!」

「全く。でも、ありがとうございます、アル様」

「キースは様付けなんだな」

「これは僕の癖みたいなものなので気にしないでください」

「他人行儀、キースの悪い癖」

「マ、マリー!」


 マリーの指摘にキース以外が笑みを浮かべている。

 教室でも話はできるのだが、放課後ということもありどこかで軽食でも摂りながらという話になり、アルたちは学園を後にした。


 ※※※※


 やってきた場所は以前にも訪れている喫茶店だった。

 全員が注文したタイミングでアルからダンジョン内の出来事を説明し、エルクたちから質問があれば話を中断して答えていく。

 途中で料理が運ばれてきたので雑談も挟みながら話し終わると、三人は腕を組んで考え込んでいた。


「……なんだか、次元が違うな」

「……そうですね。どうしてアル様たちがFクラスなんでしょうか」

「……学園、理解不能」

「あっ、規格外なのはアルだけよ。私とリリーナは正真正銘のFクラスだからね」

「その通りです。アル様だけが特別なんですよ」

「二人とも、俺も至って普通のFクラスなんだが?」

「「「「「あり得ないから!」」」」」

「……そんな、全員で言わなくてもいいじゃないか」


 不貞腐れたように頬杖をついたアルは窓の外に視線を向ける。

 すると、そこにはあまり見たくない人物がこちらを覗き込み、目が合った途端に逃げていく姿を見つけてしまった。


「……あいつら」

「どうしたんだ、アル?」

「いや、ゾランの取り巻きにいた一人がこっちを見ていたんだよ」

「そうなの? ……ねえ、マリー。明日から、私たちと行動しない?」


 アルの懸念を理解したクルルが一緒に行動することを提案してきた。


「いいけど、どうして?」

「たぶん、三人が俺たちと一緒にいたことがゾランにも伝わるはずだ。そうなると、そっちにも何かしら嫌がらせがあるかもしれない」

「あー、そういうことか。でも、それならそれで好都合だな」

「ですね。僕たちも皆さんと行動したいと思っていたんです」

「そうなのですか?」


 驚きの声をあげたのはリリーナだ。

 声には出さなかったが、アルとクルルもどういうことだと顔を見合わせている。


「七階層まで行ったアルたちと行動した方が、俺たちも強くなれそうだと思ってさ!」

「あいつら、見栄ばっかり」

「僕たちも打算で皆さんと行動したいと思っているんですよ」

「なるほど。だが、そういうことなら大歓迎だ。これからも仲良くしてくれ」


 こうして、アルは新しい学友と知り合うことができた。

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