ぼっち正月

早起ハヤネ

第1話 お正月の過ごし方

誰もいない冬の森

新雪となった朝

ふぅ

息を吹きかけると

羽毛のような雪舞う

吐く息も凍えそう

ザクッザクッ

長靴を履いて行くわたし

小鳥の鳴き声もしない

森閑

裸の木々

頭の上を覆うオゾンの空色

針葉樹の雪のかたまり力尽きる

元気に樹を駆け下りてくるリス

羽毛のじゅうたんに埋まる

雲の上に落ちてきたかのよう

リスはじゅうたんの下から種子取り出す

リスもわたしも吐く息が白い


 


 ぼくはお正月があまり好きではありません。

 毎年、家にいとこやおじさんおばさんが来るけど、ぼくはいつも親戚の集まりなど一人ですごしているからです。でも、お年玉のお礼だけはちゃんと言っています。

 だけど、お父さんとお母さんもぼくのいとこたちにお年玉をあげているので、らしいです。

 ぼくは黒坂四六くろさかしろうと言います。小学四年生の十歳です。お兄ちゃんは黒坂神一郎くろさかしんいちろうといってニックネームはゴッちゃんです。名前に神様の神が入っているので英語のゴッド、そこからゴッちゃんと呼ばれるようになりました。お兄ちゃんは小学六年生の十三歳で性格も明るく元気で口もよく回ります。だからいとこたちとの会話も弾みます。コミュ力が高いんです。

 でも、ぼくはその輪の中へ入っていけません。ぼくはしゃべるのが苦手なコミュ障ですし、ひとりでいるのがむしろ好きだからです。それにお兄ちゃんやいとこたちはタレントやアイドルの話ばかりしていて、ぼくのあまり好きなところではありませんから。

 おじさんやおばさんも親戚の誰それがどうのこうのといつまでも終わる気配のない又聞き話ばかりで、ぼくの好きなところではありません。

 この時もぼくはひとり部屋へ戻りました。

 ぼくが好きなのは恐竜とレトロ家電です。ぼくの部屋には小型の恐竜のフィギュアがたくさんあります。そのなかでもいちばん好きなのはラプトルです。なぜかというと、白亜紀後期のティラノサウルス=レックスほどの人気や大きさはないけど、賢くて、映画にも出ていてカッコよかったからです。でも最近ではちょっとまたTレックスに惹かれています。

 なぜかというと、最新の研究によれば、Tレックスにも進化の過程で人間ほどの大きさだった時期があったことが判明したことと、Tレックスが巨大化したのはアロサウルスという当時地上でもっとも大きかった肉食恐竜がその数を減らし始めていた時期と一致しているらしく、アロサウルスがいたニッチをTレックスが埋めたのではないかとも言われています。

 さらにTレックスは、食べ物の少ない時期はその成長を止めることができて、逆に多い時には一日に二キロも体重が増えることがあったそうです。

 話しすぎました。

 恐竜の話となるとぼくは止まらなくなるんです。クラスメイトにも引かれることがよくありました。なにもない時には教室で一人恐竜関係の雑誌や本を読んでいます。そのせいであだ名はガオくんとかレックスになりました。

 部屋に戻ると勉強机に恐竜図鑑を広げました。

 恐竜でいちばん巨大なアルゼンチノサウルス、トリケラトプス、ステゴサウルスなどの草食恐竜などもたくさんいます。恐竜は次々と化石が見つかっているので、まだまだたくさんの恐竜たちが地中で眠っているのだと言われています。ロマンがあります。ぼくも恐竜学者になりたいのですけど、ぼくが研究者になれる頃にもまだロマンが残っているでしょうか。調ということはないようにしていただきたいです。

 ティラノサウルスとラプトルの肉食恐竜同士が戦うとどうなるのでしょうか。ティラノサウルスの方が大きいのでたぶんティラノサウルスが勝つでしょう。けど、ラプトルは知能が高く、群れを組んだらかなり強いと言われています。勝負の行方はどっこいどっこいでしょう。ライオンとハイエナの群れが屍肉をめぐって対峙するようなものだと思います。

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