aftereffect〜死んでしまった僕の成仏奇譚〜

ぱぴこ

死んでしまったみたいで

「お疲れ様でしたぁー!」


耳障りな程明るい声が聞こえる。どこのお子様か知らないが元気があるのは良いことだけれど、もう少し声のボリュームを絞ってもらわないとこれでは近所迷惑だ。

霧が晴れ始めた様に少しずつ鮮明になっていく頭をもたげながら僕は目を光に慣らしていた。

もう少し眠っていたいところだけれど丁度よかった。

どこの誰とも知らぬ少年よ、君のその馬鹿でかい元気な声で僕はこの大事な日に遅刻することなく目を覚ますことができ—————


「おっ疲れっさまっでしたあぁぁーー!!」


耳元で爆発物がはじけた様なねぎらいの言葉に心臓が止まりそうになりながらも、焦点の合い出した僕の目が一人の少年を捕らえる。


「…えーと、何?誰?」


状況が飲み込めない僕の声が弱々しく響く中、待ってましたと言わんばかりの勢いで少年が鼻息荒く捲し立てる。

「黒島アキラ様、本日を持ってあなたの人生は終了いたしました。誠にお疲れさまでした!!」


よしよし、こいつは凄い、のっけから何を言っているのかわからないぞ。


「では、今後の段取りをご説明いたします」

僕の理解を無視して少年は喋り続ける。


「つい先程に黒島様の心臓は停止しました。ですので、生物学的にいうと死んでいるのですがまだ肉体と魂は繋がった状態です」


ふむふむ、肉体とね、魂がね、うんうん、わかるよ。

よくある臨死体験的な話ですね。


「そして、あちらにあるのが黒島様の死体です」


わぁ、本当だぁー。僕がベッドに血塗れで横たわっているぞぅ。


「なかなか酷い状態ですね、あれだけ刺された穴だらけの仏さんなんか私見たの初めてですよ!!」


少年が目をキラキラさせながら興奮している。確かに自分の腹部でエラ呼吸でもできそうな程に内部の見えちゃいけない部分が少し「こんにちは」してしまっている。


「いやはや、こんな晴れの日にホントにご愁傷様です。肉体の方はこれからお医者の方々がお別れ用に小綺麗にしますので、ご安心ください!!」


「晴れの日…」

そこで僕ははっきりと目が覚めた。

そう、僕は今日結婚する予定だったんだ。








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