深夜一時のおはなし
東雲みさき
父
ハンドルをしっかり握って、前を見据える。
強い意志を持って車を走らせる父が好きだった。
大きな背中、力強い言葉、いつも私を愛して守ってくれる父が好きだった。
私もいつしか大人になり、父も年を取った。
それでも父は大きかった。
はずなのに。
余命三年ですと医者は言う。
一年が経ち、二年が経ち、約束の三年。
私は結婚した。
花嫁姿を父に見せたい一心で。
いつもなら、やれ車椅子だ、やれ杖だ、手すりだと何かに掴まって歩く父が、背筋を伸ばし、一歩、一歩とバージンロードを共に進んでいく。
父の手が私の手を導き、彼の手に重ねる。
長い夢の終わりなのか、新しい何かの始まりなのか分からなかったけれど涙が出そうで必死に堪えた。
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