美子さんの虚しい抵抗


「死病を治せましょうか……」

「寄生虫はすぐに退治できますよ、いたんだ身体も治せますよ、すこし時間がかかるかも知れませんが……ただね……」


 宇賀様が、

「こんな死にかけの狐で良ければ、代価になりませんか?」

 無言の美子姉様です。


「真白……白狐たち……一族の為に……」

 と、宇賀様がいいました。

 宇賀様、稲田先生、三名の女子中学生が美子姉様の前でひれ伏して……

「美子さま……お願いです……」


 それでも無言の美子姉様……


 クリームヒルトはたまらなくなって、自分もひれ伏して、

「美子姉様、私のお友達を助けて下さい、大事なお友達なのです、お願いします!」

 涙目で嘆願しました。


 ため息をつきながら美子姉様が、

「クリームヒルト……分かりましたから……」

 そしてマレーネ様に、

「蓬莱ステーションの住居群を稼動させなさい」

 と、命じてくれます。


「宇賀といいましたね、貴女の一族は、私のものになる覚悟はあるのでしょうね?」

「私は裏切りを許しませんよ、もしそのような可能性があるなら、ここでいうことです」


「確かに跳ね返りは出るでしょう、その時はその者に対して処罰はご自由に……」

「しかし従うものには慈悲を賜りたく……」


「正直ですね……しかし今ひとつ、こちらの要求を飲んで頂きます」

「私に仕えると、チョーカーというものが一生巻かれます」

「そして私に一生従うことになります、覚悟が要りますよ!」


「一生ですか?」

「そう、私に一生尽くして頂きます、その幼い娘たちもですよ」

「宇賀さま、私たちは構いません!」


「クリームヒルト、チョーカーを見せなさい」

 クリームヒルトはチョーカーを可視にします。

「それは取れませんよ、一生、私の下僕の刻印を背負うのですよ」

 美子姉様は試している……皆、覚悟を示して……美子姉様は優しいのよ……

 クリームヒルトは祈りました。


 稲田先生が、

「私はなんとでも従います、身も心も捧げます、この身体で美子さまの靴を磨きましょう、だからお願いします」

 そう言うと、美子姉様の足にすがりつき、くちづけをしました。

 宇賀さまも同じようにします。


 クリームヒルトはマチちゃんと目が合うと、必死に促しました……

 マチちゃんは他の二人を誘い、同じように美子姉様にすがりつきます。

 足にくちづけをしています。


 ここでついに、美子姉様の表情が柔らかくなりました。

「代価は先行して受け取りましょう……とにかく宇賀さんの身体は、治してあげましょう」


 美子姉様が宇賀様の頭をなでますと、宇賀様の身体が痙攣をおこしました……

「稲田さん、汚物が出ますのでトイレにつれていってあげなさい、出たら風呂場で綺麗に洗って、再び連れてきなさい」


「さて貴女たちですが再度聞きますよ、私にすべてを捧げてくれるのですか?」

「一族は今の二人で何とかしてあげますよ、だから無理することはないのよ」


 マチちゃんが、

「私はクリちゃんがそうならば、一緒でいたい」

 シズちゃんもミチちゃんも,

「私もクリちゃんと一緒にいたい」


「三人ともご両親は?」

「亡くなりました……孤児になったのを、宇賀様が拾ってくれたのです」

 美子姉様は何もいいませんでした。


 二人が戻ってくると、「失礼しました」と宇賀様が言います。

 心なしか、恥ずかしそうな表情が見受けられます。


 美子姉様が宇賀様を呼びますので、宇賀様がそのままの格好で、美子姉様の前に立ちました。

 美子姉様がものすごく怖い目で、宇賀様の身体を睨んでいます。


 そして身体の一部を掌でなでますと、色っぽく身体をくねらせて、そして動かなくなりました。

「宇賀さん、治りましたよ」

 と、美子姉様が声をかけます。

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